親になるとは
母親というものは子供を支配するのか。
私の中にはそんなテーマがある、自分が娘という立場だった時期も有ったし、自分が母親という立場に為ってもそれは有る。
子供の立場だった時には、母に制限されているのがとても嫌だった。
母にそういう話をするときっとこう言うだろう。
「私は何にも制限して居ない、あんたが勝手に選んだことや。」
そうなのだ、自分で選んだと言えばそれに反論はない、だけど自分の方向を指し示していたのが母だと云うのは事実になる。
親というものは、知らず知らずのうちに、子供を自分の型に嵌めたいと思う。
自分の思う通りになる人間は、御しやすく可愛いと思えるのかもしれない、反対に思った形で無いと、場合によっては憎く思う可能性もある。
親にとって子供は自分の作品だったりするからね。
人に依っては、反抗期やら、抵抗するやら、そんな人も居るのだろう、でもそれって確実に親に愛されて居ると言う自信が有るから出来る事なのだ。
彼女の型に嵌って居ないとここに居られないかも知れない、そう考えると自らを型に入れ込むんじゃ無いかと感じている。
型に粘土を押し込んで成形する焼き物みたいにね、解かり難かったらすいません。
親って子供から見たら、世界の創造主みたいな所が在って、大人に近づくとそうじゃ無いという認識は出来ても、子供の内に形作られたのを壊したりできない。
そこ迄形作られてきた物を、一度力業で壊して、又自分で形を作るのは手間が掛かる。
だから、囲って有る範囲からは逸脱したりしない、それさえも心地よくなってくるのかもしれ何のだ。
実は支配だと考えてない支配が一番質が悪い。
その考えが正しいかどうかは解らないが、少なくとも私はそう考えている。
20歳で短大を出て、その年に紹介して貰った人と結婚する事に成った時に、「もうあんたは他所の子やで帰ってきたらあかんのやで。」と言われた。
この人にとって私は、アクセサリーの一つくらいの価値しか無かったんだな、その時に感じたのはそんな気持ちだった。
若しかすると、アクセサリーでさえ無かったかも知れない、偶々自分の所に来た陶器の人形位だったのかも。
結婚してから、私は直ぐに母親になった、今度は私が支配者に成ってしまう。
そう考えると怖かった、嫌でも自分が影響を与えてしまうのだ、子供にとっては最初の世界は私との生活なのだから。
その時期には本を読んで、どんな風に子供に接したらいいのかを模索していた。
放って置いたら、きっと私は母になると考えていたからね。
こう書くと、私が凄い良い母親だった様に感じるかもしれない、ある意味いい所は在っただろうけど、実際には駄目な部分が多かったと思っている。
子育てをしている時期に近所の奥さんとよく話していた。(今ならママ友というのかも知れない)
その時に「上の子の時は失敗したけど、下の子の時は良かった。」という人が居て、それには物凄く違和感が在った。
子育てに失敗なんて無い、あるのは結果だけで、それは子供が決める事なのだ。
その時に自分の悩みが晴れた気がした、ああそうか、私は型に嵌められた自分を憂いていたけど、それは私が悪かったんではない、私が批判すれば良かった話なのだと。
子供に失敗なんて無い、失敗は自分の対応が失敗したので有って、それ以上でも以下でもない。
子供の時に萩尾望都先生の漫画を読んでいた。
萩尾望都先生の漫画にはよく親子関係が描かれていて、イグアナの娘を読んだ時など、そうそう母には私がイグアナに見えてたんだとか考えて、こんな表現がしたいなと憧れを抱いたりした。
その萩尾望都先生がフランスのルモンド紙のインタビューで、家族の関係で悩んできたと話していた。
親が厳しい方たちで、漫画なんてくだらないと認めてくれなかったようなのだ。
彼女は親の抑圧からの解放をずっと考えていて、それが作品に反映されていると語っている。
その親も萩尾望都先生が61歳、親が84歳の時に理解して謝ってくれたと話している。
「『ゲゲゲの女房』を観ていたら、水木しげるさんが一所懸命漫画を描いていた。それを見て、お前があんな風に一所懸命描いていたことがやっとわかったよ。すみませんでした」
羨ましいな~、切実にそう考えている。
我が母は今年の初めに久しぶりに会った時に、私が今迄の言葉を否定して貰いたくて聞いてみた。
「あんたは他所に行った子やで、他所の子ってのは無いやろ。」
それに対して、母の答えはこうだった。
「あんたは他所に行った子やでよその子、○○○ちゃん(弟の嫁)は家に来てくれた子やで、うちの子。」
こんな風な人の方が嫁姑問題は上手くいくのかも知れないが、我が母は自分の大事に想う人間の範囲を決めているのかも知れない。
私は出来の悪い母親だが、一緒に住んでくれている子供も大事だが、他の3人の子供も大事だ。
何故、好きになる事や愛する事に、範囲を決めたいのか解らない。
ただ、全ての人に考えが有って、皆違うから好いのであれば、どんな考えも受け入れなければなと、この頃は考えている。
親を見つめるのも、親になるのも簡単では無いのだ。
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