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『生涯投資家』(村上世彰)がおもしろい

毎週水曜日に「コンテンツ会議」という名前で、この1週間にふれたコンテンツの感想を書くということをやってます。いつもは朝に書くのですが、今日は夜にすべりこみで。

ということで、今週の1冊はこちら。

生涯投資家

あの「村上ファンド」の村上世彰さんの本です。

村上さんのやってきたこと、やりたいこと、そして人柄がわかる、すごくいい本でした。なにしろ「はじめに」からキてる。

私が自分で株への投資を始めたのは、小学三年生の時だ。ある日、父が百万円の帯付きの札束を置いて、こう言った。
「世彰は、いつも小遣いちょうだいと言うが、いま百万円あげてもいい。ただしこれは、大学を卒業するまでのお小遣いだ。どうする?」
見たこともない大金を目の前に、私は興奮した。それでも冷静になって、計算した。
「お父さん、大学卒業までだったらあと十四年もあるから、百万円じゃ少ないよ。大学入学ならちょうど十年だから、年間十万円になる。だから、大学に入るまでのお小遣いにして!」
そうお願いして、十年間のお小遣いを一括前払いということで、百万円の現金を手にした。この百万円を元手に株の投資を始めた。

小3で「100万円じゃ少ない」って、交渉するのがすごい。

大学卒業後は通産省に勤め、その後、独立して、日本にコーポレートガバナンスを普及させるためにファンドをつくる。村上さんがずっとこだわり続けているのは「資金の循環」だ。本の中にも50回くらいこの言葉が出てくる。

「もの言う株主」として、経営陣に問いかけるのは、つねに「お金を有効に使っているのか?」ということだ。それがうまくいけば、会社はよくなるし、株価も上がるし、日本経済全体も上昇する。

村上さん自身が、村上ファンドの経営者として投資家に詰められるエピソードも出てくる。オリックスの宮内会長にお金を借りたら、生命保険に入らせられたエピソードとか、笑ってしまった。

逮捕されたインサイダー取引事件についても詳しい記述があるし、震災時にも活躍した、NPO、NGOの支援の話も出てくる。こういう話や、随所に出てくる家族の話を読むと、村上さんの印象がだいぶ変わると思う。

村上ファンド設立から15年以上たって、ようやくコーポレート・ガバナンスやROE経営という概念が普及しつつある。会社を買ったり売ったりするのって、当たり前だよねって空気にもなってきた。人の世の変化には10年単位の時間がかかるんだな。とても勉強になるし、おもしろい本です。おすすめ。

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