AWESOME Choices Issue no.02 常識を破壊し、未来の工学教育を実践!奈良女子大学工学部が切り拓く新たな教育モデル
はじめに
こんにちは。挑戦するリケジョが創る未来の常識「AWESOME」です。
https://awesome-stemwomen.jimdosite.com/
AWESOMEは2030年までに女性の理系進学率を倍増させることを目標に掲げ、2023年4月よりスタートし、現在学生から社会人まで、さまざまな分野で活躍する理系女性(リケジョ)が集結しています。
私たちの信念は、以下の4つにフォーカスし、課題や悩みを価値に変えるために自分たちの手で新しい常識を創っていくことです。
AWESOME Choicesは、理系出身者の女性たちの可能性と魅力をお届けしていきます。理系の知識やスキルを活かしながら、様々な分野で活躍する彼女たちのこれまでの「選択(Choices)」から見えてきたストーリーを通して、理系を選ぶ新しい常識を広め、多様なキャリアが実現できる未来を提案していきます。
Issue no.02 常識を破壊し、未来の工学教育を実践!奈良女子大学工学部が切り拓く新たな教育モデル
第二回目にして特別編!
奈良女子大学で認知神経科学を専門とされている中田大貴教授に、2022年に全国女子大初の工学部誕生の裏側やこれからの未来を担う子供や若者たちを育むためのアドバイスに至るまで、たくさんのお話を伺いました。
中田大貴先生
奈良女子大学
女子大初の工学部ということで、注目されていると思います。私自身の理系キャリアを通しての経験や、時代の流れからもニーズに合致していると感じています。これまでの工学部とは違う形で開設された経緯や奈良女子大学工学部ならではの強みの部分について教えてください
中田先生:奈良女子大学に工学部を開設するにあたり、まず注目したのは彼女たちが社会に出た時にどんな力を求められているかという部分でした。
下のグラフからもわかるように、企業が彼女たちに求めているものは高い専門的知識よりも「主体性」でした。
自ら課題を見つけ、社会のニーズにも目を向けた上で、自分が何をしたいかを追求することこそがこれからの大学での学びに求められているものだと感じています。
この「主体性」を育むために、一般的な工学部に設置されている学科という枠組みを取り払い、様々な工学の専門分野を横断的に自らカスタマイズして学ぶことができるようなカリキュラム構成にしました。
また、同じ学年の学生であっても、既に持っているスキルや知識は様々です。プログラミングを例にして見た場合、ある学生は既に基礎的な知識は持っている一方で、別の学生はほとんど持っていない。そんな学生たちに、1年生だからまた基礎の授業を受けてもらうということはナンセンスです。そのため、学科という枠組みだけでなく、学年という枠組みも取り払い、在学中にどの科目を受講するか自由に選択できるようにしています。1学年45人いますが、45通りのカリキュラムがあるという感じです。
またもう一つ積極的に取り入れている部分が、企業とのコラボレーションです。企業がこれから社会に出て行く大学生に主体性を求めるのであれば、企業側にも主体的に学生たちの学びに関わってほしい。その思いに賛同いただいた企業の方と共に、カリキュラムの設計から講義の提供、企業の開発センターを活用した実習の実施などに関わっていただき、共に学生たちを育てていく仕組みを取り入れている部分は他にはあまりないのではないでしょうか。
非常に魅力的な取り組みですね。多くの新たな取り組みの中で、多くの手ごたえを得られていると感じましたが、一方でなにか難しさを感じている部分などはあるのでしょうか
中田先生:主体性を重視したカリキュラムではありますが、まだ学生自身が主体的に学ぶという部分に慣れていないという部分でしょうか。これまでの中学・高校での教育の仕組みが「いかに速く、正しく問題を解くか」という部分に重きを置いてきたこともあり、与えられた課題に対しては正解を出せるものの、自ら課題を見つけて取り組むという部分には慣れていません。そんな状態で、いきなり大学に来て「さぁ、自分で選んでください」と言われてもどうしても躊躇してしまう。無理もありません。 この部分についても今年度より、新たな取り組みを早速導入し、対策をしていく予定です。
奈良女子大学工学部の1つの特徴として「文理融合」を大きく掲げている部分かと思います。あえて文理融合と謳った部分についてもう少し教えてください。
中田先生:奈良には多くの古代寺院がありますが、その寺院の柱を見ると、時代によって柱の太さが違います。その背景には、構造的な要素以外にその時々の歴史的背景が深く影響しています。この部分の理解がないと本当の意味での工学の理解とは言えないのではないでしょうか。この要素は従来の工学部での学びだけでは得ることは難しいと感じており、リベラルアーツの部分が必要になってきます。もはや、文系理系という枠組みはナンセンスであり、文理融合は必然です。そして、これからの未来を担っていく学生たちの環境は私たちが過ごしてきたものとは全く異なっており、彼女たちの感性や可能性を最大化していくための仕組みが必要になって来る。そのために、こちら側が変わっていく必要があると感じています。 現状、文系から工学部に入学してくれた学生は45名中1名ではありますが、多くの文系の方にも工学部という進路を選択してほしいと思っています。 現実問題として、入試制度という難しい部分があるのは事実ですが、AO入試なども活用しながら、文系の方たちも積極的に取り込んでいきたいと思っています。
最後に、これから自分の進路を選択していく女子中高校生に向けて一言お願いします
中田先生:「機械工学について学びたい」「電気についての学びを深めたい」など、自分の学びたい専門分野が定まっている方は、専門学科を設けている工学部を選択できると思いますが、「モノ作りに興味はあるけれども、どの専門分野を深めればいいかがまだわからない」という方も多いかと思います。ぜひ、そんな方たちにこそ、奈良女子大学工学部を選択肢の1つとして考えてほしいです。
先にも述べたように、自分次第で専門分野を突き詰める学び方もできますし、さまざまな専門分野を横断的に学ぶこともできます。「モノ作りはしたいけど専門分野が定まらないから、それを見つけるために奈良女子大学の工学部を選択する」と1人でも多くの女の子に門をたたいてほしいと思っています。 今年度より、企業の協力を得て女性のエンジニア養成に特化したワークショップ企画を女子中高生を対象に実施します。本企画を通して、モノづくりの楽しさや工学の面白さに触れてほしいと思っています。
最後に
お話を通して、理系女子に求められている要素を複合的に加味した上で、奈良女子大学工学部が誕生し、成長を続けていることがわかりました。このような思いを持つ教育の場が1つでも増え、1人でも多くの女子中高校生が理系・工学分野に興味を持ち、キャリアとして選んでほしいと感じました。中田先生を始め、奈良女子大学工学部の更なる活躍と発展を応援しております。
あとがき
いかがでしたか?
AWESOMEでは、理系で培ってきた強みを活かして、さまざまな業種や職種で活躍する女性の「選択(Choices)」から見えてきたストーリーを紹介していきます。
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