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『クワガタ』(BiOctober2021/10/9)

概要

 特に説明の必要もない甲虫のグループ。日本でよく見かけるのはコクワガタ、ヒラタクワガタ、ノコギリクワガタあたりで、特にコクワガタは都心でも見られるほど。

 カブトムシと並んでメジャーな甲虫ではあるが、様々な点で生態は異なっている。たとえばカブトムシは羽化後数か月の命である(越冬しない)のに対してクワガタは越冬して数年生きるし、幼虫の餌も違う。この程度の知識は常識だろうと思っていると、生物に興味がない人は本当に知らなかったりするので注意が必要である。メジャーだからといって生態が正しく理解されているとは限らないのだ。両生類と爬虫類の違いがわからない人も本当に多い。

 「クワガタ」の語源は兜についている角状の飾りらしい……が、そのような兜が世に出てくる前はなんと呼ばれていたのだろうか。まあ、各地に残る方言的な俗称のどれかであって、統一的な名称はなかったのかもしれないが、英語のStag beetle雄鹿の甲虫みたいに鹿を語源としなかったのは不思議である。

思い出

 父親が農学部卒の林業職であり、登山も趣味だった。生物が割と好きで、いろいろな虫を持って帰ってくることがあった。そのなかにクワガタも含まれていた記憶がある。おそらくはコクワガタで、それが人生で初めて触れたクワガタだったと思う。母方の祖父も山で鳥や虫を採ってくるのが趣味で(野鳥をたくさん飼育していた(今は違法))、手製のトラップでたくさん甲虫を捕まえてくれたのを覚えている。

 大学の周りにはヒラタクワガタがたくさんいた。熱帯夜に山道を歩き、蚊に刺されながら木のうろを覗く。ライトで照らした穴の奥に黒光りする大顎や脚先が見えた時の興奮は例えようのないもので、掻き出すための針金を持つ手が震えていたのを覚えている。もちろん、出てくるのは何の変哲もないヒラタクワガタにすぎず、クワガタ屋にとっては特に価値もない雑虫なのだが。こういう採集はギャンブル性を帯びている。

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 この写真、おそらくすべて自分で採ったヒラタクワガタなのだが、左が大きすぎる気がする。ダイオウヒラタか……? それぞれ、死んだ後に標本にしようとして乾燥させているところ。大学時代にはコクワやノコギリに加えて、外国種もいくつか飼っており、一時期は100本くらいのビンを大学の恒温室に(勝手に)入れていた。

 社会人になってからしばらくはメタリフェルホソアカに手を出して、累代飼育していた。

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 うーんかっこいい。これは初めて自分で羽化させたオス。メタリフェルはかっこよさと飼いやすさを両立した良い種である。産地ごとに特徴があって色彩のパターンも多い。いろいろあってクワガタ飼育は断念することになり、今後もたぶん再開することはないのだが、人にオススメするとしたらこいつになると思う。

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