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世界

母がふとしたいきさつで、「結局誰と結婚しても、同じかもしれないね。結婚生活がうまくいひくとは、だれとでもうまくいくし、うまくいかないひとはうまくいかない」というようなことを言った。

もし母が父と結婚しなければ、私が生まれなかったはず。もっといえばあの日、母も父も長い一日の終わりに疲れ果てて、月が光を投げかえている青いベッドの上で、ただ手を握りあって眠っただけだったら。

すこしでも時間がちがえば、私は生まれなかったはずで。そうすればいま目に見えているすべて、パソコンの画面も、棚も、窓も、台湾の生活も、友人関係も、大好きな人も、そういったすべてのものとわたしとのつながりがたてれていて、そもそもそのつながりさえもなくて、ただ無限のなかにいるだけだっただろう。私の代わりの人間が彼・彼女なりのやり方と世界で私が引き受けるはずだった世界を引き受けている。
そうしてわたしは、わたしであるという考えのかけらさえないままで世界ととけている。それはいま生きているのとと同じくらい素敵な事だっただろうと思う。


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