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大きな粒のすきまにあるもの

以前、『僕がワイナリーをつくった理由』という本を編集したことがある。落希一郎さんというひとが新潟につくった「カーブドッチ」というワイナリーの創業物語だ。

カーブドッチは大量生産、大量消費に背を向けた存在だ。地元のファンに向けて、必要な分だけを生産して、売り切れたら平気な顔で「売り切れです」という。畑や庭園は非常に美しく、観光客がたくさん来て、絶えず、新たなファンを獲得していく。ワイナリー内にはレストランが点在し、食事を楽しんだりできるし、さらには温泉や宿泊施設まである。

はじめて行ったときに「なるほど、こういうやりかたがあるのか」と驚き、そして腑に落ちた。ワインをつくるときに、世界ぜんぶを相手にする必要なんてどこにもない。決まった数のファンがいれば、ちゃんと経営も成り立つし、むしろ親密なコミュニケーションの結果、作り手も買い手も幸せそうだ。

コンテンツの場合も同じことなのなかなと思っている。本やCDというのは大量生産品だから、大勢の人に受け入れられるように、ものづくりをする必要がある。規模が大きいから、うまくいけば、多くの人に届けられるし、その結果、すごくもうかる。でも、コミュニケーションの「粒度」が荒いから、どうしたってそこからはこぼれ落ちるものがある。

どっちがえらいとか、正しいとか、そういう話ではない。たぶん、必要なのは、両方なんだろう。noteはその両方をできるようにつくられているし、これからもそのためにやっていこうと思う。

ということで、告知をいくつか。

くるりの公式ファンクラブ「純情息子」がnoteに引っ越してくださいました。すでに、デビュー前のレア音源の配信や、MV撮影のオフショットの公開などがあります。

くるり official (quruli)|note
https://note.mu/quruli

ラジオに出ます。たぶん、今日書いたみたいな話になるんじゃないかな。

文化系トークラジオLife
「里山ウェブの時代」
6月22日(日)深夜25:00~28:00
http://www.tbsradio.jp/life/2014/06/

カーブドッチをつくった落希一郎さんは、いまは北海道の余市にまた新しいワイナリーをつくっています。60歳をこえて起業とか、ほんとに尋常ないひとです。

OcciGabi(オチガビ) 北海道余市のぶどう畑のワイナリー・レストラン
http://www.occigabi.net/

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