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『Little Women 〜リトル・ウィメン 若草物語〜』

『Little Women 〜リトル・ウィメン 若草物語〜』/シアタークリエ


ローラーがいい具合でオチ要因になっている。ほっこりと笑える、笑顔になれる作品だった。10人という小人のキャストだからこそ、家族感が強く印象に残るんじゃないか。

とても乙女な長女メグ、明るく活発な次女ジョー、母性愛の強い三女ベス、ワガママな四女エイミー。それぞれのキャラクターがはっきりした性格でバラバラだからこそ、色んな界隈から集まったキャストでも本物の姉妹に見えたのかな。
そんな4姉妹を育て、温かく見守るお母さまは、本当に素晴らしい人。きっと4人の女の子を1人で育てるなんて不安しかなかっただろう。加えてお父さまがそばにいないことに1番寂しさを感じているのはお母さまだろう。
だけど、その寂しさを埋めてくれるのはこの4姉妹で、そんな姿を見せないお母さまの強さ。それを象徴するのが ♪ Here Alone。「I wish」という歌詞に、母としての強さを感じる。お母さまに青いライトが当たる奥で娘たちが楽しそうに遊んでいて、オレンジのライトが照らしている。それぞれの心情を表しているようなライトの色。青とオレンジ。美しい差だった。

厳格なおじいさん・ローレンスに育てられているローリーは、自由に好きな事に没頭し、自分のやりたい事を夢に持つジョーに憧れた。ローリーはその憧れをジョーに対する”好き”と勘違いし、それはいつの間にか”愛してる”に変化した。憧れは相手を好きだからこそ生まれる気持ちであり、「自分とは不釣り合いな人を恋慕う気持ち」である。おこからわかるように、憧れは好きと勘違いしやすいのだ。通いたくない大学へ行くことになり、自分のやりたい事が何なのかわからないローリーにとって、自分のやりたい事がわかってるジョーはかっこよく、ジョーになりたいと思ったのだろう。

そんなローリーはヨーロッパでエイミーに再開し、「自分たちは似ている」と知った。エイミーもジョーに憧れていたのだ。そこで彼は、ジョーに対する気持ちは憧れなのであり、”好き”というのはキュンとした感覚なのだと気づいたのだろう。だから、ジョーへの想いを納得して諦められ、エイミーに結婚を申し込めたのだ。
エイミーもローリーも、家を出て海外へ行き色んな経験をして、良いも悪いも現実を目の当たりにし、成長していった。

南北戦争の時代、女性の自立とは「一家の母として子どもを育て、1人の妻として夫を支える」ことと訳されるだろう。そんな中で、自分のやりたい事を胸にしっかり刻み成し遂げようとするジョー。女性が外で働いてお金を稼いだっていいじゃないかと、やりたい事をしたっていいじゃないかという主張が、今の日本社会にぴったりだったのではないか。
マーチおばさまが「女の子は…女性はみんな」と言い換えるのをジョーの前でしたのは、ジョーを1人の自立した女性だと認めてくれたからなのではないかと思った。

メグ:赤ちゃんのおもちゃ、ジョー:小説のファイル、ベス:メトロノーム、エイミー:スケッチ。それぞれを表現する物たちにスポットライトが当たったシーンが、とても印象に残った。みんな別々の道に進んでいるけれど、その根底には「自分のやりたい・なりたい事する」とい気持ちがあるように思えた。

♪ I'd Be Delighted
エイミーはおさがりの洋服なんて嫌で自分だけの物が欲しくて、つい思ってもないような酷いことをジョーに言ってしまう。末っ子らしいなと感じた。

林くん
観劇前から林ローリーの評判が良かったので、期待して観に行ったら期待以上だった。「運命なのだ」で出てきた瞬間鳥肌が立った。ビブラートが素晴らしく、上のBOX席だった時もはっきり聞こえるぐらい、劇場全体に響き渡ってた。私が聞いた限りでは、音を外す調子が悪そうな事もなく、もう完璧 of 完璧。安定感の出てきた低温と声量、そしてしっかり耳に入る発音。キャスト全員での ♪ The Weekly Volcano Press も、林くんの声がしっかり聞こえてきた。
♪ Five Forever で姉妹4人の「永遠に!」に入れなかったローリーが1人で「永遠に!」って言い出して大丈夫かな…?って思ったけれど、「命をかけて誓おう」と歌い出したらそこにはミュージカル俳優がいました。この曲は、4人の女性の声の間から唯一男性である林くんの歌声が聞こえてくるところが大好きです。

周りが導く道とは違う方向へ進む時、認めてもらうまでには相当な時間がかかるだろう。しかしどこかに自分を応援してくれる人が必ずいる。幸いにもジョーには、家族・ローリー・ベア教授がいた。彼女だって、常に強い心で前へ進めたわけではない。立ち止まりそうになった時、そこにも必ず人がいたのだ。
「人は1人では生きていけない」「愛とは1番強い武器」
そんな言葉が似合う作品だった。

1000の夢 全部 生きてみよう。
黄金の翼で飛ぶのさ。

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