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『青春と変態』

週末ということで、本のレビューをもうひとつ。天才芸術家・会田誠さんの書いた小説『青春と変態』です。

高校生の会田くんという主人公が、スキー部の合宿で、好きな女の子のトイレを覗くという話で、文字にすると最低なんだけど、中身もほんとうに最低の話です(笑)。昔、この本を女の子にプレゼントして、読後に「絶対に、イヤ!」というビビッドな感想をもらったことがある(でも、おもしろかったそうです)。

主人公の会田くんの高校には、スキー部があって、毎年、近所の女子校と合同合宿が行われる。その理由は、会田くんの学校のスキー部の顧問と、女子校のスキー部の顧問が、学生時代からの親友だったからだ。ちょっと都合がよすぎる設定に感じるかもしれないが、ぼくはそこまで読んで、あれ?と思った。

Googleで検索してみたら、会田誠さんとぼくの高校はいっしょだった。年齢は、ぼくのほうがちょっと下で、時期は重なってはいないんだけど、同じスキー部にぼくも所属していたのだ。たしかに、女子校との合同合宿もあったし、小説のなかに出てくる旅館とかゲレンデの様子もすべて覚えがある。

本のなかに、主人公が趣味に目覚めて、市内の中心部にある書店のトイレで覗きをするシーンがある。その舞台はおそらく、新潟市の古町にあった北光社という書店だ。ぼくも学校帰りに毎日のように通っていた書店で、この本を読んだら記憶が一気によみがえってきた。

北光社のトイレは2階に登る階段の途中にあって、男女共用だった。黒いタイル貼りで、いつも窓が少し開けてあって、裏通りの車の音がしていた。そのシーンを読むと、あのトイレに、昨日行ってきたかのような感覚になる。芸術家・会田誠さんの、視覚的な記憶力と、それを描写する力によるものだろう。合宿の宿の様子や、スキー場の風景も、文章を読むとその風景がよみがえってくる。芸術家ってすごいですね。

6月29日 日曜日

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