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①米国ポートランドとここ東京の下町と比べて「地域コミュニティとは何か?」考えてみる

2018年から、たびたび訪れていた米国オレゴン州ポートランド。
ポートランドでの事業展開はコロナ景気で低迷中と聞き、状況を知るために新しいメンバーを連れて、1週間行ってきました(2023年5月)。
そして、多くのインプットを得て帰国後、ほっと一息つく間も無く東京は下町のお祭りに突入しました。

思いがけず、全米で住みたい街として注目されてきたポートランドと、ここ江戸文化発祥の下町を短期間に比較して考える時間になりました。
そうして見えてきた違いを発見し、それぞれの課題と良さを感じました。

今一度、ポートランドのことを振り返り、ここ東京の下町と比べて「地域コミュニティとは何か?」を考えてみます。

コロナ前とコロナ後のポートランド

KEEP PORTLAND WEIRD

まずはじめに、ポートランドのこと。
2020年のコロナ蔓延が噂になる前のBLM抗議活動はポートランドでも静かに起こりました。デモへの参加者は、ひと晩に100人程度の平和的なものに関わらず、トランプ大統領がFBIを派遣。ケイト・ブラウン知事を含むポートランド市とオレゴン州からの行き過ぎた行為だという申し出も届かず、独裁的にデモ参加者を拘束し、ポートランド住人は激怒しました。詳しくはこちらのWIRED記事をご覧ください。

そんなプチ戦争が、ダウンタウンで起こっていました。もちろんその後、コロナのロックダウン(都市封鎖)。ダウンタウンの経済活動は停止し、中心部での暮らしも難しくなりました。

日本ではロックダウンなく、緊急事態宣言ということで交通網も止まっていなかった。それで「都市封鎖」のイメージが湧かなかったけれど、封鎖によって、いったん血が通わなくなった人の営みを戻すのは大変だ💦と来てみてわかりました。

強制的に外出ができなければ、人は都市に住む必要はなくなります。郊外の広い場所で息をしたい、庭で野菜でも育てようか、というのが人の本音でしょう。アフターコロナとしての街の復活はコロナに費やしたと同じ時間かかりそう。大好きなフードカートはやっていたけれど、風変わりなアメリカンドーナツ店VOODOO DONUTSの周りは治安が悪くなり(薬物中毒のホームレスが多くなってしまい)、観光客の入場待ちだった入り口は、セキュリティが監視し、一度に1組しか入れないシステムでした。

ダウンタウンの人気店舗は入り口に警備員付きです。
5年前のあの誰もが朗らかで、オープンな文化は今では人を疑い、距離を取り、ちょっと固くなってしまったように感じました。

それでも変わらないポートランド、いやちょっと極端に?!

全米でも生きづらい人たちが集まってくるから、反抗心が強い人たちが多い

Racism Free Oregon

アメリカでは宗教、民族、ジェンダーの問題がさまざまです。
そして、保守強硬派も多い。(アラバマ州に4ヶ月住んでた時に実感しました。)

ここポートランドの器が広くて、自由を感じて住み始めたという話を今回よく聞きました。

あらためて、この街の通底に流れるDIY精神(日曜大工ではないよ、"やってみなはれ、応援するから"というマインドセット)が効いているのと、BLMのムーブメントもあり、表現の自由が強化されているように感じました。

例えば日本ではダイバーシティといえば女性参画の話に注目するなど、まだ古典的なステージですが、アメリカ全体でいえばLGBTQも、LGTBQIA2S+(レズビアン、ゲイ、バイセクシャル、トランスジェンダー、クィア・またはクエスチョニング、インターセックス、アセクシャル、ツースピリットの頭文字をとったもの)といったジェンダーの取り扱い意識がとても高いのに驚きました。

BOOKS OF LGBTQ+ VOICES

ポートランドは前からいろんな人がいるなぁと思っていましたが、明らかに性別不明な人がたくさん。男?スカート?ブラ?女?めちゃ筋肉質?髭生えてる?と見た目で性別に分けている自分が恥ずかしくなるくらい、どうでも良くなってくる多さ。(タレントryuchellさんが亡くなってしまったけれど、ここだったら周囲が過敏な反応はしないので、悲しいことにはならなかっただろうな。)

Please do not assume our pronouns

街に3店舗展開している文具店の入り口には、「私たちの(代名詞・ジェンダー)を簡単に決めないでください。彼、彼女じゃなくて彼等を使ってね、よろしく!」っていう看板があるし、私の代名詞は「they・them」ですなど主張するバッジも売っていました。

大切なものを大切だと互いに称え合うエネルギー

TEDx Portland 2023

Keep Portland Weird (ポートランドは変わり者でいようよ)をスローガンとしているこの街のローカルイベントTed x Portlandは知的好奇心旺盛な人が集合します。私は2年前に参加して、泣き、笑い、最後はインスピレーションとビールを片手に参加者同士、談笑する雰囲気が大好きです。
今年のテーマは「Confulence(合流)」でした。トークセッションの目的となるメッセージ(以下)を読んで、今年も参加しました。

しばしば二極化し、分裂的な世界にあって、私たちは一つになることを選びます。懐疑心と好奇心の交差点には理解と革新があります。アイデアの力こそが、私たちを前に進めます。
ウィラメット川がコロンビア川と合流する場所のように、目的と持続力は海へと向かいます。
11年目は、流動性、力強さ、そしてバランスを大切にします。
私たちは、私たちの街と世界のためにより良い明日を創造することに尽力する、逆境に立ち向かう人々、オープンマインドな思想家、実行者たちを称えます。私たちは共に、潮の満ち引きを感じながら、自分の進むべき道を見つけるのです。

Ted x Portland 2023 Confulence

11のトークセッションのなかで、大切なことを忘れない、これまでの実績を称えよう!という「1000 Friends of Oregon」 のスピーチが記憶に残りました。

ポートランドの今をつくった50年前の改革

1974年、環境活動家でもあったトム・マッコール州知事が全米が高度成長、真っ只中な時期に高速道路撤去して公園を作ったことは有名です。また当時ポートランド市長選に当選したゴールドミッシュも市民活動と政治の関係を強化した「Office of Neighborhood Association」を設立。ポートランドの今があるのは70年代の改革の影響が大きいです。

特に、土地利用問題を管理する政府機関の監視団体「1000 Friends of Oregon」の話。これも70年代マッコール知事と若い弁護士ヘンリーが、オレゴン州の土地活用を市民が守るためには1000人のリーダーシップが必要であると名付け、作られたNPO団体です。

Tedx登壇者は現団体のエグゼクティブディレクターのサムで、オレゴンの風光明媚なスライドを見せながらこれまでの農場、森林、牧場、相互に連携した広大な自然ネットワークを保護してきた住民活動。高速道路をぶっ壊して作った公園、全米一の自転車道路の魅力。そして「みんなで言おう!Thanks Oregon!」とスピーチのなかで、コールアンドレスポンス。
みんな笑顔で、楽しげに声を上げていました。
クリエイティブシティと言われるポートランド、オレゴン州を誇る自信は健在だなぁと感じるスピーチでした。
その喜びに触れるとちょっぴりうらやましく、その恩恵にあずかっていることをうれしく感じるひとときでした。

(そんなことを思って帰って来たら、諏訪のリビセン!東野さんが「100年先の諏訪の未来を語る会『1000人の仲間』」の設立されましたね!かっこいい!)

ここまでお読みいただきありがとうございました。
いろいろ書いていたら長くなってしまったので次は、東京の下町についてまとめます。

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