見出し画像

山登り人生vol25春山合宿穂高連峰その2

22歳の春、青春真っただ中。
山日記には詳しく記述しており3回に分けその1を先日投稿しました。
今日はその2、出発から奥穂高岳登頂までです。

No46春山合宿(穂高連峰)  

昭和46年4月27日~5月3日
7名(名前は省きました。) 
4/27 佐世保(急行西海1号)⇒
4/28 大阪(急行比叡)⇒名古屋(急行赤倉)⇒松本(タクシー)⇒上高地→徳沢幕営
4/29 徳澤停滞
4/30 涸沢BC入り
5/01 白出のコル→奥穂高岳登頂
5/02 北穂高岳→涸沢岳手前のコル→BC→上高地(バス・汽車)⇒松本信州会館
5/03 松本(急行ちくま1号)⇒名古屋⇒大阪(臨時急行西海52号)⇒
5/04 佐世保帰着

28日徳澤入り

夜行列車は眠れない。4時頃には数名が起きていた。
まだ、汽車は姫路を過ぎていない。各地で新幹線の工事が進んでいる。
大阪が近づくと通勤列車と前後しながら大都会に入って行く。
通勤列車のお客は皆一様に新聞・週刊誌等を読んでいる。
大阪で名古屋行き急行比叡に乗り換える。
名古屋では長野行き急行赤倉にと二度乗り換える。
昨年、この中央本線を通過したのは夜であった。
松本までは初めて見る光景に目を奪われる。
初めて雪を見たのは御嶽山か、川の向こうに白く大きな山容を構えていた。

春の信州道。ネット借用。

白樺が目立ち始め松本平野も近くなると、桃・さくらの花が咲き誇っている。リンゴの花にはまだ早いようだ。辺り一面に続く葡萄畑、桃畑、リンゴ畑、その遙か先に常念の山々が白い姿を見せている。
列車は塩尻で方向を変えた。14:20二度目の松本駅に足を踏み入れた。
買出しを済ませ、大型タクシー2台に分乗し上高地に向かう。
新聞発表とは裏腹に、今年の雪は非常に少ないと運転手が話してくれた。
M先生の話だと、梓川の水が例年より少ないとのこと。釜トンネルを過ぎ、車窓越に穂高連山を見ることができた。

上高地より奥穂高岳。ネット借用。

確かに雪が少ない。上高地が近づくにつれメーターが上がる。
マイクロ1台6,000円を見込んでいたが、タクシー2台で7,700円となった。
標高1,300mの上高地に降り立つと冷気が身を包む。
帰り3日午後3時にタクシー2台をと予約金2,000円を払い予約した。

まだ、陽は高い。明日の行動を考えて、行けるところまで進むことにした。皆のキスリングは30㎏。いつまでも明神岳を右に見て、梓川の流れに沿って歩く。

ネット借用しました。梓川と明神岳

蕗の薹がたくさん芽吹いているが、食べるには少し遅いようだ。
今日の入山は連休前のせいが静かである。
明神岳が後ろになり前穂高岳が見えるようになると、氷壁の宿徳沢園が見えてきた。

徳澤キャンプ場。ネット借用。

テント数はまだ3~4張位である。
キスを降ろしテント場使用届けを徳沢園に出す。1名30円であった。
テント、ツェルト各1張りを張って夕食の準備にかかる。
空模様が怪しくなり、直ぐ雨が降り出した。
このテントに7名が寝れると思っていたが無理なようだ。
食事を始める頃には、幕営技術の悪さもあってテント内に水が溢れ出す。
次の山行からはフライを携帯した方がいい。
夕食のすき焼きとご飯は少なく、ウドンを追加した。
天気図を作成すると、二つ目玉低気圧が対馬海峡と太平洋を九州からゆっくりと東北東に進んでいる。
しかし、明日の起床は6時として、シュラフに入った。
Kさんはツェルトに移った。

29日徳澤停滞

昨夕からの雨も夜半には雪に変わり起床した時は、辺り一面白一色の銀世界である。朝から雨や雪・霙と安定していない。
朝食は早く済ませたが、天気が落ち着かない。
昼から行動しようと、荷物を整理して時間を潰す。
行動できるかとささやかな望みをかけていたが、9時の天気図で今日の停滞は確実となった。
まだ、二つ目玉低気圧が通過していない。今日の入山パーティーも行くか止まるか思案しているようだ。濡れ鼠姿のパーティーやヘルメット姿も。
テントを張り直し、もう1張りツェルトを追加する。
ツェルト2張に4名、テント1張りに3名と別れた。
21時の天気図で明日は回復することがわかり、4時起床、5時半出発として2日目の夜を迎えた。

30日涸沢入り

Sの合図で4時丁度に起床する。
朝食準備は早かったが出発は遅れ6時となった。
一昨日までとは違い前穂、北尾根は白い雪を被っている。
横尾まで先日と同様、梓川に沿って歩く。新村橋が出来上がっていた。
2ピッチで横尾に着いた。

横尾大橋、ネットより借用。

ここをベースにするパーティーも多いが、テント数は例年の半分らしい。
ここで槍ケ岳方面と分かれ山荘前の橋を渡って涸沢を目指して歩く。
屏風岩からは新雪が盛んに雪崩れている。
層雲が二層になり山を三分にしている。なんとなく良い。
大学山岳部のしごきの声が・・・・・・新人は辛いものなのか?


川を離れ急な登りが始まり、林の中に入った。
この附近になると昨日からの雪がかなり積もっている。
林を抜け雪に埋もれた沢を渡ると、後は雪一色の急登となっている。
2∼3パーティーを追い越し南岳と涸沢分岐で小休止し、腹ごしらえをする。先ほどの大学生が近づいてきたので出発した。
雪渓が続きガスっていてあまり視界は利かない。
先行パーティーの列はガスに消えている。
後2ピッチ位でバテはじめ前の2人より遅れる。
K女史は頑張っている。
後10分、涸沢団地は直ぐ上である。トレーニングをやっているのか、ホイッスルの音が涸沢カールに響いている。
やっと着いた。重荷から解放された。
設営、入山届を済ませた後は、水場近くに設営した。
テント内でゆっくり休養する。

春の涸沢、ネット借用。

天気の方はまだすっきりせず、穂高の雄大な眺めもまだ拝めない。
Tさんはサンオイルを塗って外に出ている。
皆は横になり睡眠時間の追加に努めている。
4時近くまでゆっくりして、天気図を取る。
明日は晴天である。
この頃より北尾根や北穂、東稜など姿を見せるようになった。
今回の食糧計画は、アルファー米とペミカンをベースにしているので準備が早い。ベーコンはいけない。直ぐ腐って食べられない。
朝鮮漬も真空包装以外はダメである。
今日も早く寝る。

涸沢の夜明け。ネットより借用。

1日 雪上訓練後、奥穂高岳登頂

5時起床。まだ雲が残っている。
練習する場所を探しながら雪面に足をフラットに置いたりキックスッテプしながら登る。
ザイテングラードの東側、岩が露出した上部の右側で滑落停止の訓練をする。慣れてくると型にはまってくる。
10時頃、奥穂高岳を目指して登って来た諫早パーティーと会い、我々も訓練を止め一緒に行動する。
一歩一歩声を掛けながら登る。
K女史は遅れ気味。
雪が盛んに落ちてくるので上を見ると、登りのトレースを壊しながら降りてくる馬鹿な連中が・・・・・・。頭にきたM先生が一声どなる。
謝りもしないで降りていった。
コル手前でアイゼンを着けヤッケを着用して登る。
2ピッチでコルに到着。
コルには30名程の登山者がいた。
ここまで来ると飛騨側が見える。笠ケ岳の大きな山容が目に入り、大きな山塊が続いている。

白出のコル岩場には何パーティーか取り付いている。
暫く時間待ちして、まずは諫早パーティーが取付き、その後を我々が追う。一般ルート左側を登るとザイルを出したが無理と言うことで一般ルートをノーザイルで通過する。
岩場を過ぎ雪田を登り、岩が多い稜線を登り終えると、3,190m日本で3番目に高い奥穂高岳に立つことができた。
頂上は、そう広くはなかった。
そう感激は沸かなかったが、絶景である。

夏の奥穂高岳山頂。ネットより借用。

遠くに富士山、眼下に上高地が。
西穂ジャンダルムへの稜線、前穂への吊尾根、北には槍ケ岳を中心に野口五郎岳、薬師岳へ。西に遠く白山連峰が。
ジャンダルムにも3名の登山者が縦走している。
痩せているので2名は四つ這いになっている。
暫く写真を撮り、奥穂と別れる。
帰りは、同じルートを引き返す。岩場や雪田通過は緊張した。
一つ一つピッケルを差し込み下る。
K女史が降りて来るまで、アイゼンワークを練習する。

白出のコルで間食を摂り下降を始める。
KSさんを最初に皆、尻制動で下る。
苦労して登った斜面も下りは楽である。
上手に制動して下らないと転んでしまう。
自分も2∼3回転する場面もあった。
半分程下った時だろうか。10m程横を滑りゆく登山者がいた。
K女史であった。
Sの話では、ビニロンのオーバーズボンを着用していたが余り滑らなかったので、制動を掛けず滑って途中よりスピードが増し、その瞬間ピッケルを手放しこの結果になったようだ。
滑落中にピッケルが彼女の頭部上を左右に飛んで、周囲の者は緊張の時間だった。尻制動する前にしっかり方法を教えていなかった我々にも大いに反省するところがある。
結局は、先頭のKSさんも追い抜いて、最後には自分でピッケルを掴んで止まることができた。
滑落しながらKSさんの「大丈夫か」の声は聞こえたらしい。
無事BCに戻る。
BCに着くと、シュラフを干したりコーヒーを沸かし後続を待った。
諫早のメンバーは横尾まで下っていった。
K女史を迎えに行く。
どこも怪我はなくホットする。

夕食後、M先生より明日の行動について発表がある。
まずメンバーを二分し槍ヶ岳縦走組はKS、KM、Tとし、
穂高縦走はM先生にSと私となった。
槍ヶ岳を目指したかったが我慢する。
妥当な判断であろう。K女史は明日の調子をみてとなった。
明日は早立ちで早く寝ようとなったが、シュラフに入ったのは21時頃であった。

次回の投稿は、北穂高岳登頂から下山までです。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?