料理の上手な女の子とディープラーニングと囲碁の関係について

昔、料理がすごく上手な女の子と付き合っていたことがある。特別な材料を使うわけでもなく、冷蔵庫の中にあるものを組み合わせて、「えっ」っていうくらいおいしいものをつくる。不思議だったのは、彼女がいれると、ただのコーヒーですらとてもおいしくなるのだ。

ああいうのを、センスがいい、というんだと思う。もうひとつ不思議なことが起きたのは、その後、ぼくまで料理がうまくなったことだ。とくに彼女に習ったわけでもなく、なんとなく横で見たり、いっしょに食べたりしていただけなんだけど、それでもぼくの料理の腕前はかなり上達した。センスというのは、そういうものなのかもしれない。


ところで、このところ一部のオタクたちが人工知能に夢中である。これについて、あんまりピンときていない人もいるだろう。Googleの囲碁AIが世界チャンピオンに勝ったとか、すごいかもしれないけど、だからなんなんだ、という人も多いんじゃないだろうか。

でも実はこれが、冒頭の「センス」の話に関わってくるのだ。

Googleの囲碁AIもだが、最新の人工知能は「ディープラーニング」という技術を使って開発されている。

これまでコンピュータは、人間が、プログラミング言語(つまり、言葉)を使って、命令したことだけができる機械だった。たとえば、囲碁のプログラムなら、「石を囲むと石が取れる」とか「スミのほうに石を打つと陣地をつくりやすい」といった知識を、人間がプログラミングしていた。

しかし、それだけだとあまり強くならなかった。なぜかというと、強い人は、そういう言語化できる方法論だけではなく、「ここに打つと厚みができる」とか「(よくわからんけど)この一手」といった「センス」や「感覚」で囲碁をプレイしている。そういう囲碁の強さの肝心の部分は、言語化できないから、プログラミングもうまくできなかったのだ。

ところが、ディープラーニングを使うと、コンピュータのできることを、そういう「人間が言葉で説明できない領域」まで広げることができる。つまり、コンピュータに「センス」を教えることができるようになるのだ。

これは、かなりすごいことだ。人間の行う物事には、だいたいこういう領域がある。だから、経験とか修行のようなものに価値が置かれてきたし、同じ経験を通じてたくさんのことを身につける「センスのいいひと」というのも存在した。そしてこの領域は、人間だけが持つもので、熟練の技術や感覚はコンピュータに置き換えられないと考えられてきた。

しかしそれが、コンピュータにできるようになるのだ。

囲碁は、人間が行うことのなかでもかなり難易度の高い行為といっていいだろう。ここから考えると、人間が行うことのとても多くの分野は、人工知能と置き換えることが可能になるはずだ。前回のVRの話ともつながっているんだけど、この先の10年くらいで、人工知能が活躍の場所を広げて、世界が変わっていくのをぼくらは見ることになるのだろう。

そして、ピースオブケイクでも、人工知能を活用して、さまざまな手法でコンテンツの解析を行っている。ものづくりをしているひとたちの最大の問いは、「おもしろさとは何か?」だと思うのだが、とうとう、そこに近づける日も近いのかもしれない。

人工知能の議論は、人間の仕事が奪われるのではないかというような、悲観的な話になることが多いのだが、ぼくはかなり、ワクワクしている。

いま、世界のトッププレイヤーたちの囲碁は、コンピュータの発想を取り入れて変わってきている。ぼくの料理が、センスのいい子の影響で上達したように、人工知能のおかげで人間も変われるのではないかと思うんですよね。


■補足
この「コンテンツ会議」という企画は、コルクの佐渡島さんと毎週水曜日にコンテンツ評をあげるというルールでやってます。題材は本でも映画でもウェブの記事でもコンテンツに関するものならなんでもOK。参加者が増えるとうれしいので、ぜひお気軽にハッシュタグ #コンテンツ会議 をつけて参加してください。

ちなみに、ぼくが今週題材にしたコンテンツは、自社サイトで発表しているMediaGrowthという人工知能を活用した新サービスについてでした(こんなのもありです)。

Service|株式会社ピースオブケイクhttps://www.pieceofcake.co.jp/n/n222a16ce9476

TBSイノベーション・パートナーズ向け第三者割当増資の実施|株式会社ピースオブケイク
https://www.pieceofcake.co.jp/n/ne1395eba7c13

電通グループのCVCである電通デジタルファンド向け第三者割当増資の実施|株式会社ピースオブケイク
https://www.pieceofcake.co.jp/n/n5a5454728960

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加藤貞顕

コルク佐渡島、note加藤のコンテンツ会議

コルク代表・佐渡島庸平、noteやcakesの運営会社ピースオブケイクの代表・加藤貞顕が、その週にふれたコンテンツについて書いていきます。毎週水曜日更新(予定)!

コメント3件

人工知能に対して少し前向きになりました。
子どもに大人が教えられるように、人工知能から素直に教わってもいいのかなと思えました。
こんばんは。^^
私は幼少期に読んだ漫画・観た映画「ドラえもん のび太とブリキの迷宮」の印象が強くて、若干危機感を感じます。
それと同時に「幼少期の漫画・アニメからの刷り込み」という新しいテーマも加藤さんの記事を読んでから、考え浮かびました。

#コンテンツ会議 が気になります。
でも、コンテンツの範囲、内容の範囲が広すぎて、逆にどんな感じで参加したら良いのか迷います。
でも、楽しそうな企画ですね。^^
人工知能の事全然知らないのですが、人工知能が囲碁をおもしろいと感じることは可能なのでしょうか?
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