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介護保険制度について

 今回は介護保険制度についてです。主治医意見書の記載や、ケアカンファレンスへの参加などでなんとなくの知識はあったつもりですが、きちんと学ぶと知らないことが多いことに気がつきました。

 例えば介護「保険」となっていますが、財政の半分は公費(国・都道府県・市町村でそれぞれ全体の25%・12.5%・12.5%)なので厳密には保険ではない、保険料割合も第1号被保険者と第2号被保険者の人口動態で変化する、など実際の仕組みを学ぶことは大事だなと改めて実感しましたし、当たり前ですが時代とともに制度も変化していてしっかりキャッチアップしていく必要性を感じます。以前は1割負担で統一されていましたが、段階的に自己負担は引き上げられ、2018年8月からは所得によっては3割負担となる方もいらっしゃいますね。

 Lancetという医学雑誌に、日本の医療に関する文献をまとめた特集号があります。その中には、介護保険政策についてのレビューがあります。ここでは、国民生活基礎調査のデータをもとに、介護保険制度導入前後で効果を見ている研究がなされています。

 気になったポイントとして、

・恒例の受給者の主観的健康感についても、日常活動遂行能力についても、総合的に有意にプラスの影響は出ていない。現場レベル維持。
・介護保険導入前に比べ、2004年には5%減少→全ての所得層でほぼ同様、経済的メリットは明らか。
・しかし家族介護者の負担感に対する影響ははっきりせず

 つまり、介護における経済的負担の軽減にはなっているものの、「介護予防」という目的は、果たせていないのかもしれません。ただ、「公的年金と雇用機会の拡大を通じて高齢者の所得を維持」という点は、保険料として財源確保という観点からは大事だろうと思いました。

 また、今後の展望として

・家族介護者向けのカウンセリングサービスの開発、地域の様々な団体との連携
・介護セクターと保険医療セクターに連携(個人レベル〜施設レベル〜政策レベル)

といったことが指摘されています。特に後者について、病院で退院調整を始めたときに、患者さんが普段(入院前)関わっている方々と、病院側の人間とのやりとりが、全然ないのとスムーズにコミュニケーションとれているかどうかで、ケアの質だけでなくお互いの満足度にも影響している印象を受けます(緩和ケアの領域での研究ですが、『地域対象の緩和ケアプログラムによる医療福祉従事者の自覚する変化』はその点を示唆しています)。

 総合診療・家庭医療のコンピテンシーには「連携」も含まれていますが、介護保険を改めて勉強することで、自分に何ができるのか深く考え直すきっかけになりました。

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