好きにしていいなら、縛ってください。

「どうしてクッキー屋さんなんですか」

会社を辞めると決めてからクッキー屋さんをはじめるまでの2年間のことを、すこしお話する機会があったので、思い返していた。

前に「シングルマザーのクッキー屋の話」でも書いたけれど、わたしは12年ほど某チョコレートショップで働いていて、お店屋さんという形態のきびしさや、お菓子の業界で個人でやる儲からなさをよく知っていたので、「お店屋さんはぜったいにやりたくない」と思っていた。

それに、クッキーも別にそんなに好きではない。

そう話すと、だいたいの人は怪訝な顔をする。わたしのことを「すきなことを小さくても自分でやっているひと」だと思っているからだ。

でも、よく考えてほしい。シングルマザーで、学歴もなく、実家もなく、お金もないのに、すきなことをやっている場合ではない。

優先順位を決めるときに、上記の条件のなかでは「働く時間が限られている」「生活するためのお金を稼ぐ」というおおきな縛りがある。このふたつは、残念ながら優先順位トップ2の座を決してゆずらない。しかたがないので、これを軸に仕事を決めるしかなかった。「やりたくないことはしない」というのは上位にあったけれど、「すきなことをする」という項目はランクインしていなかった。圏外だ。

そして、今思うとこれが「時間を(身体を)どれだけつかっても、お金にならなくてもいい」というまさに「すきなことを仕事にするトラップ」を回避できた理由でもあった。

もちろん、なにかを犠牲にしてもすきなことをしたい というかできるひとはしたらいいと思うし、その能力や環境も含めて、そうできることはすばらしいと思う。ただ、わたしはそうじゃなかった。

わたしがもっている知識が「お店屋さんを運営する方法」だけだったのと、お金をかけずに、技術も問わず、ちゃんと儲けが出るものが、たまたまクッキーだっただけだ。


じぶんがなにを持っていて、なにが足りないか。ないものをねだっても羨んでも仕方がないから、手持ちの材料でなにをつくるかだけ考えた。どうせそれしかないなら、そのなかで最良のものをつくろうということに、考える時間と労力をつかえた。

これは、逆境のつよさというか、持たざるもののつよさなのだと思う。

というのも、それから5年たった今、手段としてはじめたクッキー屋が落ちついた環境のなかで、好きにつかえる時間をどう使うかと考えたとき、そこには5年前のような絶対的な縛りがない。自由に、すきにしていいよと放り出されると、「さて、なにをしよう」とちょっと途方に暮れるのだ。もともとやりたいことがあれもこれもあるわけではないから、考える軸がないと決めるのがとてもむずかしい。

わたしは就職活動をしたことがないのだけど、もしかしたらこれが、就職活動をしているひとたちの悩みなのではないかと思う。選ぶ範囲がひろすぎて、自由にしていいよという縛りのなさで、選べないのではないかと。


そんな贅沢な悩みなのだとすれば、どうしたらいいかというと、逆算してじぶんで縛りをつくればいい。優先順位をあれもこれもと都合よくうごかさに、絶対にゆずらない2〜3個くらいを先に決めたらいい。(そのなかに「すきなことをする」が入っていても、もちろんいい)そして、それに沿って考えて、でてきた目の前のことを全力でやったらいい。

そこで全力でやらないと、やりきらないと、その次のことは見えてこないし、見せてくれる人もあらわれない。

全力でやっていると、縛っていたものがほどけたり緩んだりする。



こんなドSな方法を自分に課すのは、ひねくれているのかもしれないけど、そのひねくれた縄で、縛るよ。


この記事が気に入ったら、サポートをしてみませんか?気軽にクリエイターを支援できます。

note.user.nickname || note.user.urlname

\読んでくれてありがとうございます!/ みなさんのサポートはとても励みになっています。

\おれもスキだ!!!!/
90

SAC about YODAN

2つのマガジンに含まれています
コメントを投稿するには、 ログイン または 会員登録 をする必要があります。