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『ヒョウモントカゲモドキ』(BiOctober2021/10/1)

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概要

 英名はLeopardレオパード Geckoゲッコー、直訳すれば「ヒョウヤモリ」といったところか。トカゲモドキというのはヤモリでありながら瞼を持ち(まばたきができる)、爪を持つ(代わりに壁登りができない)グループで、見た目はトカゲのように見えることからこの名前がついている。あくまでヤモリであるので、「ヒョウモントカゲ」と省略するのはあまり適切ではない。まあ通称の「レオパ」も適切かといったらアレだが。

 爬虫類飼育者向け雑誌であるビバリウムガイドでは(というか編集長の富水さんが?)長い間レオパ呼びを敬遠する向きがあったが、「もはやペットとしてのレオパと生物種としてのヒョウモントカゲモドキは別物である」とケジメをつけて『みんなのレオパ!』という特集を組んでいたことが印象深い。時代の潮流には逆らえないということだろうか。呼び方なんて何でもいいでしょ……と思う人も多いだろうが、そういう風潮があった結果として今のエキゾチックペット業界が極めて混沌カオスな状況となっていることは知っていてほしい。

 かつて(1980年代?)は高価な種であり、単なるアルビノに十万円単位の値がついていたらしい。飼育・繁殖が容易であることから品種改良が盛んにおこなわれ、もはや数えきれないほどの品種・系統が存在する。歴史が比較的短いことから遺伝様式もある程度整理されており、高校生物程度の知識でもある程度狙ったモルフを作り出すことが可能だろう。

 特筆すべきは飼育の容易さで、まず噛まない・鳴かない・運動しないという点で現代日本のペット需要(住宅事情)に合致しているし、気性が温厚でハンドリングできて、丈夫で長生きし、さらに見た目も可愛いとなれば、爬虫類界のトップスターとなっている現状にも納得がいく。かつては餌に昆虫を使用しなければならないという(唯一の)弱点があったものの、人工飼料が普及した今となっては過去の話。本当に欠点が見当たらない老若男女向けの爬虫類であると思う。

飼育歴

 2012年に横浜のペットショップで購入したのが最初の導入個体だった。単純なトレンパーアルビノの♂で、いかつい顔をした恐竜みたいなやつだった。その後、ジャパンレプタイルズショーなどの即売会イベントに行くようになって、♀2頭を購入して計3頭を飼育していた。↓は2013年に撮影した♀。

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 2015年に初めて繁殖に成功し、マックスノーアルビノ♂を得た。最初に孵化した赤ん坊を見た時の衝撃はものすごかった。基本的に孵化直後の状態では売っていないので、赤ん坊を見るためには自分で繁殖させるしかない。

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 その後、病気などで初代の3頭は死んでしまったが、2019年に上記のマックスノーアルビノ♂の子供が得られたことから、飼育下で孵化→繁殖のサイクルを達成できた。これも、とても良い経験になった。

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 2021年10月現在、我が家にいるヒョウモントカゲモドキは8頭。良いタンジェリンのペアがいるので、これの子を得ることが今後の目標となる。もしそれが達成できたら、あとは3年に1回くらい新しい血を入れるだけで系統を維持していきたい。10年近く飼育を続けてわかったことだが、自分にとって本種の飼育は10頭くらいが限界だと思う。

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思い出

 本格的に飼育趣味を始めたのはこの種からということになるだろうか。実家で飼っていたミシシッピアカミミガメは20歳を超えて未だ健在だが、自分で世話していたのは小学校~高校を卒業して家を出るまでの10年間ほどなので、もはや親が世話している期間の方が長い。「飼っている」という実感を持って飼い始めたのはレオパが最初になる、と思う。

 人生のマイルストーン的な種ではあるのだが、どうしてレオパを飼おうと思ったのかは全く覚えていない。このときに使っていたTwitterアカウントが生きていれば何かわかったかもしれないが、とっくの昔に電子の海に投棄した以上は手掛かりがない。おそらくは飼いやすい爬虫類を求めて辿り着いたのだと思う。なんでもかんでも入門種から始めたがる癖があるので。

 最初は飼育ケースに赤い砂を敷き、砂漠のような環境で飼っていた。3頭目くらいまではこのスタイルでやっていたのだが、「掃除が面倒」「砂が臭い」「砂代が高い」「指先の脱皮不全が多い」などなど不具合が連発したのでペットシートに切り替えた。そうしたら不具合は全て解決し、紙の下に潜ってしまうという些細な問題はあったが快適な飼育を続けられるようになった。それ以来ずっと紙を使っている。ペットシートだったり、キッチンペーパーだったり、不織布だったりする。レオパの調子が良ければなんでもよいのだ。うちではウェットシェルターを使わず、簡素なプラ製のシェルターと水入れしか入れていないが、指飛びどころか脱皮不全すらここ5年は起きていない。霧吹きもほぼしない。湿度を上げてやることが脱皮不全対策になる……というのは嘘ではないかと思っている。(もちろん、極端に乾燥した環境では湿度を与える必要がある。)

 レオパは噛まない・鳴かないと書いたが、これは嘘で、実際は噛みうるし鳴きうる。赤ん坊のうちは盛んに声を上げてこちらを威嚇して噛みついてくるし(ダメージはほぼゼロ)、大人になってもごくまれに小さく鳴くことがある。餌と間違えて噛まれるパターンを除いても、急に掴んだりすると噛みついてくることもある。その歯は意外と鋭く、口の形に沿って流血することになる。一度、ケージのフタを閉め忘れて脱走したレオパを妻が発見し、戻そうとして指を噛まれたことがあった。当然ながら俺も何回か噛まれたことがある。別に大事には至らないのだが、「レオパは噛まない」と思い込んでいるといざ噛まれたときに必要以上に驚くことになるし、取り落して骨折させてしまうような事故も考えられるので、噛むこともあると知っておくことが重要。

 繁殖には2回成功しており、孵化後の幼体の世話についてはある程度問題なくできているのだが、交尾~産卵~孵化までの管理はかなり難しい。最も難しいのが産卵後の卵の管理で、これはもうとにかくカビとの戦いになる。毎日洗浄して拭き取っても翌日にはカビが生えている。どうすればいいのか全くわからない。床材を接触させなければマシだろうと思って、卵を浮かす台を設置してみたところ、水分が足りなくなって卵がしぼんでしまった。空中湿度が100%に近ければよいというものではなく、ある程度直接的に水分を吸収する必要があるらしい。ジレンマだ。今度やるときは水苔やバーミキュライトだけでなく、甲虫の人工蛹室に使うような園芸用スポンジも使ってみようかな。

 エキゾチック界では知らぬもののない本種も、一般人に対する知名度はまだまだ低い。「ヒョウモントカゲモドキを飼っている」と言って一発で理解できる人はそこそこマニアックな人だ。まあ、でも、それでいいのだろう。捨てレオパが問題になるような時代は永久に来てほしくない。もはやレオパに野生は似合わない。


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