あの日の自分に仇討ちを。


先日、NHK『SONGS』で小沢健二氏がしていた話がとてもすきだった。

婚活サイトにあがる、斜め上から撮った3割増しの自撮りはその人のつくった神話で、現実の本人を見たらすぐに神話は崩れてしまう。「現在」には一瞬で過去のすべてをみせる力がある。という内容だった。

そして彼はその話をこう締めくくった。

切々と過去を語ったら、僕も婚活サイトの写真のように自分をよく見せてしまうかもしれない。自分についての神話を作ってしまうかもしれない。斜め上から写真を撮るように。

しかも、実は本人が語る本人の過去なんて、人は内心話半分に聞く。だったら、現在の自分の目に見えるものを報告したほうがいい。その報告が、過去の自分を説明するとも思っています。神話は、とてもおもしろいものだけど。


婚活サイトに関わらず、現在では、SNSで自分の物語を見せることが当たりまえになっている。日々の、食べたものやコーディネートを紹介したり、自作のレシピを提供したり、好きな曲をコピーして歌ってみたり、心の中の言葉を140文字で書いたりする。

自分の物語を外に出すことは快楽だ。他人からの承認欲求だけではなく、単純に気持ちがいい行為だと思う。だからみんなが自分の物語に夢中になる。物語を彩るものを選ぶようになる。そして他者のリアクションによって物語は加速する。


小沢氏が語るように、過去がよく見えてしまったり都合よく話してしまうという現実との差の3割は埋まることはないかもしれない。その一方で、わたしは、過去がよく見えるということには良い効能があるとも思っている。

自分の物語を遡ってみたときに、いつか傷ついたこと、恥ずかしかったこと、悲しかったこと、悔しかったことがひっかかる。思い出したくないし、できればなかったことにしたい。でも、残念ながらそのインパクトが強く、意識すればするほど忘れることはできない。

それならば、いっそ自分の都合のいいように書き換えて、上書きしてしまったらどうだろうか。

傷ついたのは傷つけたほうが悪い。恥ずかしかったけど周りは大して気にしてない。悲しかった気持ちはなにかを大事にできた証拠だ。

今の自分から見て、当時の感情はどうあれ、そういうことにしていつかの自分を救い出してあげることができるのではないか。他者のリアクションで物語が加速するように、現在の自分が過去の自分へリアクションをすることで、満たされることがあるのではないかと思う。

わたしは何度か書いているように、学生の頃に仕事に関する情報が少なすぎて選べなかったことや、自分の得意なことを自分で認められず、活かすことができなかったことを、おとなになってからも根にもっていた。

そのことに気がついたのは、数年前に、ずっと続けてきた仕事の経験や考えていたことを振り返って書き出してみたからだった。自分が何に怒っているかわかると同時に、そのことをずっとガマンしていたのだとわかった。今になると、職業の知識は後からいくらでも得ることはできたのだから、いつだって自分次第で仕事を変えることはできたでしょうと思うけれど、どういうわけか学生の時の自分の選択に縛られて、自分が悪いのだからガマンしなければいけないとどこかで思っていたのだ。

それがわかってからのわたしがしたことは、過去の自分の経験や気持ちをnoteに書くこと、編集について勉強すること、やりたいことがある人を助けるアドバイザーの仕事、などなのだけど、これらはすべて14歳の自分、17歳の自分にしてあげたかったことをしたり、当時の選択を認めてあげるために上書きしている。それから、30歳まで気がつかないうちにガマンしていた自分にも意味があったと思えるように進んでいるのだと思う。

目の前の目的や誰かのためにしているようで、結局のところ本当の動機は「いつかの自分を救いたい」ということなのだ。あのときわからなかったことも、大人になったらわかったよ。何もできないと思っていたけど役にたったよ。と言えることは、過去の自分の通ってきた道を肯定することになる。


わたしは、齢を重ねることは劣化ではなく進化だと思うので、過去のどこかに戻れるとしても、どこにも戻りたくない。いつでも今がいちばん新しい考え方ができて、今がいちばんいいし、これからも進化しかないと思っている。(見た目や体力はまあ受け入れるしかないよね)

「今がいちばんいい」と言えるためにできることは、いつかの傷や痛みに蓋をし続けないで、自分の考え方や捉え方で過去を都合よくアップデートして、当時の自分のためにできることを仇討ちの気持ちで行動したらいい。自分の神話を、「悲しい物語」から、「どんどんレベルアップして進んでいく冒険の物語」に書き換えていったらいい思う。

あなたが仇討ちしてあげたいのは、何歳の自分ですか?

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