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2月23日(金・祝日)下北沢人形劇祭

 昨日も一昨日も天気予報を確認し、どうか晴れて欲しい、どうか暖かくなって欲しい、と願っていたのに、空は晴れる気配も感じさせない重たい色で、冷たい小雨が降り続いている。割と唐突に頼まれたワークショップは、初回13時からの回は予約0である。予約0でも行かねばならない、飛び込み参加OKにしてあるからだ。不案内な場所で降りしきる雨のなか、ぼんやりと雨粒を眺めポツンと待つのか、と思ったら私は私が可哀想でたまらなくなってきた。いい大人なのに重い荷物を持って、自分を不憫にさせる場所に赴くのである。

 下北沢国際人形劇祭。ワークショップの依頼があるまで知らなかったこの祭りは、一見して把握するのは難しいけれど、興味をそそられるイベントが下北沢界隈で開催されている。もっと早く知っていたら予約できたのに、と悔しくなるような演目ばかりだ。子供が楽しめるものも多く、無料のイベントもある。今回私がワークショップをやる下北沢のBONUS  TRACKで開催される冬市も、この人形劇祭の関連だ。

 下北沢駅に着いた時点で、私は異次元に来たような眩暈を覚えた。私が知っている下北沢と全然違うからだ。駅がまずおしゃれになりすぎて意味がわからない。おしゃれすぎて不安になったので、おしゃれじゃない方の出口を探してしまったほどだ。迷わずおしゃれな方の出口から出ると、一直線でBONUS  TRACKに到着する、というのは後で知った。
 どういうことだ、誰がいつの間にそんな都市計画をしていたのだ。しかもその一直線の道は遊歩道になっていて、なんでもドラマのロケ地という事で人気なのだという。その遊歩道も普通の遊歩道ではない。絶妙な起伏に富みながらジオラマのような立体物もあり、なんとも言えない良い感じなのである。

 世田谷め!

 杉並区民の私は悔しい。何から何までおしゃれではないか。これでは この辺りに住みたい人が増え、どんどん地価も上がるだろう。なんだか悔しい。

 BONUS TRACK自体もこれまたおしゃれなのである。ギラギラしていない店が看板を掲げ(その店名もフォントもロゴもなんかおしゃれ)、ゆったりと営業している、というムードがある。これは杉並区にも武蔵野市にも無い感じだ。物販の出店者が多いのだが、出ている人が皆んな、通に選ばれた通な出店者、という風情を醸し出しているように私には見える。ラックに並んだよくわからない服でも、おそらくおしゃれの中でも通な人にしかわからないカッコいいやつなんだろう、と頷かせる説得力がある。

 これはすごい。

 私は自分のゲルに入った。私だけ今日はゲルが用意されているのである。結構広いゲルにポツンと1人、小さな出入り口から外の雨を眺める。案外寂しく無いかもしれない。

上手くできているゲル、かっこいいです。

 とりあえずゲルの中で1時間ゆったり過ごすか、とkindleを開こうと思ったら、「ワークショップいいですかー」と西荻のお店の見知ったお客様2人と、突然参加したくなった親子連れがいらした。

 世の中案外悪くないし、世田谷もいい所だな。

 私の気力は瞬時に増した。その後は次々と予約の方も、飛び込みの方も途絶える事がなく、可愛い作品が続々と生まれた。

男の子の作品、ジュラシックワールド!

 昔の同僚が子供達と来てくれたりで、あっという間に13、14、15時のワークショップが終わった。誰も居なくなり冷え冷えとしたゲルの中を片付けていると、夕方に会う約束をしていた、これまた昔の同僚がゲルの入り口から顔を覗かせた。こうやって人とゲルの内と外で会う、というのも一生でこれっきりなのかもしれない。

 なんでこんなにオシャレなんだ。来る人も全員なんだかオシャレなんだよ、わたしゃー怖いよ。それに下北沢ってこんなじゃなかったよ?こんなの下北沢じゃないだろう。

 なんて話しているうちに駅に着いた。カフェにでも入ろうと思ったのに、どこも満席で入れない。こんな冷たい雨だというのに街はすごい賑わいだ。ようやくウェンディーズに入ることができた。

 ワークショップを知った友達から、昨晩お誘いをもらった。新代田のFeverである。Googleマップで調べると、なんと歩いて10分ほどだ。ここら辺の人は自転車でいろんな所に行くようだが、これは近い。杉並のウチの場合、歩いて10分では何処にも着かない。ぼんやりした住宅街にしか着かない。それが、ここはBONUS TRACK、下北、新代田と全部歩ける…、オシャレじゃないか。悔しいが住みたいような気すらしてくる。
 
 同僚と別れて新代田へ。クロークにワークショップに使った巨大荷物を預けて黒い扉を開けると、際まで人でいっぱいだった。すごいな、こんなに人気があるんだ。今日はAnalogfishのLIVEだ。
 人垣の隙間から見えるステージの上の光り輝く人達は、まるで映画の登場人物みたいに私に憧れを抱かせる。いいなあ、あんな人生羨ましい。ボーカルの健太郎くんは今日が誕生日だ。こんなに光を浴びて、大きなお花をもらって、たくさんの人に拍手をもらえる誕生日のおじさんは日本にそれほど多くいないだろう。
 LIVEの後は楽屋に行ったり、ライブハウスのカフェでそれほど知らなかった人と知り合ったり、子供を産む前みたいな夜を過ごした。そうか、東京にはこんな夜がたくさん転がっていたんだな、やっぱり夜っていいな、なんて思ったし、漫画が描きたいな、と思った。
 色々なことに心が動かされたのだと思う。

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