「さよならプラネタリウム」

第1章

「部屋の電気を消そう」と彼、シンは提案した。暗闇の中で、ふたりだけの映画の時間が始まる。シンとユミ、二人の仲間入りをするのは、壁を隔ててうるさい音を立てる洗濯機だけだ。

「シン、また洗濯機が…」ユミの声は苦笑いで満ちていた。しかし、シンは気にしない。彼の答えは、彼女の唇へのキスだった。「笑って、ユミ。そんなことは忘れてしまおう」と彼は微笑む。その笑顔は、部屋の中にプラネタリウムのような夜空を広げる。

窓の向こうからは、隣人の歌声とギターの音が聞こえてくる。あまり上手ではないが、それが逆に二人を和ませる。「隣のおじさん、また歌ってるね」とユミが言う。「うん、でも、聴いてるとなんだか落ち着くよね」とシンが答える。

部屋を照らすのは、窓から差し込む月明かりだけ。「このまま、夜がずっと続けばいいな」とシンはつぶやいた。そして二人は、部屋の真ん中に広がるプラネタリウムを眺めていた。星座を探す二人の眼差しは、夜空に溶け込んでいく。

「シン、星座を探すのって、なんだか楽しいね」とユミが笑った。彼女の笑顔が星空に映し出され、部屋全体が彼女の光で満たされた。失う恐怖はすっかり忘れられ、二人はただ夜空を楽しんでいた。

だけど、心の片隅には不安もくすぶっていた。「ユミ、僕たちはいつも一緒にいられると思う？」シンの問いに、ユミは一瞬だけ戸惑った表情を浮かべた。しかし、すぐに彼女の顔には穏やかな笑みが戻った。「神様がきっと、僕たちを輝き続ける星座にしてくれるわ」と彼女は答えた。そして二人は、再び静かに星空を眺め続けた。