見出し画像

君の耳には、僕はなれない 7

秋 勘違い

盆休み明け、将太の仕事が増えた。
リコール。部品の交換をしないと事故に繋がる恐れがあると言う。
1台の対応に約1時間。1日7、8台。早番、遅番は無くなり、毎日が通しになった。休日出勤も考えないと追いつけない。
愛美には
”りこーるでいそがしくなった”
”いつまでいそがしいかわからん”
”またれんらくする”
と送った。
【りこーる?】愛美はググって、車の不良、国からのお達し、修理みたいな事だと理解した。
”無理しないで、頑張ってください”
”時間が空いたら連絡ください”
と返すぐらいしかできなかった。
もう少し関係が深かったら、部屋で待っていられたのに。ご飯の支度も出来たのに。

9月の中頃。将太は姉さんと呼んでいる女性Aに会いに別の街に来ている。
毎日の様に愛美からラインが来ていたが、返信はしたりしなかったり。しても”いまかえった””おやすみ”くらい。
次の日も仕事だったが、早く帰れたので姉さんへメッセージを送った。
”いいよ”の返信で何も考えずに車を走らせた。
待ち合わせのその街の市役所駐車場。姉さんが乗り込むとラブホへ直行。
「ごはん食べた?」
「コンビニでおむすび買った」
「忙しかったの?」
「も~、大変。一ヵ月休みなしだった。」
「今日、大丈夫?」
「そっちは別。」
結局、3ラウンド。別れたのは11時過ぎ。
コンビニでコーヒーを買い、飲みながら携帯を見る。愛美からのラインをチェック。
”今日も遅くなりますか?”
”身体が心配です。”
”無理しないでください”
嬉しいが、裏切った様な後ろめたさがある。付き合っても居ないのに。
”いまからかえってねる”大きなあくびをしながら送った。
”お疲れ様でした”即、返信があった。
”おきてたのか
 あしたもしごとだろ
 はやくねなさい”と立て続けに送ってみた。
”今日もお仕事、大変でしたね”
”きょうははやくおわった ひとにあってた”と伝えなくていい事を送った。思考力が落ちてる。
……
”彼女さんですか”
【しまった、、、なんて返そう、、、】
……
(そんなもんじゃない)と送るつもりが、、、
”そんなもん”
”じやなあ”
(またれんらくする)と送るつもりが、、、
”またれ”
”らくする” と送ってしまった。
将太自身は眠いのと、さっきのあくびのせいで画面が良く見えていない。
愛美からのラインが止まった。将太は車を走らせた。

翌日、昼休み。携帯のラインチェック。愛美からのトークを見た。

”ごめんなさい 勘違いしてました”
”そうですよね 彼女がいても当たり前ですよね”
”勝手に思い込んでました”
”迷惑だったですよね”
”ごめんなさい でもありがとうです”
”海に行ったこと。ライン 映画 デ・ジャブで会えた事 ありがとうです”
”いつかどこかであえたら”
”大丈夫です。硝子にはなりません”
”さようなら ありがとう”

時間を見たら、2:31 となっていた。
【あ~っ!。何だこりゃ!何で?、、、】
ライントークを遡ってみた。
”そんなもん”
”じやなあ”
”またれ”
”らくする”
【いやっ!、そうじゃないっ!、間違えたのか俺がっ!】
慌ててライントークを送ってみた。
『ブロックされています』
ライン電話をかけてみた。繋がらない。
【……しまった~、、、。】将太、頭を抱えてその場にしゃがみ込む。

【ガラス?、何だ?ガラスって?】

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?