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落語の話

古今亭志ん朝の落語を見たことがある。2001年の末広亭の正月公演で、演目は「子別れ」だった。こういう正月講演というのは、たくさんの噺家が入れ替わり立ち代り出てきて、「お正月ですから」といった、わりとゆるめの雰囲気で行われることが多いんだと思う。

実際、その日も、そういう雰囲気で進んでいた。ところが、大トリに登場した志ん朝が、どういうわけか、この大ネタを持ってきた。ぼくは後ろの方の桟敷席で見ていたんだけど、クライマックスの父と息子が再開するシーンの「間」の、場内が静まり返った風景は、いまでも目に焼き付いている。終演後は、観客の酔っぱらいのおじさんたちが、みんな涙を拭いていた。

そして、その年の秋、会社で仕事をしていたら、志ん朝が亡くなったニュースを聞いた。あんなにすごいものを聞かせてくれたのに、とひどく驚いた。

急に落語の話を書いたのは、『昭和元禄落語心中』というマンガを読んだからだ。

モデルになっているのは、志ん朝とか談志とか、あとはたぶん、志ん生と圓生とか、いろんなひとを混ぜてあるんだと思う。落語とおんなじように、人間の弱さと愛おしさと、そして真摯さを、ていねいに描いたマンガです。5巻まで出てるんだけど、一気に読んでしまった。

となると、この夏は、寄席で一杯やらなくてはいけませんねえ。

6月28日 土曜日

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