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【プレゼン】なぜ今「康忠」を推すべきなのか

 
 私は今壁際の幻覚に向かって話しかけているが、もしあなたがその幻覚だというのならよく謹聴してほしい。
 ついでに申しておくと、ここから先は街中を歩いていたら
「ちょっとお話よろしいですか……いえいえ大したことじゃありません! こちら高級化粧水の……」
 と連れ込まれた近くのビル内で聞かされる類の話もである。おまけに腐向けだ。

【康忠を推すメリット】

 では早速本題に入ろう。私はあなたに「康忠」というカップリングを強くオススメしたい。
 康忠とはなにか? 
 だがその前に私から、康忠を推した際のメリットを提示させていただく。
 
「康忠を推している限り、あなたは死ななくなる」
 
 人は太古の昔より不老不死を求めて様々なる試みをしてきた。ギリシャ神話にも日本昔話にもそのような話は散見され、あの秦の始皇帝すら不老不死の薬を臣下に探させ、ヒンシュクを買った。
 その不老不死の夢が、康忠で叶ってしまうのである。
 具体的には寿命、病気、事故以外では死ななくなる。
 

【康忠とは漫画「信長協奏曲」の登場人物である】

 そんな康忠はなんと「信長協奏曲」という漫画さえ読めば簡単に推すことができるのだ。この漫画のあらすじに関してはもう説明の必要もないだろう、買って読めばわかる。だがここで求められてもいないのに「あー別にすこぶるしたいわけではありませんがあなたがどうしてもと仰るのなら小生とてしないでもありませんよ???(早口)」となるのが俺たちオタクであるからにはやはりするべきであろう。
 
 信長協奏曲とは、戦国時代にタイムスリップしてしまった現代の男子高校生サブローが、本能寺の変の犯人を知らぬままに織田信長として生きていく、というストーリーの歴史漫画である。さらにサブローと入れ替わった本物の織田信長が明智光秀として登場したりといった、展開の読めなさが見どころだ。そんな信長協奏曲はもうすぐ本能寺へ突入である、読まない手はない、本屋へ走れ。
 また、本作は2014年にアニメ放送された。もしかしたらお近くのビデオ屋にあるかもしれないし、ないかもしれないが、借りて観てもよいと思う。もしくは動画サイト。FDOプレミアムだかなんだかで全話観られると、ツイッターで見た。
 
 もうおわかりであろうが、前述の康忠とはこの信長協奏曲に出てくる二人の登場人物の略称である。
 榊原康政と本多忠勝だ。康政×忠勝で康忠。わかりやすいね!
 ちなみにアニメには登場していない。

【康政と忠勝の簡単な説明】

 康政と忠勝は徳川家康に仕える家臣である。作中においては二人はほとんど共に登場し、なおかつ同じコマに収まっている確率が非常に高い。多分前世がS極とN極だったのだろう。
 そんな前世が磁石と断定された彼らであるが、私の視力0.08の眼球が信用に値するのであれば、登場するごとにイチャイチャしている。これは私の妄言ではなく紛れもない事実だということを、我が眼球に成り代わって今から証明させていただきたい。
 
 康政、彼は薄く真っ直ぐな眉、なにを考えているか一向読めない三白眼を有し、その外見はチベットスナギツネに似る。どちらかと言えば寡黙そうで華やかな見た目ではないが、よくよく目を凝らすと全てのパーツが完璧に顔面に配置されており、咀嚼すればするほど美しさの増してゆく不思議な容姿である。
 私は先ほど彼を「寡黙そう」だと言った。しかしながらその見てくれに反して康政の舌は相当長く(比喩)、作中屈指の饒舌キャラである。またこちらの心を乱すことには、彼が長い舌を弄してすることはと言えば大抵「忠勝をからかうこと」と決まっている。思えば康政は好きな子(忠勝)をいじめたくなる小学生男子から進化していないのであろう。それもそうであるやもしれない、二人は同い年の幼なじみなのだ。あの関係性がとうに大人になった今でも持続しているだけである。
 そんな次第からして、私は今より「からかい上手のサカキバラ」とかいうアニメだかなんだかが制作されても、一向驚かないに違いない。もしくは康政の前世はS極ではなくドS極だと言われても、同じく吃驚せぬだろう。
 
 忠勝、君は顔が怖い男。眉毛の角度は始点を繋いだ直線に対して25〜45°と言われており、初対面の人間に「顔が怖い」やら「鬼」やら言われがちな容姿である。しかしながら彼こそよく見るといい顔立ちの男であるから、目を伏せた瞬間くっきりとした二重の線が見え、ただの美青年になってしまう。そう思うと忠勝が常に目ぇかっぴらいて子供泣かせの表情を崩さぬのは、イケメンだとバレないようにするためであろうか。かつて蘭陵王も自身の白皙の美貌が味方の士気を下げることを恐れ、鬼面をつけて戦場に出たという。となると、忠勝の場合もイケメンだとバレないようにするために目ぇかっぴらいている可能性が、ないでもない。
 ちなみに蘭陵王の鬼面の話は創作らしいが、私の忠勝の物理的鬼面説は妄想である。
 そんな忠勝だが、鬼のような見た目に反して康政にはからかわれっぱなしである。なにか一言言い返せばいいものをと思うが、元々言葉が上手いほうではないためか、多くは康政の胸ぐらを掴むに留める。
 しかし、そのように康政のいじりにしょっちゅうキレる割には、彼はいつも康政の隣に立っているのである。そもそも胸ぐらの件にしても私にはキスの距離にしか見えない。これが愛じゃなければなんと呼ぶのか僕は知らなかった(米津玄師)。
  
 さて、ここまでの話を要約すれば、「からかい上手の康政くんが強面の忠勝くんに向ける強火の矢印、そして受け入れる忠勝。これが愛じゃなければなんと呼ぶのか僕は知らなかった」ということである。なにを言っているかわからなければそれはあなたの感性が正しいので自信を持ってほしい。
 

【康忠の見どころは?】

 康忠というカプのポイントは簡単に言えば三つ、①かわいい②ネタっぽい③重くエモい、である。
 まあ基本的には②のネタ要素強めの彼らだが、当然戦国武将であるから戦においては無類の働きをする。ここでは序盤の「三方ヶ原の戦い」を例にとり、ネタでありながらも重くエモい康忠の見どころを解説させていただきたい。
 
 三方ヶ原の戦いといえば徳川家康が武田信玄に大敗を喫した戦であり、彼の生涯における三大危機に数えられる。であるからして、その家康の部下たる康政と忠勝が、軍の壊滅を阻止せんと奮戦したのは必定の成り行きである。
 普段滅多に表情を崩さぬあの康政も、かつてなく敗戦の色濃いこの状況にはさすがに肝を冷やしたと見え、
「このままでは我が軍は全滅するわ」(モノローグより)
 と舌打ちをしている。この台詞以前の康政の戦いぶりは描かれていないが、額から流れる汗や返り血の付いた鎧などからそれらを推察することができよう。というか康政を推す限りこの「推察力」が非常にものを言うので、頑張って鍛えよう。
 しかしながら、逃げる戦場で忠勝と出会った途端、康政の様子が一変する。一瞬前まで舌打ちしたくなるような精神状態だったとは思えないほど、忠勝に向かって饒舌にペラペラと不謹慎かつコメディセンス抜群のブラックジョークをぶちかましはじめ、言うだけ言って自分はさっさと本拠の城に帰っていったのである。いやお前さっきまで「このままでは我が軍は全滅するわ(舌打ち)」とか言ってたやないかい!
 一方忠勝は忠勝でそれなりにキレていたのだが、そんな彼に大切な養父との別れの時が近づいていた──! 戦場で散りゆく命、返らぬ思い出、そのとき忠勝の選択とは? 続きは信長協奏曲第九巻で!!!!!(怒涛の宣伝)
 

【創作をしてみないかい】

 ところで当方、昨年康忠にハマってはじめて二次創作をはじめた人間である。初心者すぎてひとつも勝手がわからず、とりあえず手当り次第にイラスト、漫画、小説、評論全部やった。今だってプレゼン記事を作っている。ついでに言えばこのあいだは六万二千字の小説本(康忠且つ忠康)を作り、フォロワー様と自分用に二冊刷った。なぜ二冊などと微妙な数を、と思われるかもしれないが、これはひとえにイベントもなければそもそも今に残る康忠推しの人間が異様に少ないためである。
 私は三秒おきにpixivで「康忠」と検索する崇高な趣味の持ち主なのだが、(しかし今見たら最後の検索が「康政 R18」だった、)だいたい一番上に自分かフォロワー様のイラストがあり、それを見る気持ちには明け方の流れないツイッタータイムラインを呆然と眺めているときのような趣がある。それこそ「このままでは我が軍は全滅するわ」に通ずる危機感を常に心に抱いている状態だ。
 
 ゆえに、康忠界にとって新たなる創作主の出現はかねてよりの喫緊の課題である。
 と、聞いてそこのあなたはきっと「我、康忠の創作してみたいやもしれぬ」と思っただろう、ええ、思ったことでしょう。
 しかし、康忠で具体的にどんな創作をしたらよいのか?

 安心してほしい、康忠は創作オタクに優しいカプである。コメディ、シリアス、アクション、ブラック、イチャらぶ、ブロマンス、そもそも原作の康忠がほとんどの要素を備えているため、どんな属性の創作お嬢様の心にも優しく寄り添ってくれるだろう。それでいて媚びることなく、我らの手の届かぬところで燦然と輝く高貴さをも秘めているのだ。
 

【まとめ】

 量にして原稿用紙十枚分くらい書いた割には、まとめられるほどの内容もない。なぜなら伝えるべきことはすべて原作にあるので、いかに言葉を尽くしてもそれに及ばぬ上は、妄言を吐く他の手段が存在せぬのである。
 というかそもそもこの記事に辿り着く人間がどれほどいるのかすらわからず、私は今まで読み手の見当がつかない記事を延々書いてきたのだ。本当に壁際の幻覚に話しかけただけで終わるかもしれない。コンニチワ、幻覚。
 だがたとえ幻覚相手だとしても、これだけは間違いなく断言することができる。
 
 「康忠は世界一最高のカプである」
 
 世界一最高、という世界で一番なんだか世界で最も高いんだかよくわからない表現が正しいかどうかはさておき、康忠ちゃんは本当にいいカプだ。出会えた奇跡に日々感謝しつつ、今夜も康忠の妄想をして眠りにつきたいなと思っている。
 急に尻すぼみになったが、これにて文の結びとさせていただきたい。読んでくれた幻覚ありがとう。

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