『創造的な習慣』川崎晋 中篇
カワサキファクトリーの川崎晋(かわさき・すすむ)さんは、構造的に非常に美しいシステマチックなアナログゲームを得意とし、長い創作歴の中でいつくも素晴らしい作品を発表されてきました。海外出版社からのリリースについても日本のアナログゲームシーンでは先駆けであり、いまもなお知的で刺激的な作品を生み出し続けるアナログゲームデザイナーです。
主な作品リスト
『Tenplus』『R-Eco』 『グラグラカンパニー』『カウントダウン』 『カルタゴの貿易商たち』 『ルールの達人』 『クイズいいセン行きまSHOW!』 『賭博英雄伝セブン』 『ダチョウサーカス』 『ギシンアンキノトウ』 『ローマの執政官』 『TRICK OF SPY』他多数
優れた作品を創作し続けているアナログゲームのデザイナーに対して、Saashi & Saashi が定型的な質問を用意し、それに回答してもらうという、このインタビュー企画『創造的な習慣〜アナログゲームデザイナーはいかにしてクリエイトするのか』。
数学的な思考と経験によって培われた揺るぎのない川崎さんの定見は、ゲームデザイナーを志す人にとって有用な言葉に満ちています。日常のありとあらゆるシーンをゲーム的なメカニズムとして解剖し再構築するその眼識には、すべてのデザイナーの刺激になりうるクリエイターとしての感性と情熱、そして凄みが含まれています。ロングインタビューを敢行してまとめた全記事を三分割し、中篇をここにお届けします。(前篇、後篇はこちら)
テストプレイ
── ある分量のアイデアメモが溜まってきたら、いよいよテストキットを作る段階に入るのでしょうか。
川崎 そうですね。Illustrator でカード作るんですが、自分では絵は描けないんですけど、テストキットとは言え、せめてカード上ではそのテーマに合った雰囲気のフォントを選んで、色合いなど見栄えは整えつつ、最低限遊んでもらえる形にします。
── テストキットはどんなものですか。そのゲームのためにひとつひとつ作るのでしょうか。それもある程度決まった形があるのですか。
川崎 内容が決まってきた段階で、Illustrator を使って作ってます。A4サイズにカードのレイアウトをつけたものに、グラフィックや数字を載せて、それを印刷してスリーブに入れるという感じです。ボードのある場合はA4サイズにマス目を書いたものを作ります。
── たとえば、印刷したカードや駒なども各ゲームアイデアごとにまとめて、それぞれに仕舞っておくのでしょうか。
川崎 駒などは汎用ですね。テストをやるたびに駒だけ人数分を数えて出してきて使う感じですね。なので、Aというゲームを作っている間は、そのコンポーネントをA専用にするわけではないです。
── 同時期に複数のゲームの開発を進めている場合は、共有していることもありえるわけですね。
川崎 そうですね。ただ同時進行で作っていない場合は、結果的に専用になっている時もありますけどね。
── 『ギシンアンキノトウ』のように少し特殊なコンポーネントの場合は、そのまま取っておくのでしょうか。
川崎 そうですね。代わりがない物や、手がかかった物は取っておきますし、あとはカードも束にして置くくらいは別に負担でもないので、捨てることもないかなと思って取っておきますね。
── テストキットが揃うと、すぐに人を集めてテストプレイの場を設けますか。それとも、まずはゲームを1人プレイで試してみるのでしょうか。
川崎 コンポーネントを用意して、動かしてみたりはしますけど、1人で試すことはあまり多くないです。
── 動かしてみるのは、コンポーネントを触ってみるという感覚ですか。
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