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なぜクッキーなのか ②【続・シングルマザーのクッキー屋の話】

「クッキー屋をはじめるに至るまでの2年間、どうやって考えたのですか?」という問いにふりかえり、②目標の明確化で見えたのは、以下の4つだった。

・生活費を稼ぐこと
・時間を自由につかえること
・あーちんといっしょに夏休みをとること
・あーちんに学校以外の居場所をつくること


③ Resource :資源の発見


目標を実現させるためにどうしたらいいか。方法を考える前に、まず「今の自分はなにができるか」を考えた。方法から入ると、自分にできないことで進んでしまったり(お金があればそれでも解決できるかもしれないけれど)、アイデアだけのもしも話で進んで、すぐに行動できないことだと意味がない。まずは持ちものチェックをした。

このとき、わたしは自分ひとりで棚卸し作業をしたのだけれど、自分にできることや得意なことは、案外自分よりもまわりの人のほうが知っていたりするので、聞いてみるのもいいと思う。

自分の持ちものをチェックするとき、プラスの持ち物とマイナスの持ち物がある。それをわけて書き出した。


【プラスの持ち物】

・お菓子業界での12年間の経験、人脈、傾向の知識があること。

どんなお店や商品が売れるのか、その先にどうなるのかを12年間見てきたことは大きな財産だった。瞬間風速で流行ることだけを目指さず、業界を長い目で落ちついて見ることができる。商品力だけに頼るのではなく、その他の大事なことを知った。また、商品の企画、パッケージの作成に関わることで、材料のみではなくあらゆる材料の知識も得た。

・年商5億円のお菓子屋さんの経営や運営の方法や、スタートからの流れをみてきたこと。

できあがった会社ではなくスタートから見てきたことで、大きくなるときの負荷や問題点をみて、それを乗り越える経験ができた。アナログの手作業からはじまった土台つくりには、規模が大きくなってからでは望んでも学べない大事なことがたくさん詰まっていた。

・過去数百人のスタッフの技術、働きかた、考え方の傾向を知っていること。

12年の間に関わったたくさんのスタッフを見ていて、この業界で働くひとたちの傾向や問題点を知ることができた。社内で「なにかあったらとりあえずサクちゃんに相談だ」という保健室のおばさん的な役割(問題解決の方法でもあり、責任回避するためのゴミ箱でもあった)を担っていたことは、当時はついでにやっていたことだったけれど、今思うと大きな貢献だったと思う。チームで働くときの問題あるあるや、性格による傾向と対策も勉強になった。

・せっかちとおせっかい/事務作業能力と把握能力

これは単純にもともとの性格で、せっかちなのでメールや事務作業を溜めることがストレスで、スピード勝負で片っ端からやっつける。社内の製造と販売以外の事務作業をひとりでやっていたので、誰かにたすけてもらえない状況と、保育園のお迎えという絶対退社時間の存在でだいぶ鍛えられた。

社内の問題の尻拭い役だったこともあり、全体を把握したいという欲が常にあった。とにかく知りたいわかりたい。問題がわかったら「こうしたらいいんじゃない?」と黙っていられないおせっかいさで、仕組みごと改善した。(口を出すなら最後まで面倒をみる精神で、たのまれてもいないのに仕事がふえる罠でもあった)この経験から、数十人で仕事をする際の全体を把握する方法やうまくまわる仕組みを身につけた。

・プライドのない公平で肥えた舌

「いい商品とはなんだ」と考えるときに、わたしは職人ではないので、玄人うけのいい(わかる人にだけわかればいい)ものだけがいいのではなく、大手メーカーの機械製造のもの、コンビニのもの、素人の趣味のもの、など多方向に偏見なくみることができた。それと同時に、最高の材料に恵まれ、試作や試食や検品などを繰り返した経験から、味の差がわかるようになった。「売れるからといって意に反するものをつくりたくない」という職人の気持ちと「職人のこだわりよりお客さんの望むものをつくってほしい」という消費者の気持ちをバランス良く両方もつことができるようになった。


【マイナスの持ち物】

・働く時間がみじかい

シングルマザーなので、時間を犠牲にして仕事をすることができない。時間を自由につかうことを優先すると決めたが、持ち時間が限られている。

・お菓子をつくれない

長くお菓子業界にいるけれど、自分ではお菓子がつくれない(専門学校で基礎は学んだ)。

・他業種とのつながりがない

会社員だったのとせまい業界なのとで、個人的に人脈を拡げて仕事に生かすということは望まれてなかった(むしろ禁止だったように思う)。お菓子業界以外の情報は、ほとんどなし。

・その会社以外での経験がなく、社会性に欠ける

自分のしていた仕事は当時の会社には役に立ったけれど、その自分勝手でオリジナルすぎる仕事の経験では、他の会社ではいっさい使いものにならない と思い込んでいた。なので「しかたない、独立しかないか」と選択肢は独立のみ(他社への転職を念頭にいれなかった)になった。(これは良くも悪くも思い込みだった)


・知名度がない

裏方の仕事をしていたので、世間への知名度はゼロ。


・お金がない

これは単純にない。実家の資産もないし(それどころか家もない)、多額の蓄えもない。


これらの持っているものと持っていないものを組み合わせて、いったいじぶんに何ができるのかを、ようやく考えはじめる。


つづく

※記事は全文無料ですが、投げ銭方式にしてみました。

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