見出し画像

灯台のような

今日は退院の日。

そろそろ帰る時間と思っていたら
急に娘の容体が変わった。

「救急車で総合病院へ。」

えっ?どういうこと?


「血液の値が…」

言ってる意味がよくわからない。


娘は1週間前に産まれたばかり。
今日退院して帰るはずだったのに。

そのまま入院、手術。
退院できたのは、一歳過ぎていただろうか。



マックのポテトが大好きで
いたずら好きな娘は
人よりゆっくり育って
その後も入退院を繰り返した。

娘は誰に似たのか
指が長く、爪がとても綺麗だった。

「誰に似たんだろうね。」

幼い体には似つかわしいほどの
艶かしい指先。
彼女のチャームポイントだった。



娘には姉がいた。
妹が入院すると
姉は病室に入れない。

いつも待合室で待っているからと
週末、弟夫婦が預かってくれた。

金曜ロードショーでジブリを観たり
ラジコンのヘリコプターを室内で飛ばして
遊んでくれたそう。

上手く手のひらに着陸した時は
みんなで大喜びしたのって言ってた。



私は毎日病院に通った。
義母も毎日病院に通った。

私たちはよく喧嘩をしていたけれど
娘の病気を前に
いがみあいはしなくなった。

実家で
仏様にお参りする時は
いつも娘の無事を祈った。



そんな中
義妹のお腹に命が宿った。

けれど、新しい命を祝う
そんな余裕はみんなにはなかった。

娘の容体は一進一退だった。

弟夫婦はその後も変わらず
姉を預かって一緒に遊んでくれた。



ある日
弟夫婦が私たちに言った。

「お腹の子は、染色体に
異常があるかもしれないらしい。」

義母は
「どうして、うちばっかり・・・」
と言って泣いた。



弟夫婦は簡単な検査だけで
精密には調べなかった。

調べて何かわかっても
堕ろす気はないから。

堕ろす子だって
命を宿しているのだからと。

染色体の異常がひどければ
流産や死産になる。

無事に産まれるかは
お腹の子の生命力次第。



大きくなるお腹と
弱っていく娘の身体。

お腹の子には
あかりと名付けられた。

あかりは毎日
動いては生きていることを示し
大きくなるお腹で成長を主張した。



そんなある日。
娘がもう一度
大きな手術をすることになった。

病院の透明なドアの向こうで
無邪気に笑う娘。

ようやく歩けるようになり
扉の向こうで
笑いながら佇む娘。

それが娘の元気な最後の姿となった。



娘が空に旅立ち
程なく姪が産まれた。

姪は異常も見られず
スクスクと育った。

あれから10年。
姪の手を見て、みんなで話す。

「パパの手に似てないね。ママとも違う。」

長い指先。きれいな爪の形。



「ゆきの手にそっくりだね。」
義弟が話す。


そう。
姪の指先は
娘の指先にそっくりなのだった。



結希。ゆき。
みんなの希う気持ちを結んで
生きていてほしかったけど…

あなたがいてくれたおかげで
私たち仲良く暮らせるようになったんだよ。



月命日は義母と。
お彼岸はみんなでお墓参りして
あなたのことを語り合う。

私たちを照らす
灯りのような存在だったゆき。



結希。

産まれてきてくれて
私たちのところに来てくれて
本当にありがとう。

あなたのこと忘れないよ。
大好きだからね。

       (1,200字)


 *   *   *


冬ピリカグランプリに参加します。


参加したいと思いながら
ずっと考えていたら
思いついたことがあったので
書いてみました。

初めから1200字に限りなく近かったので
推敲を繰り返し
字数ピッタリ1,200字にしてみました。

スペースも一字カウントだったら
アウトなのですが
noteにテキストを打ち込むと出る字数は
1,200字と書いてあるので
信じて出してみます。


このお話で何かのあかりを感じてもらえるなら
こんなに嬉しいことはありません。

小説二作目。
がんばりました!



小説を書く勇気をくれる
ピリカグランプリ。

みなさんも書いてみませんか?





この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?