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『SOHO CINDERS』

『SOHO CINDERS』/よみうり大手町ホール

内容はシンプルでわかりやすい。でも、何度も見ると「自分に正直に純粋に生きることの難しさ」や「普通とは何か。それはひとそれぞれに基準が違う」ということを痛感するストーリーだった。

ジェイムズにベリンガムとの関係を聞かれ「俺はただ、雇われただけなんだ」と、ヴェルクロに答えた事とは異なる答えを伝えたロビー。勝手なヤツだけど、ロビーは女性の感情の持ち方と似ている気がした。
世渡り上手というか、好きな人の前では「~した」よりも「~された」人間で、同情・共感されたいという感情。ロビーはとても純粋な青年で、色んな人にあれだけ自分をさらけ出せることが羨ましいくらい。けれど、好きな人には見せたくない自分、好きな人に対してだからこそ吐き出せず溜め込んでしまうクセというか状態があって。そんな彼の中の物が爆発したのが ♪ M11 They Don't Make Glass Slippers なのかなと思った。その流れが人間らしくも感じる。

M4 Gypsies Of The Ether

フィアンセがいるのに他に恋人がいるとわかったら大騒ぎになってしまうジェイムズだから、2人が会うのは夜(夜の9時)なんだろうけど、ここにはきっと「ロンドン市長の立候補者がゲイ!?」ということをスクープさせないようにするためでもあるんじゃないか。LGBTに対しての差別観がある事を本人たちもわかっているから、待ち合わせはいつも「夜の9時。人がまばらになったトラファルガー広場」なんだろうな。

M10 Who's That Boy?

マリリンソロに「何を隠しているの 私何が怖いの」という歌詞があった。知りたいけど知るのが怖い。それ以上に、たぶんマリリンは、彼が何者なのかとかすべてわかっていて、それをジェイムズから直接聞いてしまうと現実になってしまうのが怖いんじゃないかと思った。

M13 Let Him Go

あなたが自由になるため 自由にするのよ彼を
愛に背を向けるわけじゃなくて 彼の親友になるの
離れた後で彼は知るでしょう あなたの愛の深さ

「わたしは誰かを必要としていて、それは誰を必要とするかより強かった」とわかっていたマリリン。きっと、マリリンのジェイムズへの愛は戦友に対するそれと同じなんじゃないかな。

ためらう気持ちは捨てて 自由にしなくちゃ彼を
悲しい結末は見えてたはず そうよ叶わぬ夢
想いをこめて別れることが 私の愛のすべて

戦友に対する愛だと思っていたけれど、それはいつの間にか恋する相手への愛に変わっていたマリリン。けれど2人が本当の意味での愛する愛しい人になれることは叶わない(「私はあなたのすべてがほしいのに?」byマリリン)。ジェイムズを自由に、自分に誠実にするためには、別れる選択することが彼への想いやりであり、私の愛なんだと言いきかせているようにも見える。 ♪ Let Him Go、私の大好きなナンバーです。


とにかく楽曲が最高で、曲を聞くために入った最後の前楽とその1つ前の公演。終わった後もずっと歌ってる。
私にとって大きく何かが変わった作品とはっきり断言できるわけではないのだけれど、心を揺さぶられた作品であることは間違いない。見れば見るほど色んな考えが浮かんでくるストーリーだし、聞けば聞くほどハマる楽曲たち。私の1番好きな作品になりました。
どの作品にも正解なんてないけど、この作品についてはこの先おmずっと考えていたい。愛って何なのだろう。LOVEだけが愛ではない。自分への愛も、他人への愛も、そこに人がいる数だけ愛は存在する。
私はこの先どんな愛を手にするんだろう。

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