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どんな仕事も「役割を知ること」がスタートライン

前職の洋菓子店を経営する会社では、お菓子を製造・販売すること以外のあらゆる仕事をしていたのだけど、スタッフの出入りが多く、毎年新卒の入社以外にも常にスタッフの採用面接をしていた。洋菓子業界は夏と冬の仕事量の差が激しく(クリスマス、バレンタイン、ホワイトデーなど需要が冬に集中している)、固定の人材だけでなく期間ごとに採用することも多かった。特にバレンタインデー期間に向けては、毎年300人は面接していた。

とにかく数をこなしていたら、面接をしたときの応対と、採用後の仕事ぶりや継続期間などの傾向がなんとなくわかってきた。優等生の返答をする人が仕事もできるわけではなかったり、若干不安が残るような人が成長しながら長く働いてくれることもある。


わたしが面接で必ずしていた質問がある。

それは、「小学生や中学生のとき、あなたのクラスでの役割や立ち位置はどんな感じでしたか?」というものだった。

この質問の意図は「どんな役割のひとを採用したいか」ということではなく、むしろ返答はなんでもいい。「自分を客観視できているか」ということが大事だった。ひとりきりでする仕事ではない場合、仕事に自分の成長だけを望む人は採用は難しい。スタッフが5人でも100人でも3000人でも、全員がそれぞれの役割をもって成り立っているのだとわかってほしいし、その中で自分がどんな役割で役に立つことができるかを想像してほしい。

だから「自分はここで勉強して、成長して、将来自分のお店を持ちたいです!」という意気込みをそのまま面接で話す人には、「勉強して成長したいのが目的なら、お金を払ってお教室に行った方がいいと思う。ここはお教室ではなくて会社なので、働いてお給料をもらうには、あなたが会社やチームに何ができるか、何ができるようになりたいかの話をきかせてください」と言っていた。(我ながら正論で斬るおそろしさがある)

仕事は、やる気がある人ほどいいわけではない。自分の意見がつよい人ほどいいわけではない。チーム(会社)には、仕事がはやい人だけが、コミュニケーション能力が高い人だけが、リーダーシップがある人だけが必要なわけではない。

若いときは、飛び抜けて能力が高い人を見て羨ましく思うこともあったけど、大人になるにつれ、何かがすごくできる人は何かがすごく欠けていたりすることも知った。たとえひとりでいろいろな能力をもっていても、時間はみんなに平等なので、全部ひとりでするには時間が足りない。つまり、どんな役割も必要だと思うし、誰かが持っているものは他の誰かが持っていないものだと思う。

仕事は、みんなができることをするのではなく、自分ができることをするものだ。


学生のころの役割や立ち位置というのは、損得関係なく、ほっておいたらそこにいたという自然に持っている能力だ。才能は「自分では持っていると気がつかないくらい、なんで他の人はできないんだろう?と疑問に思うほどに、自然にできること」だと思うので、こどものころを振り返るとそう見当違いではない気がしているし、無理をしてなりたい役割を演じるよりも、自然にできる役割の方がよく伸びるとも思うので、「こうしたいです!」ということより、「こうしてきました」の話を聞きたいという思いもあった。


かくいうわたしの役割はというと、こどものころから「お節介ででしゃばり」だった。自分にはまったく自信がないのに、「こうしたほうがいいよ」と言わずにいられない(し、本当にそうしたほうが幸せだと思っている)という性質だった。

その性質を生かして会社でどんなことをしていたかというと、

職人の仕事場で、特に新人さんなどは「できないからせめて時間をつかう」という考えに陥りがちだ。「職人の技術」と「効率」は相容れないから、いかに仕組みをつくるかがわたしの課題だった。「楽しても現状よりいい結果が得られる方法」をいつも考えていた。

仕事において「楽をすること=効率を上げること」はよくないとされることが多いけど、「ツラいことをしないと結果が出ない」という思いこみをなくすには「楽をすることで、もっといい結果が出る」を経験するしかない。

わたしは持ち前のお節介さで、職人さんのために仕組みを作ってムダな時間を短縮したり、仕事量を数値化して安心させてみたりした。また、わたし自身が時間がない(保育園のお迎えで毎日18時がリミット)ので、本気で効率を考えて実行して見せ、「短い時間でもできる」という事例をたくさんつくっていった。

役割を取り合わず、お互いに否定せず、お互いにいた方が助かるという立ち位置をつくれると、仕事はそうつらくないと思っている。というか、「仕事がつらい」は、仕事自体ではないことが多い(いちばん多いのは人間関係)。だから、なんか仕事がつらいなーと思うときは、同じ会社やチームのままで、一度「立ち位置を変えてみる」というのもいいかもしれない。


仕事を「役割や立ち位置を理解して、そこでできることだけをして、見える景色を共有する」を繰り返すこと だと考えると、ちょっと楽になるかもしれないよっていう話。


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