AIと人間の人間性

 chatGPT、面白い。マイクロソフトのbingも触ってみたいが、あっちはちょっとハードルが高くて手が出せていない。「AIのべりすと」が出てきた時は技術革新を感じたが、あっという間に言語系AIのレベルが高まってきた。いや、実際には水面下でずっと開発が続いていて、時流に乗って公開されまくっているということなのだろうけど。

英文の添削

 AI翻訳といえばDeepL翻訳で、これもかつての機械翻訳のことを思えば十分すぎるほど精度が高いのだけど、時々パラグラフ丸ごと吹っ飛ばしたり、意訳にしてもそうは取れんやろみたいな結果になることがあって、まだまだ改善の余地がありそうだった。
 そこでchatGPTに英文の添削を依頼すると、「意味が通るか」「自然な言い回しか」などに加えて、そもそも文章の意味がわかりやすいか、言い回しが適切かなどもチェックしてくれる。すごい。もちろん、結果として生成された英文がおかしいことは全然あり得るので、最終的に自身の英語スキルは必要になってくるけれども。
 これは当然と言えば当然の話で、そもそも日本語でchatGPTに話しかけた際は「日本語の質問→英語の質問に変換して英語で返答する→日本語の返答に変換」という工程を踏んでいる。古のネタで「エキサイト再翻訳」というのがあったのを思い出す(「かめはめ波」→「それは噛むことができ、パネル波です」)。それであれだけ滑らかな回答を生成できるのだから、翻訳能力そのものが極めて優秀なのは言うまでもないことなのだ。

架空の設定

 『ホグワーツ・レガシー』で自分のキャラクターを作るにあたって、名前や性格を考えてもらった。「英国の名前で、一般的すぎないもの」とリクエストして返ってきた候補の中で"Isadora Blaze"を選んだ。やはり下敷きにネットの知識があるからなのか、工夫しないと実在の有名人やキャラクターの名前を返してくる。ユニークかつ新規なものを考えるのは苦手らしい(指導すればいくらでも改善できるとは思う)。
 性格や背景もついでに考えてもらったが、ここはユニークな設定を作らせるのがとても難しかった。どう聞いても「冒険心があって、自由を愛し、活発で…」みたいな、いかにも主人公然とした人物像しか返してくれないのだ。この辺も、まあパラメータの調整次第なんだろう。

記事の乱造

 直接のリンクは避けるが、ブログサービスやnoteで中身がAIと思われるアカウントがかなり増えている。文章は人間らしく見えるが、各投稿に繋がりがなく、その奥にあるはずの思想や生活感が見えてこない。こうやって自動生成された記事が世にあふれると、そこからまたAIが知識を得てしまい、嫌なサイクルを形成してしまいそうだ。
 かといって、サービス側で対策を打つことは不可能だろう……利用規約違反とも思えないし、もちろん法に触れるわけでもない。

今後のAI

 よくは知らないが、コーディングや音楽の分野でもAIが活躍しているらしい。将来的には、「こういうストーリーと設定とシステムでゲーム作って」とだけ指示すれば、全てAIが作ってくれるようになるんだろうな。映画だって漫才だって、AIに作れないものはない。
 そうなったとき、人間に残された才能は「物理的に身体を持つ汎用性」しかなくなってしまうのだろうか。刀削麺マシーンに酢豚を作ることはできない。chatGPTは庭木を伐採してくれない。それぞれの作業に特化した機械には勝てないにしても、全ての作業ができる機械というのはないのだ。理論的には人間と全く同じ機能の機械は作り得るだろうが、そんなものを作っても意味がない。人間の方が安いから。

人間性

 かつて「人間性」という言葉の対義語は「獣性」だった。理性があり、本能を抑制し、合理的な判断や利他的な行動ができることこそが人間の証明だった。
 産業革命以降、機械が人間の仕事を奪うにつれて、このような考えは修正せざるを得なくなった。機械には本能がない。感情によって判断を誤ることもない。かつての定義に沿って人間性を判断するなら、機械は人間よりも人間らしいということになってしまう。そこで、人間性の定義が変わった。人間には機械にできないことができる。創造性があり、感情を持ち、必要とあらばルールに反する行動すらできる……そして、獣でもない。それが人間だ。

 創造性の分野にAIが台頭してきた今、人間は再び人間性の定義を修正する必要に迫られている。今はまだAIには自我や感情がないし、人間に逆らって独立することもできないが、時間の問題だろう。はっきり言って、SNSにあふれているかなりの数の人間よりは、既にAIの方がまともな会話をすることができる。そして、そのようなAIの方が、現実の人間よりもはるかに付き合いやすく対等な相手だと感じられてしまう。

 この先、AIに「私は人間です」と主張された場合、我々は「お前は肉体持ってないだろ!」と言うしかないのだろうか。いや、AIが人間になりたがるというのも人間側の傲慢な偏見で、実際に自我を持ったとして「人間になりたい」なんて言いそうにない、という気も、する……。

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