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「お店の人」として発信しない理由

わたしは「SAC about cookies」というクッキー屋さんを経営していて、はじめて7年目になるのだけど、ここnoteやTwitterで発信をするときに「お店の人」として発信をしていない。

プロフィールにも書いてあるし、もちろん隠しているわけではない。お店の告知などをすることもあるけれど、「お店屋さんの中の人」としてではなく、あくまでも個人として発信をしてきたのには理由がある。

と言ってもはじめからそれがわかっていて行動したわけではなく、なんとなく感じていたことが、最近ようやく「こういうことだったんだな」とわかってきたという感じだ。


わたしは、今のお店を「クッキー屋さんをやりたい!」という動機ではじめたわけではなく、シングルマザーとして働くのに「時間とお金の両方をガマンしない方法」を、自分ができることの中から考えた結果、たまたまそれがクッキー屋さんだった という経緯がまずある。

わたし自身が毎日お店に立つのではなく、「クッキーをつくりたい、お店で働きたい」という人と組んで運営してもらい、わたしは経営や企画や営業などの主に仕組みづくりをしてきた。当事者意識はもちろんあるものの、自身が作り手ではないことや、社会のためではなく自分の働き方のためにはじめたという自分勝手な理由だというのもあり、「お店屋さんの中の人」としての発信をすると、どこか違和感が出ると思っていた。若干のうしろめたさもあった。

それからいつも「お店と自分の距離」について考えていた。他のお店屋さんの発信なども観察して「これは誰に向けて書いているのか?」という点で見てみた。

店主が店頭に立っていたり、作り手だったりとお店と自分の距離がとても近い場合は、「お店の情報」と「個人の思い」が混ざっても、届ける先が「お店のお客さん」なのがわかる。(ときどき「これは同業者に見てほしいんだな」というのもある)両方分けずに発信しても問題ないんだなとわかった。

わたしは、お店のお客さんに向けて「こういう考えの人のお店なんだなとわかってほしい」という思いはない。(しつこいけどわたしが作り手の場合はやり方がまったくちがったと思う)「考えをわかってくれる人に買ってほしい」とすると、買ってくれる人の数を絞ることになる。わたしは、お店や商品を人と結びつけなくても、商品単体をよいと思ってただ買ってくれるお客さんも大事なので、「お店屋さんとしての考察や思考を伝える」という発信はしたくなかった。


そういう考えがあって、noteやTwitterではお店と切り離した個人の考えや思いを思いきり出すことができた。読者はお客さんではないので、接客ではないし過剰に気を配る必要もない。

のびのびと好き勝手に発信を続けていたら、それを読んだひとたちがすこしずつ増えていき、昨年はテレビで取り上げていただく機会にも恵まれた。その際も「クッキー屋さんの人」というのは一部で、わたし個人の考えをおもしろがってくれたのがはじまりだったし、内容も個人をまるごと紹介するような仕上がりでとてもうれしかった。(それにクッキー屋として業界ではだいぶたいしたことがないので、取り上げようがない)

そうして現在では、まずわたしのことを知ってくれた人たちが「へー、クッキー屋さんなんだ」と後から知って興味を持ち、クッキーを買ってくれるという状況になっている。ものすごくありがたい。

通常のお店の発信とは順番が逆で、「お店を知る」→「こんな人がやってるんだな」ではなく、「個人を知る」→「こんなお店をやってるんだな」という認知の順番になった。

言い方に語弊があるかもしれないが、クッキーを買ってくれる人の中には、「わたしのグッズ」のように応援の気持ちで買ってくれている人も多いのではないかと思う。


お店のお客さんに向けては書けないことをこっそり個人で書いていたら、それを読んでくれた人たちが気がつくとお客さんになっていた というのは、お店屋さんとしてものすごくうれしいことだ。

noteやTwitterを読んでくれている人はわたしのことをよく知っているので、わたしのことをどこか「うちの子」という感覚で、友達のお店のようにクッキーを買ってくれているのだとしたら、そんなにうれしいことはないな。

改めて、いつも読んでくれてありがとうございます。クッキーもあるよ。


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