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バイクツーリング 〜静岡 富士山〜 その19


直線が続く。
車が一気に増えてきた。

車が増えると
車線を左に移す。

右車線で詰まると
抜け出せなくなるからだ。


左車線を車について走る。

交通集中でいつも混む
綾瀬バス停に向かって
混み方がひどくなる。


横浜町田までこれだと
45分は無理かもしれない。


15分縮めて着くと決めたけど
守れないかもしれない。

それはそれで仕方ない。


目の前のことに集中する。


車が混むと
車線変更する車が増える。

巻き込まれると危ないので
周りに意識を集中する。


海老名を過ぎると4車線になる。

一番左の車線に移って
あまりに混んだところは
路肩とのギリギリをすり抜ける。


昔は路肩走行を
大っぴらにしていた。

今は
路肩を走るバイクはいない。

車線の間をすり抜けるのが
一般的みたいだ。

わたしは怖い。
両側とも動いている車だから。

お互い寄ってきたら
あっという間に狭くなる。


でも
路肩走行で捕まっても困る。

そこで
左ギリギリを走るという
苦肉の策を考えたわけだ。


大和トンネルに向かって
高速は上る。

上り坂でアクセルを開けないと
車速は下がる。

そのことに気づかない車が多い。

そのために
渋滞が起きる。

上り坂はアクセル踏まないと。
自分のスピードメーター見ないと。

あなたの車が
渋滞の引き金になるかもしれないのに。


混んだ高速を見ると
いつも思う。

そう思いながら
ようやく大和トンネルを抜けた。



ここからは緩い下り坂。

横浜町田インターに向けて
緩やかに下っていく。

車も加速するので
流れも一気にスムーズになる。


もうすぐだ。


もう一度、真ん中から右車線に出て
抜ける車は抜いて

インター出口の看板を見て
また左車線に戻る。


横浜町田インター出口は
二車線で出口に向かうので

左車線を走っていれば
一つ空いた側道が現れる。


いつも
そうやって出口に向かうので

トロトロ左で流れる
出口用側道の車を横目に見ながら

本線と同じスピードで
左車線を走っていた。



側道だ。


空いている側道が見えた瞬間

一番左の出口用側道から
トラックが

わたしが入ろうとしている側道に
車線変更した。


ぶつかる!!


速度は100km/hぐらい。
左のトロトロ走っている側道とは
あまりにも速度差があった。


離れて見えた
トラックが一気に近づく。


フルブレーキをかけながら

パニックブレーキで
転ばないように

ABSが効いて
トラックに突っ込まないように

握りすぎないようにしながら
ブレーキをかける。

ABS= アンチロック・ブレーキシステム(Anti-lock Breake System)の略称で、急ブレーキをかけた時などにタイヤがロック(回転が止まること)するのを防ぐこと


車線を変えようとしていたので
少し車体が傾いていたらしく

なるべく車体は立てて
ブレーキをかけたけど

リアタイヤが少し
右に流れた。


流れている車5台分ほどの距離で
100km/hから50km/hくらいまで落とす。

その間、2秒。


ああ。よかった。


車1台分空けて
トラックにぶつからずに
減速が間に合う。


ABSも効かず
タイヤロックもしなかった。

ABSが効くと
タイヤがロックしないように
ブレーキが緩まってしまうので

ブレーキが効かなくなる。
予定している距離で止まれない。

それが一番怖かったけど
ABSが効かないくらいで
ブレーキをかけられたみたい。


サーキットでは
コーナー進入でABSが効いて
オーバーランする話を聞くので

心の底からホッとした。


レースをやっていてよかった。


心からそう思った。



トラックに怒りが込み上げながら
よくあることかもしれないと

心臓はドキドキしていたが
状況を頭に刻み込んだ。


左に大きくカーブしながら
インター出口に向かう。

ドキドキが止まらず
路肩に停まった。


心を落ち着かせようと
暗くなった空を見上げる。

月が見えた。
心がスッと静まった。


月の写真を撮る。

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ふと思い出して時計を見る。

5:51。
予定通りだ。


あれだけの渋滞を挟みながら
時間通り戻って来られた。

自分に満足する。


バイクをスタートさせる。

料金所で
時計はちょうど5:52になった。



インターを出ると
うちまではあと少しだ。


夕飯、遅れちゃうな。


家には
「富士山まで走りに行ってくる」
と言ったきり、連絡はしていない。


何時に帰ると思っているかな?


気になりながらも
さっきのトラックのこともあり
そんなに飛ばして帰れない。


帰るまでがツーリングだから。


周りを気をつけながら走る。
我が家に向かって。



無事、帰宅。

ここでも
月が見守ってくれているようだった。

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約340km。

一日中走った
わたしのツーリングが終わる。


ピースが尻尾をふって
迎えてくれた。

ヘルメットを玄関に置いて
飛びつくピースの頭を撫でる。


帰ってきたよ。ピース。


ひとしきり
ピースとたわむれて

夕飯を待つ家族がいる
家の玄関を開けた。


ただいま!


「おかえり!」と娘の声。



無事に帰ってきた。

富士山、どうもありがとう。
また走りに行くね。



応援し、見守ってくれたみなさん
ありがとうございました!








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