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『フランケンシュタイン』『天保十二年のシェイクスピア』

『フランケンシュタイン』/日生劇場


年明け1発目、年始にやるには暗すぎる内容だった。(笑)

お母さんを生き返らせたいという思いから生命再生を志し、戦時中は戦死した”人”を兵士として蘇らせる実験を行い続けたフランケン。実験のためにはどんな手段も選ばず、人が死んだと聞けば「新鮮な脳みそがほしい!」とまで言ってしまう。大切な友人/パートナーとして出会えたアンリが処刑され生き返らせたい一心で生命再生を行うが、蘇ったアンリは怪物になってしまった。

人間の欲望ほど恐ろしい物はないというのが最大の感想。自分を高めて、突き進めて、突き動かすのは自分自身だけれど、自分を止められるのもまた、自分自身なのだ。後悔の先にあるのは絶望で、そこはすべてが冷たく感じる場所。だから最後は北極だったのかな。

息絶え横たわる怪物に、アンリ!と近寄り抱きしめるところはどうしても、パトラッシュ!に見えてしまった。
「お前の大事な物を全部奪う」と言っていた怪物は、フランケンの姉、嫁、執事を次々に殺し、怪物自身も殺した。そして最後はフランケンの死で終わる。怪物の復讐は、フランケン自身の命を終わらせることで完成したのだ。

どんな状況であっても生き物は、大なり小なり幸せを感じたいと思っている。それは食事でも音楽でも恋でも色んな方法で。そしてそれはやがて欲望になり、人間が出来上がる。
きっとあの時の怪物は幸せを感じていたから、笑顔になって言葉を出し始め、助けたいという感情が出てきたのだろう。あの時だけは、怪物も人間になっていたのだ。

フランケン @中川晃教 さん
テレビで拝見しているととてもクセの強い方だなと思っていたけれど、舞台ではやはりとても映えていた。
自分が生み出してしまったために、皆が不幸になっていき苦しむ様子が素晴らしかったです。

アンリ @加藤和樹 さん
爽やかな男性から気味の悪い怪物へのシフトチェンジがすごかった。怪物の無の感じが、より恐怖を煽っていた。
うめき声や動きが、身体の芯から震えあがる感覚がありました。



絢爛豪華 祝祭音楽劇『天保十二年のシェイクスピア』/日生劇場


トータル3時間以上は身体がバキバキになる。
タイトル通り舞台は江戸時代の天保十二年。ストーリーの所々にシェイクスピアの物語が登場する。「もしもシェイクスピアがいなかったら」がメインテーマ曲の歌詞。同じく「トゥナイ、トゥナイ、ふにゃららトゥナイ」もある。

途中から体が痛くなってきちゃって集中できなくてあんまりストーリーが入ってこなかったのだけど、シェイクスピアが好きな人やよく知ってる人は、かくれんぼみたいな感覚でどこにシェイクスピアのストーリーがいるかを見つけるのを楽しめたと思う。客席降りもあって、劇場全体で盛り上がれるシーンもあった。
演出家の藤田さんがとても気さくな方だったという印象と、テレビで見てる高橋一生を舞台で見ることが新鮮だった(もともと舞台なのは知ってるけど)。

全体的に化粧がすごくて、高橋一生はとても醜い見た目をしていて、ノートルダムの鐘のカジモドを思い出した。
シェイクスピアだから、必ず人が死ぬ。次々と死ぬ。日劇さん2か月連続で、しかも年明け早々に人が亡くなる作品なのすごいわ。最後に生きるのは佐渡の三世次だけれど、彼は死者の呪いに付きまとわれる。恨みとは恐ろしいものだ。女性と交わるシーンも結構大胆だったけれど、前回のほうがもっとがっつりだったらしいと聞いてびっくりした。

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