経営とクリエイティブと、アート

会社をつくっていちばん驚いたことは、何度も何度も、同じ話をしなくてはいけないことだ。

たとえば、投資家に会って、プレゼンをする。自分たちが何をしているのか、これから何をするつもりなのかを説明する。それぞれの人は初めてぼくらの話をきくわけだから、あたりまえなんだけど、ほんとうに何度も何度も、同じ話をすることになる。

これは、お客さんに対してもそうだし、転職の検討をしてくれている人にもだし、もちろん、社員に対しても同じだ。

実際は、相手の反応を見ながら、あるいは事業の進捗にあわせて、少しずつ話を変えたりもするのだけれど、話の要旨は変わらない。こんなに同じ話を繰り返す仕事は、なかなかないかもしれない。

最初のうちは、

「あと何回、説明しないといけないんだろう?」

なんてことを思ったりもした。

でもよく考えてみると、そりゃそうだろ、とも思えてきた。今までにないことで、しかもだれにも頼まれてないことをはじめたのだから、しつこく説明しなくてはいけないのはあたりまえだ。

おそろしいことに、長年、会社を経営している人は、ずっとこれをやっているのだ。そして、やり続けた期間が長ければ長いほど、説明の回数が多ければ多いほど、その会社は信頼というものを身にまとってくる。


1979年に創業された糸井重里さんの会社「ほぼ日」の上場申請が、東京証券取引所に承認された。会社ができてから38年、ウェブサイト「ほぼ日刊イトイ新聞」ができてから18年。本当にすごいことだと思う。

糸井さんには2013年にcakesの1周年の際にインタビューさせていただいた(もう4年も前なのか!)。

連載の初回は、ぼくがおそるおそる、インタビュー依頼の手紙を出すところからはじまる。

【第0回】1周年記念インタビューの依頼をしてみたら!|糸井さん、ぜんぶ聞いてもいいですか?

その後、クリエイティブと経営について、話を伺っていく。上場についても聞いていた。

【第2回】親御さんが「よかったね」といってくれる会社に。

加藤 一方、ほぼ日の場合は、もっと会社を大きくしようとか、あるいは上場しようとか、そんなことを考えたことってあるんですか?
(中略)
糸井 いまはまったく違っていて、「いつでも上場できるくらいの資格を持っていないと生き延びられない」と思っていますんで。もう、5年も6年も上場準備と称して、社内を整えています。
(中略)
だから上場の準備をしてるのは、その準備自体が目的みたいなところはあります。上場準備のプロセスって、上場のしくみを勉強して「あ、社会はそれを価値としているんだ」ということをお勉強する機会ですし、一方でぼくらがそれをそのまんま真似してたんじゃ意味がないですし。真似をしないで、どうやったら上場できるのか。外部の方々から認めてもらえるのか。そんな社会との接点を考えるチャンスでもある。

「普通の会社」とはすこしちがう会社として、普通じゃない上場について考えていることがうかがえる。「ほぼ日」が東証に提出した書類も読んだ。

新規上場申請のための有価証券報告書

「事業の概要」の節の以下の部分にしびれた。

読みものは、 日常生活に根差している点で、 販売している商品とコンセプトが近く、 時流を追わずいつでも楽しめる息の長い内容や、 人と社会への肯定感に根差した姿勢のコンテンツが中心です。 このことが多様な生活者に支持されていると考えています。

「人と社会への肯定感に根ざした姿勢のコンテンツ」って、まさにほぼ日そのものじゃないですか。自分たちの考える、インターネットの目指すべきことを、ちゃんとやって、ちゃんと稼いで、上場までしてしまう。これってすごく、アートだし、ロックだし、大人だし、かっこいい。

インタビュー連載の1回目でもふれている『インターネット的』も、そういう未来の示唆にあふれている。

新書版の発行は2001年だから、こんなに前から言ってたのか。

こういうことを、言って、やって、ひとを巻きこみ、形にする。クリエイティブってこういうことなんだなと思いました。

糸井さん、篠田さん、ほぼ日のみなさん、おめでとうございます。

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加藤貞顕

コルク佐渡島、note加藤のコンテンツ会議

コルク代表・佐渡島庸平、noteやcakesの運営会社ピースオブケイクの代表・加藤貞顕が、その週にふれたコンテンツについて書いていきます。毎週水曜日更新(予定)!
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コメント1件

おはようございます。^^
私の本職や知人のお医者さんでも、来られる人、一人一人に同じ事を何度も伝える時がありますが、私達は研究者が発表した既存の知識を説明する事が多いです。
しかし、新しく創った物事を一人一人納得されるまで説明するのは大変パワーのいる事だと思います。
大変だと思いますが、頑張って下さい。きっと良い未来に繋がると思います。^^


赤城 春輔
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