sakiyama

鹿児島で総合診療の輪を広げようと模索中です。2019年度より九州大学大学院医学系学府医…

sakiyama

鹿児島で総合診療の輪を広げようと模索中です。2019年度より九州大学大学院医学系学府医療経営・管理学専攻へ進学、総合診療におけるキャリアについて考えています。これまでは病院が主な勤務でしたが、最近は外来・在宅にシフトしており、新たな学びをいただいています。

最近の記事

学生を対象にした訪問診療の実習

 鹿児島大学では、「地域医療実習」として様々なへき地・離島での実習を行っています。ですが、covid-19の流行に伴い、へき地・離島への実習ができなくなっています。この地域医療実習の一環として、鹿児島市内の在宅診療実習も2日間ですが行われており、こちらがこの3月から再開されることとなりました。  改めて、在宅医療の教育に携わるに向けて、勉強しなおしてみました。 一般的ニーズ 大学からは「地域医療実習」としてのしっかりとした目標・ゴールが示されており、例えば ▶︎地域医療に関

    • キャリアと計画的偶発性理論

      キャリアについて話すこと これまで何度か、医学生さんが主催の勉強会に講師として呼んでいただいています。「総合内科セミナー」という医療に関する内容で、学生さんが関心の高いものをテーマとして扱っているのですが、私はキャリアというテーマでお話しさせてもらってます。  振り返れば、鹿児島に戻ってきて最初に勤務した医療機関で、広い視野で自分のこれからを考えるきっかけにしてもらおうと思い、初期研修の先生たちを対象にお話ししたのが最初でした。その後、総合診療専門研修の専攻医の先生や、異動

      • プライマリ・ケアの、健康やヘルスケアへの寄与(7)

         今回は、プライマリ・ケアはケアの質へどう貢献しているかの考察です。  古くは、専門医とジェネラリストそれぞれの診療を、ケアの質評価の軸としてガイドラインの順守率で評価されていました。  呼吸器内科医とジェネラリストの比較をした文献では、専門科の診療の方が発作で救急受診・入院する頻度や死亡が少なく、専門科に診てもらうべき喘息患者をいかに選別するか、全体のバランスが大事であると指摘しています。マネジドケアのような「まずかかりつけに」というゲートキープ機能が患者側の責任を強め、

        • プライマリ・ケアの、健康やヘルスケアへの寄与(6)

           プライマリ・ケアまとめシリーズ、いよいよ佳境です。健康への利点として、6つが挙げられています。 1. 必要なサービスへのアクセスの拡大 2. ケアの質の向上 3. 予防へのより大きな焦点 4. 健康問題の早期管理 5. 主なプライマリ・ケア提供特性の累積的影響 6. 不要で潜在的に有害な専門家によるケアを減らす上でのプライマリ・ケアの役割  今回は1についてまとめます。 1. プライマリ・ケアは、比較的恵まれない人口グループの  医療サービスへのアクセスを拡大する  プラ

        学生を対象にした訪問診療の実習

          不確実性への対応

           先日、鹿児島での総合診療合同勉強会をオンラインで開催しました。2年前から、家庭医療・総合診療専門研修の専攻医の先生方やその指導にあたる先生方を主な対象とし、ポートフォリオ作成支援や発表・共有の場として開催しているものです。  今回は藤沼先生にご講演とポートフォリオ検討への参加をお願いしたところ、快く受けていただきました。定期外来診療のポイントを分かりやすく提示いただいたり、ポートフォリオ事例への深みのあるコメントをいただいたりと、非常に勉強になりました。 不確実性の高い事

          不確実性への対応

          プライマリ・ケアの、健康やヘルスケアシステムへの寄与(5)

           プライマリ・ケアのまとめシリーズ、今回で5回目です。  今回はコストについてのまとめです。  プライマリ・ケア医の存在は、健康状態の改善だけでなく、医療サービスにかかるコストの低減とも関連しています。プライマリ・ケア医師と人口の比率が高い地域では、より良い予防ケアや入院率の低下によって、医療費の低減につなげることができます。 プライマリ・ケア医の存在は医療費を削減する 以前もご紹介しましたが、普段の受診先として、専門医ではなくプライマリ・ケア医がいると回答した米国の成人

          プライマリ・ケアの、健康やヘルスケアシステムへの寄与(5)

          プライマリ・ケアの、健康やヘルスケアシステムへの寄与(4)

           プライマリ・ケアの様々な効果についてまとめてきています。  今回は、プライマリ・ケアと健康アウトカムの「格差」についてです。「健康の社会的決定要因Social Determinant of Health」などでも格差が与える影響は強く示されています。  書籍では、イチロー・カワチ先生の本がとても分かりやすいです。 国ごとの格差 改めて述べるまでもありませんが、世界を見渡しても健康アウトカムには格差が存在しています。具体的には、国連がMillennium Developm

          プライマリ・ケアの、健康やヘルスケアシステムへの寄与(4)

          ハートネットTV〜コロナの向こう側で〜を見て

           COVID-19に関して、医師という立場の私が何か発言することは、状況が刻々と変わる中ではなかなか難しさを感じ、これまで控えてきたところがあります。むしろ医師という立場だからこそ、発言しなければならないこともあると思うのですが、うまく表現できる自信がなかった(今もないです)というのが正直なところです。  そんな中で、ハートネットTVというNHKの番組で、熊谷晋一郎先生が出てらっしゃるということで録画して拝見しました。熊谷晋一郎先生のことは、書籍『つながりの作法 同じでもなく

          ハートネットTV〜コロナの向こう側で〜を見て

          プライマリ・ケアの、健康やヘルスケアシステムへの寄与(3)

           引き続き、『Contribution of Primary Care to Health Systems and Health』の内容をまとめていきます。今回は、プライマリ・ケア特性の達成度を、国ごとの比較したものについてです。 プライマリ・ケアの国際比較 まずは、1980年代・1990年代という2つのデータを使用いた研究が、プライマリ・ケアが強力である国ほどより良い健康アウトカムと関連していることを示しています。また、強力なプライマリケア実践の確立には、政策が重要である

          プライマリ・ケアの、健康やヘルスケアシステムへの寄与(3)

          救急外来でプライマリ・ケア

           ここ最近は、自身の大学院の学びの中心であるプライマリ・ケアに関することを徒然に書いています。プライマリ・ケアの定義やキーワードは、以前のブログでもご紹介しました。  プライマリ・ケアと救急外来、というと、シンプルに「受診のしやすさ」である近接性を考えてしまいますが、継続性や地域志向性を踏まえたケアの提供もできるのではないかと思わせる、救急外来での一コマを紹介したブログを拝見しました。  夜間救急外来の当直をしていると、このような社会的問題を抱えた患者さんと出会うことは少

          救急外来でプライマリ・ケア

          プライマリ・ケアの、健康やヘルスケアシステムへの寄与(2)

           前回より、『Contribution of Primary Care to Health Systems and Health』の内容をまとめています。(1)では、プライマリ・ケア医の存在と健康アウトカムとの関連についての研究を紹介しました。今回は、プライマリ・ケアに対する患者側の認識や提供される場、プライマリ・ケアの各特性などが健康アウトカムとどう関連しているかについてです。 患者と、プライマリ・ケアの提供者や提供の場との関係  プライマリ・ケア医の存在が多いからといっ

          プライマリ・ケアの、健康やヘルスケアシステムへの寄与(2)

          プライマリ・ケアの、健康やヘルスケアシステムへの寄与(1)

           医学的に最先端の研究がいかに人々の健康や疾病に寄与するか、ということは注目されやすいですが、プライマリ・ケアもヘルスケアシステムにおいて重要であると認識されるようになり、その根拠が蓄積されています。  少し古い米国のデータを中心とした文献にはなりますが、プライマリ・ケアに関する根拠として非常にまとまっているので、ご紹介したいと思います。  そもそもプライマリ・ケアという用語は、1920年にイギリスで発表されたDawson Reportまで遡ると考えられています。Bertr

          プライマリ・ケアの、健康やヘルスケアシステムへの寄与(1)

          プライマリ・ケアの質

           中間発表や講義に関することなど、九州大学大学院でどのような学びがなされているかをブログでまとめてきましたが、自分が何をしているか、少しまとめていこうと思います。中間発表のあと、ほどなく『第58回日本医療・病院管理学会学術総会』の一般演題に自分の成果物を発表するための準備もあり、やっと落ち着いたというのもあります。  大学院に入って私が取り組んできたこととして、外来におけるプライマリ・ケアの質を測定し、いかに質改善につなげるか、ということをやってきました。それをやる中での学

          プライマリ・ケアの質

          医療マーケティング論④

          地域包括ケアシステム時代の病院の役割  最後の講義は、地域包括ケアシステムを目指す日本で、病院はどうすべきか、という視点で学びました。   そもそも地域包括ケアシステムとは、と考えたときに、2008年当初は「要介護者が介護施設に入所して集団的ケアを受けるのではなく、本人の住まいに外部から医療や介護サービスを定期的に提供する仕組み」と定義されていました。介護保険によるサービス(共助)はもちろん、地域のインフォーマルな活動によるサポート(互助)も含めて、それらが有機的に連動すべき

          医療マーケティング論④

          医療マーケティング論③

          引き続き、医療マーケティング論のまとめです。 高齢者の栄養ケア・マネジメント  1970年代、米国において病院に入院している患者さんにおける栄養失調の存在が社会問題となって以降、栄養の重要性に注目が集まるようになりました。本邦においては、低栄養状態そのものを全国的に調査したものはないものの、高齢者において栄養状態が不良となりやすいことや、低栄養が予後やADLに影響することがわかっています。  地域包括ケアを考えるにあたり、高齢者における栄養ケアのマネジメントの重要性がこの講

          医療マーケティング論③

          医療マーケティング論②

           前回に引き続き、医療マーケティング論のまとめをしていきます。 バランスト・スコアカード  バランスト・スコアカード(BSC:Balanced Scorecard)とは、米国でKaplanとNortonの両氏により開発され、経営のフレームワークとしてに用いられるようになっています。ざっくりしたイメージが以下になります。  組織における様々な視点(表で言うと「財務」や「顧客」など)を縦軸、それぞれに目標やそれを達成するための指標、その具体策を横軸にとって整理し、明示したもの

          医療マーケティング論②