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『ウズラ』(BiOctober2021/10/3)

概要

 キジ目キジ科ウズラ属の鳥類。どちらかといえば食用として有名だが、ペットとして飼われることも割とある。とは言っても近縁のヒメウズラのほうがよりペット向きで、そっちはペットショップで見かけることも。

 ウズラの卵はスーパーなどで簡単に手に入るが、この商品にはニワトリと違い有精卵が混じっている。そのため、適切に保温すれば孵化させることも可能である。これはそもそも意図しない混入であり、有精卵の割合についてははっきりしないが、後述する実験の際には130卵を温めて13個体が孵化した。つまり、このときは10%の有精卵が入っていたことになる。10年ほど前から「ウズラ卵のパックには有精卵が混じっている」とネットやテレビで話題になり、実際に孵化させる人も多かったようだ。

 2009年時点でDPZに記事が上がっていた。直接的に影響を受けたわけではないが、おそらく俺が興味を持ったのもこのあたりの時期だと思われる。

 家畜として使われる系統の寿命は2年程度であるが、そこそこ大きくなり運動量も多く、鳴き声も大きいため、安易な気持ちで孵化させた人はその後大変な目に遭ったかもしれない。文鳥やインコのようなイメージで飼育を始めた人がいないことを祈る。前述のDPZの記事は、最期の〆がこのような文章になっているのは極めて残念なところである。

小さなお子さんのいるご家庭、夏休みの自由研究に困っている諸君、この記事のひな鳥のかわいさにやられたあなた、刷り込みをさせて自分の後ろに鳥の行列を作りたい人、みんな今すぐスーパーに行って、うずら卵を買い占めましょう!

 ……2009年はまだTwitter黎明期で、スマホも普及しておらず、こういう文章も許されていた。もし2021年にこんなことを書いたら一発で炎上していただろう。

思い出

 大学生だったころ、噂を検証するべしと思い立ってスーパーで卵パックを購入し、研究室のインキュベーターを用いて実験を開始した。一定に保温し、毎日欠かさず転卵すること20日ほど。卵が揺れ動き始め……

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 簡単に孵化した。

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 なんでこんなに可愛いのかよ ヒナという名の宝物

 合計で13羽のヒナが孵化したので、段ボールなどで簡易的な小屋を作り飼育していた。挿し餌などは全く必要なく、水と餌を適切に与えていれば勝手に食うので飼育は簡単だった。さすが家畜。

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 写真ブレッブレ。2回に分けて孵化させたので体格に差がある。成長はかなり早い。

 ヒナのうちはわりと懐くというか、体温を求めてか自らすり寄ってくるような可愛さもあるのだが、成長するにしたがって態度は硬化していった。まあその辺は覚悟していたことだが、いくら孵化から世話していても人間を親と思い込むようなことはないようだ。

 孵化からしばらくの間飼育し、このウズラたちは様々な結末を迎えることになったが、その辺は割愛させていただく。


 この経験は俺の人生に大いに役立った。というのも、スーパーの卵パックに有精卵が混じっていることをそもそも知らない人が多いので、初対面の相手の興味を惹く鉄板の経験談に仕立てることができたのだ。これが何に役立ったのかというと、就活の面接である。

 就活の面接というのは相手を面白がらせれば勝ちだ。真面目にありきたりなことを言い続けるより、多少奇妙でも相手の興味を惹くほうがよっぽどいい。そう考えて俺はウズラ一本で就活を戦い抜いた。自分の長所でも、短所でも、学生生活の思い出でも、自己アピールでも、とにかくウズラの話をし続けた。もちろん相手の質問に沿うように細部を整えて話す必要があるものの、聞いているうちに相手も面白くなって質問の内容を忘れたりするので、結局のところ面白い話ができればそれでいいのだ。

 これはもう確実に、俺が今の職に就いているのはウズラのおかげだと言っていい。ありがとうウズラたち。さまざまな生物と関わってきたけども、人間以外でまず感謝すべきはウズラにちがいない。また会おうな。庭付きの家に住むことになったら、ちゃんと砂浴び場を設けて小屋も立てた上で飼ってやるからな……。

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