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ライブレポ|こんな夜こそがずっと続きますように[the dadadadys ワンマンツアー (許)【東京】 6/9]

 自分が初めてthe dadadadysのライブを見たのは今年2月のBAYCAMP。その直後にこのツアーも発表され、「1回はワンマン見てみたいし買うか」くらいの勢いでこの日のチケットを購入した。当時は片手で数える程度しか曲を知らなかったが、気づけば「the dadadadysが出るからVIVA LA ROCKに行く」と決めるくらいに好きになっていた。

the dadadadys ワンマンツアー(許)【東京】 @渋谷CLUB QUATTRO

 dadadadysのワンマンに来るのは初めてということもあるが、今回のツアーのセットリストを見ると、ライブで聴きたい曲や意外な選曲が多く、今日のライブへの期待がとても高かった。ただ、期待から来る緊張も同様に高く、1週間前からそわそわしていて、これほどまでに緊張するのは3月の銀杏山形以来だった。
 今日の会場、渋谷CLUB QUATTROに到着。受付などがある4階に上がると入り口の扉に、
「本公演は、怪我等が発生しても主催者・企画者等は一切責任を負いません。ご自由にお楽しみください
といったニュアンスの張り紙が張ってあった。公式からこのような注意書きが書かれていて、さらに期待が高まる。

 開場時間となったのでフロアへ向かう。自分の番号は90番台とそこまで良い番号ではなかったが、実際にフロアに入ると中央の3列目と思った以上に良い位置に来ることができた。たまたま隣になったフォロワーの方と話していたので開演までの1時間はあっという間だった。しかし、期待から来る緊張はなかなか治まらず、開演時間が遅れたこともありドキドキはさらに増していった。
開演時間から送れること5分、"anthem"が流れだしいよいよ始まった。

 ステージの上の照明がチカチカと光り、下手からロゴTを着た5人が現れ、Dr.yucco、Ba.佐藤健一郎、そして小池貞利はサングラスをかけて登場した。ギターをかけるタイミングで小池はサングラスを一度置き、途中のブレイクで小池が"anthem"の最後の音声をアレンジして、
「ダダダディーズをお好きな、イカれ狂った最高のセンスをお持ちの親愛なる社会不適合者の皆様、お待たせしましたァァァァ」と挨拶すると、お客さんが前にグッと詰まりライブがスタートした。ギターがかき鳴らされる中始まったのは"光るまち"。元の曲よりテンポアップされていたり、ギターアレンジが新たに加わっていて、単なる”ライブバージョンの光るまち”ではなく”the dadadadysの光るまち”になっていた。

 そしてサングラスを再びかけ直し、今回のツアータイトルにもなっている"(許)"。イントロを鳴らし終わると、かけ直したサングラスをフロアに投げ、その瞬間フロアの熱が一気に上がり、2曲目にも関わらず最高潮になっていた。
 ドラムのリズムに合わせて小池が「あっ!」と言って始まった"あっ!"。Bメロの「イケてない」というフレーズをみんなで歌い、サビに入ると早くもダイバー現れていた。そして、少し間を開けて"kill & miss"へ。この"あっ!"から"kill & miss"は繋げて演奏するかと思ったが、切り離して演奏していて、曲に対してのリスペクトのようなものを感じた。

 ここで一旦ブレイクタイムに入る。フロアから「小池ー!!」と叫び声が聞こえると、「はい、小池です♡」と答え、フロアから笑い声面白かった。
 ブレイクタイムとは言っても、あくまでもそれはメンバーの休憩やチューニングの時間。チューニング等が終わるとすぐにMCに入り、再びライブがスタート。
余韻に浸る間も無く間髪入れずに演奏が続き、ファンたちとしても嬉しいが、おそらく一番楽しんでいるのは小池貞利本人だろう。以前、とあるラジオで「今回のツアーで全国を周っていますがどうですか?」という質問に、小池が真っ先に出た回答が「楽しいです」だったのだ。ライブでの小池の姿を見れば一目でわかるが、実際に声としてそれが聞けたことがとても嬉しかった。

 横揺れが起こりゆったりとした"青二才"が始まったと思えば、"にんにんにんじゃ"で再びフロアの熱を上げ、"しぇけなべいべー"へと続く高低差のある曲順。また、"しぇけなべいべー"では「下手な踊りで踊り明かそう」というMCから始まり、曲といいステージで踊り歌う小池の姿は華金の渋谷の街にはぴったりだった。
 「PUXXYの意味知ってる?おめこおめこ!」というMCから始まった"PUXXY WOMAN"。間奏で「今日生理なん?まあいいや」という最低なセリフから最高なメロディーにつながる流れが大人の遊び心を感じた。曲が終わるとステージの照明が緑に照らされ、儀間さんと廉さんのギターセッションが入り、続けて演奏されたのは"散々愛燦燦"。歌詞やメロディーなど、"PUXXY WOMAN"から高低差があるが、照明とギターセッションによって一瞬にして会場に溶け込み魅せられた。

 "超々超絶絶頂絶好最高潮"、「お俺を見ろ!」というMCから始まった"トリバーチの靴"と熱量を上げに上げ、まるでこの曲に繋げるためだったかのように始まったのは"拝啓"。イントロが流れ出した瞬間、すでに詰まっていたお客さんがさらに詰まり、ダイバーも続出。ラスサビ前では、小池がマイクスタンドを持ってフロアに向かい、手でお客さんを避けさせようとするモーションをし、降りて歌おうとしていた。この姿を見て、やはりこの男は狂っていて最高だと感じた。結局降りることはできなかったが、マイクスタンドを持ってもらい、小池はお客さんの頭の上で演奏するというカオスが広がっていた。

 ハンドマイクからアコギに持ち替え、めっちゃかっこいいセッションから入り、歌に入る前のギターとドラムのリズムに合わせて「演奏が上手い」、「かっこいい」、「楽しい」と言って始まった"♡"、以前のライブで「この曲が伝わらなかったら音楽を辞める」とまで言った"らぶりありてぃ"、「お世話になってる全ての風俗嬢に捧げます」と言って始まった"恋"の3曲が続く。先にも書いた、the dadadadysになってから感じるようになった大人の遊び心。特にこの3曲はそれがとても上手く作用しているように感じ、小池が人を、音楽を愛していることが強く伝わった。

 ライブも終盤に入り、次に何の曲が来るのかわくわくしている中、鳴り響いたのは特徴的なあのドラムのリズム。「今年死んだ祖父に捧げます」と言い、ギターが加わり始まったのは、名曲 "手"。一番聴きたかった曲だ。サビに入るとフロア全体が拳を握り飛び上がるこの一体感は、今日一の盛り上がりを見せていて、自分だけでなく、ほかのファンとしてもこの曲は特別な曲なんだと感じた。また、ラスサビで小池の手を握りながら歌えたことは一番の思い出だった。ギターが鳴り止まぬ中、小池がフロアに体を乗り出し、「もしもし?もしもし?」と聞き、何が来るか察したようにフロアから歓声が上がり始まった"もしもし?もしもさぁ"。ラスサビ前に小池と儀間さんがチューするとフロアがさらに沸き上がった。

 残すところあと2曲となり、「気持ちいい~!」と言って始まったのは"k.a.i.k.a.n"。アップテンポの曲調が前曲からの熱を加速させ、ラストのカッティングで小池が廉さんに「速く速く!」と、音源でも十分速いカッティングをさらに加速させていて、小池自身もテンションも最高潮に上がっているのが伝わった。そして「最低で最高な夜を更新していこう」というMCが入り、ラストの"ROSSOMAN"へ。みんなが拳を挙げ、跳びはね、「ギリギリ・キリギリス」という意味わかんない単語を叫びながら歌う最高の空間に包まれながら本編を締めくくった。

 メンバーが袖に捌けていってからも拍手は止まず、気づけばアンコールの拍手へ変わっていった。5分ほどして、メンバーが再び登場した。
アンコール1曲目で演奏されたのは"夢見心地で"だった。曲自体は激しい曲ではないが、この曲が選ばれた意外性から個人的にはかなり熱い選曲だった。また、間奏ではギターとベースの4人が横並びで演奏していて、照明も相まって4人の姿がかっこよく眩しかった。

 演奏が終わり余韻が残る中、あのMCが入る。
「埼玉県、戸田市、上戸田、1-7-5、クレストヒル303号室で、地球ぶっ壊れないかなって、あの高層ビルに、隕石が落ちてこないかなって、思って作った曲」。そう、始まったのは"高層ビルと人工衛星"だ。イントロが始まった瞬間、開演前に話していたフォロワーがダイブしようとしていて、気づいたら自分はその発射台をしていた。ダイブする前に振り向いたときの顔は最高に輝いていた。そしてサビで自分がダイブしたとき、小池を見ると俺のことを見て嬉しそうに笑っていた。自分が好きな曲で、自分の好きな人が、自分が最高に楽しんでいる姿を見て、顔を見て笑ってくれたことが本当に嬉しかった。曲終わり、小池がダイブするとBa.佐藤健一郎とGt.儀間陽柄が追いかけるようにダイブしていて、メンバーとお客さんが一つになり、世界で一番平和な空間が広がっていた。

 小池がエレキからアコギに持ち替えるとMCに入り、「あなたたちは自分のこと普通だと思ってるかもしれないけど、ギリギリ・キリギリスとかにんにんにんじゃとか、クソしょーもない単語で踊り狂ってるあなたたちは、正真正銘の変わり者です!」と言うとフロアからは熱い歓声が上がった。続けて小池は、今年の初めに祖父が亡くなったこと、バンドを始めたてに来ていた女の子のこと、世の中の平和のことを熱く語っていた。それは考えて出る言葉ではない、心の底から出る想いだ。最後に「シリアスなことを言いたい訳じゃなくて、もうこれで最後の曲だから、パッと歌って帰ります」と言って、最後の"東日暮里5丁目19-1"へ入った。the dadadadysのライブを初めて見たあの2月のBAYCAMPのとき、dadadadysの曲をあまり知らない中良いなと思ったのがこの曲で、思い入れは大きかった。丁寧で優しい弾き語りから歌い始たが、「いつかの地球最後はこんな夜がいいな」まで歌い一拍置いたあと、語気を強くして「あの月の明かりに吸い込まれそうだ」と歌った瞬間、会場全体が小池貞利に包み込まれ、思わず涙が溢れた。間奏で、小池が結んでいた髪ゴムをほどき、エレキに持ち替え、メンバーと一人一人目を合わせてギターを弾く、そんなありのままをさらけ出す姿には込み上げるものがあった。間奏を抜け、再び優しく歌い上げライブが終了した。

 メンバーが捌け照明が点灯し、周りのお客さんも退場していくと思ったが、ライブに圧倒され、自分含めしばらく立ちすくんでいた。自分が上げに上げていた期待を優に越えた、最高のライブだった。

 実はライブが行われた日は6月9日、いわゆるロックの日だ。このロックの日をライブに捧げたのはこの日が初めてだった。そんな初めてがthe dadadadysで、この日で本当に良かった。そして、この日全国色々な場所でライブがあったと思うが、ここ渋谷CLUB QUATTROが世界で一番ロックしていた。

セットリスト
SE.anthem
1.光るまち
2.(許)
3.あっ!
4.kill & miss
5.青二才
6.にんにんにんじゃ
7.しぇけなべいべー
8.PUXXY WOMAN
9.散々愛燦燦
10.nantekotta
11.超々超絶絶頂絶好最高潮
12.トリバーチの靴
13.拝啓
14.waiting for us.
15.♡
16.らぶりありてぃ
17.恋
18.手
19.もしもし?もしもさぁ
20.k.a.i.k.a.n
21.ROSSOMAN

en1.夢見心地で
en2.高層ビルと人工衛星
en3.東日暮里5丁目19-1


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