『創造的な習慣』カナイセイジ 後篇

カナイセイジさん(カナイ製作所)は、日本のアナログゲームシーンにおいて長く活躍され、いまや世界中でその作品が多くのファンに楽しまれています。長きに渡る製作活動によって得られた経験と、真似のできない鋭いセンスを掛け合わせた作品を得意とするアナログゲームデザイナーです。

主な作品リスト
いばらの姫と4人の騎士』『イカサマージ!』『Chronicle』『RR』『舞星』 『大商人』 『成敗』 『ラブレター』 『Lost Legacy』『Gods' Gambit』『シノビアーツ』『Eight Epics』『ウニコルヌスの騎士たち(共作)』『文絵のために』他多数

優れた作品を創作し続けているアナログゲームのデザイナーに対して、Saashi & Saashi が定型的な質問を用意し、それに回答してもらうという、このインタビュー企画『創造的な習慣〜アナログゲームデザイナーはいかにしてクリエイトするのか』。

センスと経験とに裏打ちされたカナイさんの豊富な知見は、日本のアナログゲームシーンにとってのひとつの財産だと思いますし、また日本を代表するデザイナーとなった彼の日常的なクリエイトから垣間見える創作への取り組み方や考え方は、作品を外から見るだけではわからない多角的な奥深さを提供してくれることでしょう。ロングインタビューを敢行してまとめた全記事を三分割し、後篇をここにお届けします。(前篇中篇はこちら)


ディベロップ

── カナイさんはゲーム創作において数学的な計算を立てて作っていますか。

カナイ それは計算のレベルによりますね。たとえば、すべてのカードの確率を弾き出すみたいな計算はやらないです。噛み砕いて話すと、あるカード効果が「コスト2で3ダメージを与える」というのを基準にするとしたら、「コスト1なら1ダメージかな」とか「コストが4も必要なら、ダメージは6くらい欲しいんじゃないか」とか。そんな感じです。その他には、コストの低いカードをたくさんの枚数一度に使うほうが効率良いプレイとするのかどうか、とか。そういうのを計算と言って良いのかわからないですけど。いずれにしても、計算式なんかを組んでやるようなことはありませんよ。よくわからないし(笑)

── カード枚数などは、まず初めにとりあえずのテストキットを作ってみて、それを回してから、改めてカード枚数などを調整していきますか。

カナイ テストにしろ、調整にしろ、できる回数は限られているので、「少し調整して、またテストし直して」というのはあまりやらないですかね。それは最初の段階である程度までは考えてからテストキットを作り始めます。

── カナイさんの中で、メカニクスを考える、作り出す作業というのは、どのようにして始まるのでしょうか。

カナイ 難しい質問ですね‥‥。テーマから始めて、メカニクスを組む場合もありますし、その逆もあります。ワーカープレイスメントというメカニクスの大枠があって、その中に個性とか、またはコンポーネントからの要請で弾き出したものを足していくということもあります。

── 先ほどお話くださった完成度15%のアイデアだけがまずあったとして、それをたとえばワカプレに載せて作ってみたけど、どうもしっくりこなかった場合は一旦置いておきますか。それとも、ワカプレ以外でうまくいく組み合わせを見出すことに専念しますか。

カナイ 微妙なお話になるかもしれないですけど。おそらくワカプレというメカニクスがあって、それをワカプレとして作り始めたんだったら、もうワカプレとして仕上がるはずなんですよ。それがしっくりこなかったのは、もしかすると原因はテーマの問題かもしれなくて、要するにワカプレに適したテーマではなかっただけではないのかという場合もあるんですよね。なのでワカプレのほうはちゃんと活きているのかもしれないんです。

── テーマとメカニクスとどちらに、そもそもの主軸を置いていたかによって判断が変わってくるわけですね。

カナイ 逆に、テーマが先に立っていて、そこにワカプレを載せたのであれば、うまくいかなければワカプレのほうの問題かもしれません。自分の作ろうとしていたテーマに対して、その再現性においては「ワカプレが適切な手段ではなかった」というケースですよね。その場合には、ワカプレは放棄しますね。

── なるほど。依って立つところをまず見極めておく必要がありますね。

カナイ そこはなんとなくでもわかると思いますよ。「これ、もしかしたらワカプレじゃなくて、単純に拡大再生産させる方向性のゲームなんじゃない?」とかね。

── 手掛けているゲームが、作っていくうちにだんだん最初のコンセプトと違ってきてしまった場合、それを現状のまま進めますか、それとも元のコンセプトに一旦立ち返ろうとなさいますか。

カナイ その場合は、おそらく2つ目のゲームを作ろうと思いますね。

── もし出来が良いのなら、それはそれとして置いておいて、別枠でもうひとつ作ると。

カナイ そうですね。やっぱりそのゲームの出来次第なので、出来が良かったら、ぼくは事前の条件は一旦捨てちゃっても良いとは思いますね。それぐらい自信があるものができれば、という話ですが(笑)

── 煮詰まった時はどのように対処なさいますか。次の段階へ進めるための方法をなにかお持ちでしょうか。

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saashiandsaashi

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