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【小説】夢

「夢を見なくなった。」

修一が言う。

「ぐっすり寝てるのよ。」

「いい事じゃないの。」

答えると

「ぐっすり寝てるわけではないんだ。」

「じゃあ、寝てないの?」

「寝てはいる。」

「夢見ることが無くなったんだ。」

夢を見ない人は一杯いる、それが問題なの、

言おうとして、その表情に気付いた。

真剣だった。

「ごめんなさい。夢が大事だったのね。」

「君が謝る事じゃない。

自分が夢でバランスを取っていただけなんだ。」

「バランスって?」

「嫌な事があっても夢で誰かが言ってくれるんだ、

大丈夫だよって、それは温かくて優しい。」

「お母さんのように?」

「うん、母のように、恋人のように。」

「だったら、私じゃダメ。」

「ありがとう、でも夢は特別だったんだ。」

「見れない夢の代わりに、抱きしめてあげる

母のように,恋人のように。」

「ありがとう。」

修一が言った。

修一と私は抱きしめあいながら眠りに落ちた。

目が覚める。

何時もの日常が始まる。

朝の支度をしていると、

呟いた。

「夢を見なくなった。」







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