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いつか、未来で。

ある曲の歌詞と自分の感情が綺麗にシンクロすることって、音楽好きなら誰にでも経験があることだと思う。
先日のわたしの感情には、ある曲のこんな歌詞がドンピシャだった。

時間の波をつかまえて
たどり着いたね 約束の場所
以心伝心? もう待てないっ Climax Jump!
  -- Climax Jump the Final / AAA DEN-O form

おそらく、この曲は知らない人が多いだろう。なんとなく知ってるような…でも知ってる曲と若干違うような…という人は多いかもしれない。
noteでこの話をするのは初めての気がするので、10年程前のことから書き始めようと思う(多分、だいぶ長くなります)。

2007年、当時14歳・中学2年生だった私が所謂"中二病"を捧げた作品がある。おそらく、私と同年代で少しでもオタク趣味を持っていた人なら大半が観た記憶を持つであろう作品だ。言わずと知れた「仮面ライダー電王」である。とてつもなく運の悪い青年・野上良太郎(演:佐藤健)が"イマジン"と呼ばれる4体の怪人(モモタロス、ウラタロス、キンタロス、リュウタロス)に憑依され、時の電車・デンライナーに乗って悪を倒すという作品だ。イマジンではリュウタロス、ライダーは2人目のゼロノス/桜井侑斗(演:中村優一)が特に好きだった。

もともとわたしは子供の頃から特撮が好きなので、「電王」を観始めたこと自体は、自分にとってはごく普通のことだったのだけれど、どうしてハマったのかは正直よく覚えていない。佐藤健の顔が好みどストライクだったこと、イマジンたちがあまりにもチャーミングだったこと、ストーリーが面白すぎたこと、各回のタイトルがセンスに溢れていたこと(これ結構大事)などなど、たくさんの要因が重なって、当時のわたしは電王以外のことは頭に入ってこないような状態だった。

中高生とは思えぬ金額をフィギュアやムック、DVDに投資したのを今でもよく覚えている。今思い返すと当時、電王以外でほしいもの(多分そんなになかったけど)は全部我慢していたので、本当によく頑張ったなと感心してしまうくらい。

電王という作品は、私以外にも多くの人から愛された作品だった。それを表すように、本シリーズ終了後も数々の映画が制作されている。「クライマックス刑事」「さらば電王」「超電王」…これらの映画には毎回のように"今回が最後"という謳い文句がついていたものだから、複雑な感情を抱かなかったと言ったら嘘になる。けれど、イマジンたちがガヤガヤしている様子は毎回必ず面白かったし、見るたびに「好きだなぁ」とため息をついていた。

さて、電王が好きだった理由はたくさんある、と書いた。その中に、主題歌とキャラクターソングの存在がある。中でも、電王の主題歌「Climax Jump」は〈いーじゃん!いーじゃん!すげーじゃん!〉という強烈な歌詞で多くの人を虜にした。この歌詞だったら聞き覚えがある、という人もいるんじゃないだろうか。

時間の波をつかまえて
今すぐに行こう 約束の場所
限界無限 いざ飛び込め Climax Jump!
  -- Climax Jump / AAA DEN-O form

さらに電王の楽曲最大の特徴といえば、キャラクターソングの見事なフォームチェンジだ。ロック調のSword-form、スカを思わせるRod-form、ド演歌なAx-form、そしてラップを取り入れたヒップホップのGun-form。一つの楽曲を元にしつつ、歌詞にもそれぞれの性格をうまく織り込んで遊んでいる。たとえば大サビ、同じメロディや言葉をベースにした歌詞は、4人のキャラクターによってこんな風に変わるのだ。

この力解き放つ時 この時空赤く染める
派手に行くぜ Do the action 動き出せばクライマックス
  --Double-Action Sword form
とらわれた正しさよりも 僕だけの自由選ぶ
言葉よりも Do the action 僕の何を信じる?
  --Double-Action Rod form
この力解き放つ時 この時空金に染める
任せとき!って Do the action 動き出せばダイナミック
  --Double-Action Ax form
紫の力解き放って (Try this ガンフォーム)
時空染め上げる (Cuz time goes by Can't stop it, right?)
誰も止められない Do the action (See the Double-Action)
倒すだけさ 答えなんか 聞かない間に
  --Double-Action Gun form

Climax Jumpも最終的にはフォームチェンジを果たし、大勢のファンを歓喜させた(あのメロディが見事に演歌になったのを初めて聴いた時は、さすがに感動した)。

上記の通り、電王は何度か"最後"を謳った映画を作成した。だから、各映画のタイミングでリリースされたキャラソンには"別れ"や"旅立ち"をテーマにした楽曲も多い。そんな中、「さらば電王」の主題歌としてリリースされた「Climax Jump the FINAL」だけは少し毛色が違っていたのだ(曲名がややこしいんだけれど、冒頭で引いた曲の話です)。この曲だけは、この曲の1番だけは"再会の喜び"を歌っている。例えば、こんな歌詞。

ほら、また出逢えた
そお、奇跡的な感動 噛み締めつつ Say Yeah!

さらにこの箇所の歌詞は、2番ではこうなる。

ほら、夢を見たら
そお、叶うことの証明 忘れないよ Say Yeah!

このあたりでようやく、どうしてこの曲が先日のわたしにドンピシャだったか、という話に戻ろうと思う。

2017年2月23日。新宿バルト9で行われたこんなイベントに参加していた。

『仮面ライダー電王』10周年 ゼロノス・中村優一、電王・佐藤健からの電話に感極まる「良ちゃんありがとう」 | Deview-デビュー

10年前、電王にお小遣いの大半を注ぎ込んでいたわたしだけれど、一つだけ、叶わなかった夢があった。それが、俳優キャストが登場するイベントへの参加。イマジン役の声優さんたちが登壇する舞台挨拶には一度だけ参加したことがあったんだけれど、大ファンだった佐藤健や中村優一が登場するトークショーやイベントには、結局一度も参加することができなかった。だから実はこの日は、わたしにとっては初めて、本物の侑斗を目にする機会だったのだ。本編終了から10年も経って、初めて。

イベントの内容自体は上のリンクに凄く丁寧に書いてあるので割愛するけれど、出演者本人と一緒に10年前の仮面ライダーを観るって、どう考えても最高じゃないですか。健くん(18歳)を観て「かわいいね」って溜息ついてみたりして。イマジンが出てくる度に一緒に笑ったりして。3人とも今でも電王のこと本当に大事に思ってくれていて、誇りに思ってくれていて、それだけでもとんでもなく幸せな同窓会なのに、最後にもう一発、爆弾が落とされた。

これは。まったく予想外だった。

健くんが電王を黒歴史にしている、とは思っていない(一部で言われてるようだけど、多分健くん、そうは思ってない気がする)。でもなんとなく、もう健くんは電王には関わらないものだと思っていた。

続編映画では、良太郎役を演じていたのは溝口琢矢くん。夏の映画『俺、誕生!』で良太郎の子供時代を演じた溝口くんは、その後の映画でもちゃんと良太郎を演じきってくれていて、そのことにはすごく感謝している。けれどどうしても、健くんの良太郎に会いたい気持ちはずっと消えなかった。それだけに、10年越しに「良太郎」って呼びかけることを許してくれたのが、何より嬉しかった。

10年越しなんですよ、ほんっとに。10年前の自分が知ったらなんて言うだろう。自慢したくて仕方ない。
その後で観た映画『俺、誕生!』は、きちんと観たのはおそらく6、7年振り。それでもセリフをほぼ一言一句覚えていた自分に、ほとほと呆れた。この作品が、電王シリーズがそのくらい好きだった。
「東映のやりかたは阿漕だ」と言い続けて10年経ったけれど(笑)、結局一度も嫌いになることはなかった。だから多分、これからもずっと好きなままだろう。

「Climax Jump the FINAL」には、こんな歌詞がある。

You don't say
サヨナラは終わりじゃなく
次の旅が始まる 合図
Over again
運命を信じるなら
いつか また逢う日まで…Climax Jump

優一くんは挨拶の最後を、電王ファンにとってはお馴染みの、ある言葉で締めてくれた。
テレビシリーズの最後のセリフもこの言葉だったけれど、あの時は、あまりにも早く"未来"がやってきたから拍子抜けしてしまったっけ。その後も何度か再会の機会があって、10年経った今もこうして約束を果たしてくれて。
だから今回も待ってしまうし、信じてしまう。「また変身したい」って言った優一くんの言葉に、「次は呼んでください」って言った健くんの言葉に期待してしまう。

アニバーサリーイヤーは、まだまだ始まったばかりだ。存分に騒いでいかなければ。まずは、5月にBlu-ray BOXの発売が待っている。勢いで全巻しっかり予約してしまったので、頑張って稼がなければ。

1年掛けて存分に大騒ぎするから、だからきっと、また、いつか。

いつか、未来で。

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