バレンタインの思い出(裏側の記憶)

バレンタインの時期になるとそわそわドキドキしてしまう。

ラブ的なそれではなく、職業病の後遺症といったところだろうか。

チョコレート業界から足を洗って6年が経つけれど、今でも毎年バレンタインの気配を感じるとなんとなく緊張してしまう。当時の仕事の量とプレッシャーと睡眠不足を思い出す。

このバレンタイン商戦の裏側がどうなっているのか、ちょっと思い出して書いてみよう。


わたしが働いていた会社は、普段は都内に(当時)6店舗の個人経営のお店だったのだけれど、バレンタインの時期には(1月末〜2/14の半月くらい)全国の百貨店のバレンタイン会場に80〜100店舗くらいで出店や出品する。それとは別に、都内近郊のバレンタインイベントに直営で出店する。

まず商品に関しては、前年のバレンタイン、ホワイトデーが終了した3/15から集計をし、年間で販売した数量と在庫などをだして、翌年の製造計画をたてる。そして1年かけて製造する。以前にも書いたように、製造した商品は、1粒単位でどこでいつ作ったものか追えるように管理した。製造ペースも品質管理も把握しながらバレンタインに向けてコツコツと作り溜めていく。

だいたい年末には出店が確定するので、年末年始のお休みの間に毎年必ずやっていた仕事は、各出店店舗の売上げ予算を決めて、過去10年のデータから(14日が何曜日かによって期間中の売上げの変動がちがう)イベントが始まってから14日までの日々の売上げ予想と15〜6種類の商品の販売個数の予想をたてる。それを合計120店舗分を合計したものと、商品の在庫を照らし合わせ、追加の製造指示をだすかどうか決める。

そして、何月何日にどこの店舗にどの商品を何個納品するかを決めてエクセルで一覧にする。A4で出力して6枚くらいを繋げて巻物のようにする。現場ではそれを見ながら出荷作業をする。その数量に合わせて包材(紙袋など)の最終手配もする。

年が明けたら、年末年始に求人サイトで募集した短期アルバイトの面接をする。直営の16店舗と既存店舗であわせて80〜90人の採用のため、250〜300人の面接をする。こちらで作成したアンケート方式にしてシフトなど記入してもらったうえで(時間短縮のため)の面接だったけれど、ひとりで面接している時間は他の仕事がすすまず溜まる一方なので大変だった。

採用者がきまったら、店舗ごとに振り分けてシフトをたてる。各店の売上げ予算から人件費を自動算出し、それにあわせて人数と時間を決め、そこに可能なアルバイトさんを当てはめるだけになっている(心配性の担当者がバイトを入れすぎて人件費が上がるのを防ぐため)。それからその80人に研修と試食会を行う。


そして、いざバレンタインイベントが各地ではじまると、今度は毎日各店舗から閉店後に送られてくるその日の売上げと販売数と在庫数を見て、翌日以降の納品予定の変更をするかどうかチェックをする。14日のバレンタイン当日に向けて盛り上がる売り場で、商品の欠品は売上げの損失になるし、在庫をもちすぎて賞味期限は短くなってもいけないし、最終日に全店舗で売り残って大量に返品されるのはもっといけないので、閉店後はデイトレーダーのように画面とにらめっこして、翌日の商品の追加をしたり敢えて欠品させたり、店舗間で交換したりとギリギリを責める緊張感があった。

売上げが芳しくない店舗には直接出向いて、閉店後にディスプレイをやりなおしたり、影にかくれて販売員のアルバイトさんに問題がないか見に行ったり指導したりした。


それからわたしの大きな仕事のひとつは、夕方に娘をお迎えにいって一度帰宅したときに、スタッフのみんなが夜ごはんのときに食べるように、スープを作ることだった。毎日つづく深夜までのしごとに冷めたお弁当では身体を壊してしまうので、サムシングホットをと思って、なにかしらのスープを用意した。寸胴で15人分くらいの豚汁、キムチスープ、中華風コーンスープ、ミネストローネ、と日替わりで作るようにしていた。


なんとなくおぼえていることをザッと書いてみたけれど、あの規模の会社で、これらを全てひとりにまかせていたのはどう考えてもクレイジーだったと思う(今は複数人でやっているそうだ)。でも、わたしの把握癖をうまく活用したなとも思う。全体を把握しないと動けないので、それがゴチャゴチャで複雑なほど、把握しようとして仕組みをつくろうとする。


わたしたちにとってバレンタイン当日は、長期戦がようやく終わる日だったので、無事に終わるととにかく安心してヘロヘロで帰宅した。そして、自分の恋人にバレンタインのチョコレートを用意することは100%の確率で忘れる。

10年以上バレンタインデーはチョコレートをあげる日ではなく、売る日だったからしかたないよねって話。

書いてるだけでまたソワソワしてきた。

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SAC about YODAN

コメント2件

温かいスープは作った人の優しさも伝わっていたと思います。
誰かを思って作ってくれたと思うと、どんなに仕事しんどくても救われる気がします!
わかるわかる。私もクリスマスがそれで、まだ続いてる。
一人に任せてるのもクレイジーだけど、スープを作ることを大きな仕事として出来る人はそういないよ。任せてしまうのもわかる気がする。
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