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『ヤエヤマヤマガニ』(BiOctober2021/10/4)

概要

 サワガニの仲間としてはかなり大きめの、陸上性の強いカニである。石垣島と西表島のみに生息しており、山林の水溜まりや川辺などでよく見ることができる。

 2019年11月に定められた沖縄県の条例によって、本種は捕獲などが禁止されることとなった。俺が石垣島で本種を捕獲して飼育し始めたのは2019年6月だったので、意図してはいないが滑り込み採集みたいな形になってしまい、少し反省している。もちろん、生息域の狭い種であることは認識していたし、余計な採集圧をかけないよう、道路上の水溜まりで歩いていた複数個体のうち1ペアを持ち帰るに留めたが、モラルの面からは褒められたものではない。

 動物性であれば、飼育下では割と柔軟に餌を食べるようである。もちろん累代飼育をしようと思ったら最適な餌を与える必要があるのだろうが、そもそも繁殖が難しいサワガニの仲間の、今となっては捕獲もできない種となれば、飼育に関して情報が進むことはあまり期待できない。我が家ではレオパゲル(レオパ用)やカーニバル(肉食魚類用)、レプトミン(カメ用)など様々な人工飼料を食べたし、赤虫や魚の死骸も食べていた。

思い出

 2019年の石垣島旅行で出会った。これもチョウセンブナと同じく、目的地から逆算して採集しようと決めた種だったりする。カジュアル生物勢なのでそういうのが多い。

 石垣島ではハブが怖すぎて山林や草藪に踏み入っておらず、公道から手が届く範囲での採集となったが、おそらく本種と思われるカニは割とたくさんいるようであった。路上の水溜まり、水路脇の石の裏などで見つけることができた。見つけるのは簡単だが捕獲は少し難しく、走るのが早いし、そこそこサイズがあって挟まれると痛いし、山に入ったら追えないし……。カニは手荒にすると脚がすぐもげるので慎重にならざるを得ず、まあ1ペア確保できたことが十分な成果と言っていいだろう。いいということにして。

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 はるか昔にサワガニを捕まえて飼っていたことがあるが、全く生態を理解していなかったのでメダカなどと同じような水槽に入れて飼っていた。たしかこのときは1週間くらいで脱走して消えてしまったと記憶している。実際のところ、サワガニの仲間はむしろ陸地を作ることが大事なのだ。種によってバランスは異なると思うが、ヤエヤマヤマガニなんかは体を浸せるだけの水場があれば十分で、あとは基本的に陸にいるようだ。

 最近はペットとしてのカニもそれなりに多い……のかな? ザリガニに比べればマイナーだが、アクアテラリウムのような環境で飼う人もいるようだ。穴掘ったり草切ったりするので問題も多そうだが、渓流のような岩組みでサワガニを飼ったらずいぶん楽しそうだと思う。

 カニは全体的に飼育下繁殖が難しく、流通のほとんどをワイルド個体に頼らざるを得ないのが辛いところだ。累代している人も確かにいるようだが、需要が高くはないためCB個体が安定して供給されることはまずない。今後カニを飼いたくなったら、まずは自分でサワガニを採ってきて繁殖させるところから取り組んでみたい。

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