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シングルマザーのクッキー屋の話【ほぼ日とわたしたちのこと③】

ほぼ日で、あーちんの「くまお」の連載がはじまってから、月に2回くらいの頻度でほぼ日の事務所に直接おじゃまし、原稿を手渡ししていた。
あーちんがほぼ日のみんなに会いたいのと、作品を見てもらったときの反応を見たいという気持ちがあったので、それならばと会いに行っていた。

はじめて顔合わせをしたときこそ「この後はみんなで遊べる?」などと言っていたあーちん(当時9歳)だったけれど、何度も事務所に行く度に、いろんなことをよく見て吸収していた。

まず、みんなおしゃべりしたり遊んだりパソコンを見ているだけに見えるけど、仕事をしてるんだということ。
毎日見ているほぼ日のページを、毎日ここにいるみんなの手で作っているということ。

あーちんが見た「会社」が、チョコレート屋さん、クッキー屋さん、そしてほぼ日、というのはなんだか偏っているけれど、わたしがあーちんに知ってほしいのは「仕事はつらくてイヤなものじゃないよ」「おとなになったらとても楽しいよ」ということだったので、しめしめ、と思った。

そしてわたしはというと、あーちんがまだ9歳というのをいいことに、便乗していつも一緒について行っていたけれど、その立ち位置に戸惑ってもいた。
誰かの子供が来ることはあっただろうけれど、お母さんが一緒に来るという状況はあまりなかったんじゃないかと思うし、どうやってわたしの影を消そうかと考えていた。

それに対してあーちんは、どんどん自分を出していく。
谷川俊太郎さんと対談
をしたときも、緊張しながらもちゃんと向き合って話をしようとする姿勢やリラックスっぷりに本当に感心したし、
ほぼ日のみんなが楽しそうで羨ましいあまりに、糸井さんに直接「あーちん、ほぼ日で働きたいのだけど、どうしたら働けますか?」と聞いたことも、その勇気に驚いた。

ちなみにその質問に糸井さんは、子供だからと適当に流さずに「ここできみが何をするかだよ」とちゃんと答えてくれた。
そしてその帰り道、あーちんに「勇気があるねー。わたしは恥ずかしくて絶対に言えないから、すごいと思う」と褒めたら、「あーちんだって恥ずかしいけど、言わないともったいないから、頑張って言ったの」と話してくれた。

わたしは本当にあーちんを尊敬した。
そしてそれまで、別にわたしに用はないのだからと、どうやって自分を消すか考えていたれけど、それは恥ずかしいから言い訳しているだけで、「どうせ私なんて」という自意識の強さや思い上がりの方が恥ずかしいことだなとわかった。

自分を消すのではなくて、自分を活かして相手をたてるんだということに気がついた。

どんな立ち位置や役回りでも、はずかしいという自分本位の思いより、だれかによろこんでほしいという思いの方が大事だということを、ほぼ日を通してあーちんに教えてもらった。


長くなったので・・・初回はこちらです。


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