ははが がん になりました。〜わたしはわたし。〜

2回目の治療日の前日。
体調は,ほぼ1回目の治療前に戻っていた。

「またあの思いをするのかぁ…あと3回もやるんだよ?あ〜憂鬱。」

母は、病院のことを考えると気持ちが落ち込むと話していた。
ちょっと吐き気もすると話していた。
最初は治すために頑張る!と意気込んでいたが、辛かった症状を思い出すと行きたくない。という気持ちが上回ってしまうようだ。
そうだよなぁ…嫌なことを進んでやりにいく人なんてそうそういないよなぁ…。
そう感じながら
「大丈夫!ゴールがあるんだから!明けない夜はないっていうじゃん〜!」と精一杯励ました。

診察の日。
吐き気が酷かったことを伝えると、点滴と内服ど吐き気止めが追加になったようだった。
いつも通り治療を終え、すぐに薬局からもらった吐き気止め(頓服)を飲んだ。吐き気がなくとも予防的に飲んでもよいことを覚えていてくれたようだ。

翌日、以前の吐き気が嘘のようにスッキリした目覚めだったそう。
「ねぇ!今回まったく吐き気でなかったよ~。吐き気止め効いたみたい!それとも抗がん剤入ってなかったのかな?(笑)」
そう思うくらい吐き気がなかった様子。
吐き気にはいろんな原因があり、いろんな制吐剤があるが、ここまで効果が出てくれて嬉しかったし、安心した。
患者さんの中には、いろんな系統の制吐剤を使っても本人の望む制吐作用が得られず、苦しい思いをしている人もいるからだ。

2クール目~4クール目は体調が良いまま終わり、いつも通り仕事にも行くことができていた。
脱毛があってもウィッグはつけていたし、顔色も悪くなかったので、ぱっと見はがん治療しているように見えなかった。

そのことに、母は最初こそ安堵し喜んでいたが、次第に
「体調が悪くても頼りづらい。じいじ(継父)にも職場の人にも辛いって言えない。だからと言って、周りに気を遣われるのも嫌だ。なんだかわがままな考えだよね。」と、話すことが出てきた。

母は、がんになったことをなるべく周囲に隠しておきたいと話していた。
それは、がんだと知られたことで、同情されたり過剰に気を遣われることを恐れていたからだ。
また、田舎の土地でご近所さんにいろんな噂を立てられることも恐れていた。

【がんになっても わたしは わたし。】

よくそう言っていたが、それは自分に言い聞かせていたように見えた。
がんに罹患したことで、自分でコントロールできない体調の変化や、見た目の変化。自分でできていたことを頼らざるえない状況。
病気になったことで、自分が自分ではなくなってしまうのではないか…
と不安な思いを抱いていた。

私は母の話をじっくり聞き、そのように考えている人は多くいることを伝えた。
そして、体調が悪いときの対策をいくつか一緒に考えてみることにした。

いつもは何事にもポジティブであまり深く物事を考えないようにするタイプだったが、いろんなことを提案しても「でも…だって…今のお母さんには無理だし…」とネガティブな言動が多かった。

仕方ない。とわかっていても、娘としては母の変わり様にショックを受けたし、なんでそんなこと言うんだろう。と怒りの気持ちと寂しい気持ちと…
いろんな思いを抱きながら、母が納得する答えを一緒に探した。

すぐに答えはでなかった。
でも、一緒に考えたことが母の支えになったようだ。
少しでも心のもやもやが晴れてくれるといいな。
そう思いながら母の話を聞いていた。



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