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タイ人の話はマンボウのように聞け

タイ人(従業員・配偶者)からのアドバイスは、日本人の立場に立って考えてくれないところに意味があります。

「タイ人がくれたアドバイスに、あまり『できない』(マイダイ ไม่ได้)と答えてしまうと、アドバイスをしても無駄だと思われるど」

「自分にはできないようなアドバイスをもらった場合は、どう答えればいいのでしょうか?」

「おいどーは、そういうとき、『なるほどの』(カオチャイレーオ เข้าใจแล้ว)とか、『それはおもしろいの』(クワームキットディー ความคิดดี)とか言っちょるかいのー」

「『なるほど』(カオチャイレーオ เข้าใจแล้ว)と受け入れてしまうと、もらったアドバイスを実行しなければいけなくなるのでは?」

「おいどーが言う『なるほど』(カオチャイレーオ เข้าใจแล้ว)は、『そのアドバイスを実行します』(コレーオガン ก็แล้วกัน)という意味ではねーんど。『アドバイスをしてくれた内容の、タイ語は理解できました』(カオチャイレーオ เข้าใจแล้ว)という意味ぞ。だからの、別に実行する必要はねぇんど」

「タイ人からアドバイスをたくさんされると、『余計なお世話』(ユンマイカオルアン ยุ่งไม่เข้าเรื่อง)みたいに感じて、ちょっと腹が立つことってありませんか?」

「それはお前が間違ごうちょる。タイ人のアドバイスに期待をしすぎるから、的がはずれたアドバイスに腹が立つんど。えーか、タイ人からのアドバイスは、たいてい『的がはずれちょる』(マイトロンパオ ไม่ตรงเป้า)。これが普通ど。タイ人はみんな、タイ人の立場でものを考える。わざわざ日本人の立場に立ってアドバイスをしてくれることはないんど。じゃから、ほとんどのアドバイスはアテになりよらん」

「アドバイスをもらう意味ってなんでしょうか?」

「タイ人のアドバイスは、日本人の立場に立って考えてくれないところに意味があるんど。じゃから大抵のアドバイスは的外れになるが、そのおかげで、たまに日本人が気づいていなかった大事なことを教えてくれるときがある。自分たちの発想なんて、たかが知れとる。魚で一番卵を産む魚を知っちょるか?」

「『マンボウ』(プラープラアーティット ปลาพระอาทิตย์)です」

「おー、よく知っちょるの。マンボウは、1回に2億個も卵を産む。そのうち大人になるまで生き残れるのは、たった2匹ぞ。宝くじで一等を当てるよりも30倍難しいんど。マンボウ1匹大人になるには、それだけ多くの犠牲になるマンボウが必要じゃ。『役に立つアドバイス』(カムネナムディーディー คำแนะนำดีๆ)もマンボウと一緒ぞ。死んでいくアドバイスがたくさんあるから、1個の役立つアドバイスも生まれよる」


齊藤正明『マグロ船仕事術 - 日本一のマグロ船から学んだ!マネジメントとリーダーシップの極意』ダイヤモンド社2011.を元に一部改変


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