推しの結婚と私の不安



2023年の暮れ
この所ずっともやもやしていた。
事務所がゴタゴタしていたから、それだろうと思っていた。そんなもやもやも日々の供給に目を向ければ特に気にはならなかった。
私の推しは多忙だ。レギュラーが多数あり、土日の朝は必ず生放送で顔が見れた。SNSも使いこなし、ほぼ毎日何かしらの供給が必ずあった。それなのに、この所何故か視界の端に暗いもやがチラつく。

年が明けた。去年は事務所のカウコンはなく、このままじゃ年が越せないと冗談を言いながらも、新春をレギュラー番組の生放送に出ていた推しで感じる。
そこでも推しは生放送内で難しいパフォーマンスを、多忙により少ない練習量だったにもかかわらず成功させ、私はまた元気をもらった。1月は推しの漫画の単行本発売が迫っていて、オタクは祭りが大好きだから、またお祝いで楽しくなるんだろうな。そんな事を思いながら、明けたんだが何なんだか実感のない正月をソワソワしながら過していた。

そうしたら、推しが結婚を発表した。
一瞬にして頭に血が上ったのを憶えている。衝撃で頭皮の毛穴が開いた感覚。それに名前はつけられない。ただただびっくりして湧き上がる感覚を持て余した。それからゆっくりと感覚を掴んでそれを喜びだと認識する。それはそれは嬉しかった。大変なことしか無いだろう世界で、それでも表に暗い感情を出さない人の隣に、ちゃんと寄り添ってくれる人がいる事が本当に素晴らしい事だと思った。脆い人だとか一切思ってないが、それが嬉しかった。「ああ、この人が辛い時1人じゃないんだな…」とめちゃくちゃ嬉しかった。

ただ、自分の中でのもやもやがまた大きくなるのを感じた。でも、そんなことより嬉しかったから同じように喜んでいる方々と喜びを分かち合い、悲しんでいる人はそっと見守っていた。そんな中で私のもやもやがどんどん大きくなっていく。視界の端でチラ付く程度だったそれは、かつて無いほど大きくなって、遂に私の眼前で直接訴えてきた。

不安だと。

無視ができなかった。
もやもやが、結婚の嬉しい気持ちで誤魔化すなと言う。ちゃんと見ろと言うから、とりあえずなぜなのか聞くことにした。とりあえず不安らしい。何が不安なのか、こんなに毎日供給のあるアイドル珍しいぞ、この贅沢者めと思った。時間を割くという事は命を削るのと一緒らしい。それならばものすごい供給を頂いている私達ファンは、紛れもなく愛されているじゃないか。他に何を奪う気なのかと叱りつけそうになったけど、そうじゃないと言う。分からなかった。わからないから最初に戻った。私は中丸さんのどこが好きなのかを考えた。

私は中丸さんの格好いい所が好きだ。どこが好きかと言われたら1番はそこなのだ。彼ほど血が泡立つような興奮を覚える格好良さでダンスを踊る人も、疲れた心に染み入るように歌う人も、時間が止まったようにゆっくりと下ろされる瞬きの速度に見惚れる様な人も他にはいないのだ。俯いてがむしゃらに踊る姿は心臓が止まる気がするほど格好いい。歌だって、苦手な音域を難なく出せるようになってから、低音高音関係なく軽々と歌いこなしていた。運動神経もかなりいいのを知っている。自分の感覚と会話をするようなHBBは、ただ突っ立っている事しかできないくらい格好いい。これは全て中丸さんが素晴らしく選ばれた唯一無二のアイドルである証だ。私が大好きなアイドルであるという証。
情報番組の冷静で核心を突きつつ周りに配慮されたコメントや、バラエティでの決して出しゃばらないが一瞬で役割を理解し立ち回る姿。よにのでのバランスを見ながらゆるく、でも散らかって収集がつかなくなった所をサラリと纏める立ち振る舞い。ゆるゆるとしながらもたまにチラ見せされる芯の強さそれも大好きだし、よにのに至っては私が中丸担に出戻ったきっかけだった。
多彩な所が好きだ、本当に。何処に時間があるのだろうかと思うくらいに沢山の事を並行して行って平均点以上を出す。最近は漫画家にまでなってしまった。本当に大好きだと思う。尊敬できる人だと思う。

ああ、そうかと思った。

彼は多彩過ぎたのだ。私が本当に見ていたいものが、多面的な彼を見るうちに分からなくなってしまう程に。
毎日供給があった。新しいことが次々に流れ込んできてびっくりして、ただ凄くて楽しかった。だからその中丸さんを推していると思っていたし、いつの間にか中丸雄一個人を推す延長にアイドル中丸雄一がいるような錯覚を起こしていた。

だけど、私は漫画家を押したつもりはない。情報番組のコメンテーターを推したつもりも、バラエティの面白お兄さんを推したつもりも、よにののイジられキャラも私は推したつもりはない。私が推しているのはアイドルの中丸雄一だ。私の推しの本職はアイドルであってほしい。
彼に新しい面が増える度に彼のアイドルの面が何処か遠くへ仕舞い込まれてしまって消えていくのではないかと、もう見れないんじゃないかと不安になっていた。

アイドルという性質上年齢とともにアイドルを中心からずらさなければいけない時期に来ているのかもしれない。だが、まだいけるって!まだ格好いいじゃないか。Fantasiaの時何度かアクロバットかブレイキンをやろうとして体がついてかなくて止めたんじゃないかと思われる動きを見た。それでも格好良かった。それでも格好いいをやってほしかった。だからお願いだからアイドルでいてくれ。
彼は多彩だ。やってのけるのだ。膨大な時間と努力を無いものとして、涼しい顔をして。そして、これはKAT-TUNにも言える事なのだが多くを語らない。だから、アイドル活動がない中でアイドル以外の面を見てしまった時に、心がざわざわしていたのだ。アイドル以外の者にならないでくれと。

正直私は結婚より私の推しがアイドルでなくなる事の方が何倍も怖い。格好よくなくなることのほうが怖い。ライブになぜ行くのかというと、多分彼の格好良さを確認しに行って、予想を超えた格好良さにぶん殴られて捻じ伏せられたいのだ。あぁ、すいませんでしたと跪いて許しを請いたいのだ。
彼はアイドル界のサザエさんであるらしい。それでも、沢山の人に好かれてアイドル界のサザエさんであっても、マスオさんとタラちゃんと幸せに暮らしてても、カツオと買い物帰りに野球をしてほしいのだ。(例えが悪すぎる)土日の朝の面白かわいいふわふわ優しいお兄さんが、何処を見ているのかわからない目で歌っているのが好きなんだ、謙虚な新人漫画家が客を意識していないように見せて其の実物凄く計算された美しさで、体に流れる音楽を全身で表現するダンスが好きなんだ。それを終わりにしないでほしい。
そこまで泣きながら考えて、冷静な自分が突っ込んだ。



「え?中丸さんアイドル辞めるとか言ってなくない?」



……………そうですね。
全然少しも全く言ってませんね…。

急に吹っ切れた。

お得意の妄想で勝手に不安になっていた。
だけど、自分の推し事の軸が明確になった。
彼らには好きに生きてほしい。幸せになってほしい。確かにアイドル中丸雄一を推しているが、人間中丸雄一が幸せであることを願っている。だからこれからも好きなことをしてほしい。老衰で死ぬ時はやりたい事は全部やってやりきった笑顔で死んでほしい。我ながら気持ち悪いし重い。だが、彼がアイドルであるという前提がなくなったら、彼のアイドル性で捻じ伏せられる事がなくなったら、多分、この気持ち悪い湿度を持った重い塊は頭の隅に追いやられ、思い出すたびに少しづつ削れて小さくなって終には無くなるのだ。

アイドルの辞め方は2通りあると思っている。期日を決めてその日にスッパリ辞めるか、ぼんやりゆっくりグラデーションでアイドルが薄くなっていくか。期日を決める場合なら盛大に泣いて切り替えるし、グラデーションであった場合、私は中丸さんの活動や言動にアイドルを見つけられなくなった時担当を降りるんだと思う。
そもそも、私が思うアイドルと中丸さんの思うアイドルが同じかどうかもわからないのだ。その上で、お互いの解釈の違いで推せなくなるならそれはもうしょうがない。
どうなるかはわからないが

中丸雄一様
貴方の中にアイドルを見つけられる限り私はファンでいると思います。

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