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相手の顔色をうかがった性行為は「合意ですか?」NHKドラマ『ここは今から倫理です。』

初出:wezzy(株式会社サイゾー)2021.01.26 07:00

※性暴力に関する表現が含まれるため、ご留意ください。
※物語のネタバレを含みます

 雨瀬シオリ氏の漫画『ここは今から倫理です。』(集英社)を実写ドラマ化した作品『ここは今から倫理です。』が、1月16日よりNHK総合で始まった。第一話の内容は、性行為における「合意」の意味を問いかけるものだった。

 『ここは今から倫理です』は、ミステリアスな雰囲気を持つ倫理教師の高柳(山田裕貴)の授業や会話を通じて生徒たちが変化していく話。第一話は逢沢いち子(茅島みずき)が教室で男子生徒と性行為をしているところから始まる。そこに高柳が入ってきて「合意ですか?」と問いかける。二人とも驚いて固まるものの、男子生徒は「やべっ」と言いながら逃げ出してしまった。

 教室に残ったいち子に対し高柳は、<悪いこととは言いません。真剣なお付き合いなら結構。ただ、時間と場所が悪い>と注意する。

 この件をきっかけにいち子は高柳に好意を抱くように。ある日、いち子は<エロいこと好きでしょ?><先生の色々な表情が見たいの>と高柳を誘うものの、「教養のない女性は好みではない」「人を魅了するのは性的魅力だけではない」ときっぱり断られる。

 いち子はなぜ性に奔放なのか。いち子の父は、母といち子に暴力をふるっていた。<小さいときから男の人の黙ってるときの顔怖くて。エッチのときはみんな笑ってくれるから別にいいんだけど><最初は本当にただ、相手の男の子を喜ばせてあげたくて。嫌われるのが嫌だったし、みんな笑顔になってくれたし、我慢は慣れてたし>といち子は語る。いち子は「男の人はエッチなことをすれば喜ぶ」と思い込んでおり、「嫌われないため」「怒らせないため」の手段として、性行為に及んでいたのだった。

 いち子は本を読んだり硬筆の練習をしたりと“教養”を身につけようと努力する。そして考えにも変化が生じる。セックスフレンドの男子生徒から性行為に誘われるものの「今日は気分じゃない、ごめんね」と勇気を出して“NO”を伝えたのだ。ただ、そのときは相手の顔色を窺い、その後行為に応じた。

 後日、再び男子高校生に「今日もしようよ」と誘われ、いち子は断るものの、無理やり空き教室に連れていかれ、押し倒される。いち子は「やめて」「離して」と抵抗したが、相手はお構いなしに行為を続けようとする。そこに高柳がやってきて、再びいち子に「合意ですか?」と問いかける。そしていち子はハッキリと「違う!」と答えたのであった。

 助けられたいち子は高柳に「好き」と告白。<いっぱい勉強する、綺麗な字書けるようになる>と宣言するいち子に高柳は「愛こそ貧しい知識から豊かな知識への架け橋である」というマックス・シェーラーの言葉を残す。

「常識から外れた行動」の背景にある生い立ちや心理

 「寂しいから」「嫌われるのが怖いから」そんな思いから不特定多数と性行為をしたり、性行為の誘いを断れないといった話は珍しくない。そんな行動にはどのような背景があるのか。高柳は一見能動的に性行為に臨んでいるように見えるいち子に対し、ただ「愛のない性行為をしてはいけない」と教科書的な話をするのではなく、いち子にとって本当の「合意」なのかを問いかけた。

 生徒の心に問いかけ、生徒が自分で答えを見つけられるよう導く高柳の姿は、思い込みや偏見で相手を決めつけるのではなく、「その行動の背景にはどんな生い立ちや心理があるのか」柔軟に見ることの重要性を視聴者に伝えている。

 『ここは今から倫理です。』は放送後7日間はNHKプラスにて、過去の放送はNHKオンデマンドにて視聴できる。

※情報は初出掲載時当時のものです。