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この三日間のこと

『月曜日』
 定期の歯科受診日。磨き残しチェックで小さな手鏡を受け取った瞬間に鏡の中に母の口元が写ってドキッとした。私の口元は母に似ているのかと思いつつ、目を閉じてクリーニングしてもらいながら泣きそうになった。
『火曜日』
 2年ぶりの人生2回目の苺狩り。最近食欲がなくて不安だったけど、宝石のような苺は甘くみずみずしく私の細胞に沁みた。美味しいと感じられて嬉しかった。
幼い頃から数年前まで母は畑に苺を作って私に食べさせてくれた。それを当たり前に思っていた。そんなことを思いながらたくさん食べた。元気になった。
『水曜日』
 龍の彫り物で有名な神社の夢を見た。我家から車で1時間半の町にある。今日はその神社に近い道の駅で姉夫婦とランチを計画していた。神社は近いといっても場所は知らない。あらためて別の日にゆっくり行けばいいと思っていた。ランチ後、買い物をしていたら姉がご婦人と立ち話をしていた。その方は、道の駅に来る前に今朝私が夢に見た神社に行ってきたところだと。姉も行ったことがないとのことで、行くことにした。素晴らしい彫り物だった。龍にパワーをもらった。
 姉が手作り味噌と筍とふきの煮物、イカの麹漬け、新玉ねぎと他にもたくさん持たせてくれた。
私は母の部屋から持ち帰って、いつか姉にと準備していた父と母の写真を渡した。一番渡したかったのは第一子である小さな姉を抱き満面の笑顔の母と父の写真。ドライな姉は写真に興味がない感じだったけど、どうかな。

 月曜日の朝、キッチン立ったときに“鬱だったんだ”という言葉が降ってきた。昨年の11月に入った頃から身体がスッキリしなくて、どこかが不調で歳を重ねるとはこういうことなのか、受け入れるしかないのかと思っていた。振り返ってみると7月末に母が旅立って3か月過ぎ、力が抜けてしまったのかもしれない。そしてスッキリしない半年が過ぎた。スッキリしなくても、何かをすることが億劫でも、2月末に高熱で寝込んだだけで、朝起きることも食べることも編み物も珈琲焙煎もできているし、桜の花も満喫した。

 夕食の筍とふきの煮物は心と身体に優しくてお腹を満たしてくれた。

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