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ライブレポ|弾き語りの魔法 [銀杏BOYZ「世界ツアー弾き語り23-24 ボーイ・ミーツ・ガール Boi Meets Girrrl」(9/27)]

6/24のさよならサンプラザにて発表された今回の47都道府県ツアー。当初、自分は甲府しか当選せず、この日の予定は開けておいたものの、チケットは持っていなかった。
しかし、ひょんなことからフォロワーから譲って頂き、今回行けることになった。

そんなこんなで迎えた当日。
開場時間の18:30となり、中へ入る。フロアに入ると前方が3列が椅子席という少し珍しい形式だった。珍しいのは席の形式だけではなかった。会場内では峯田チョイスの音楽が流れているが、ただ音源を流しているのではない。部屋で流しているCDやレコードをカセットで録音し、それを流すというちょっとした遊び心を感じ、海外の音楽が多く流れる中に入るJUDY AND MARYがアクセントとなっていた。。
そんな素敵なサウンドに包まれているとあっという間に開演時間。開演時間から送れること5分、会場が暗くなりライブがスタートした。

照明が消えるとSEも流れない静まり返った空間が少し続き、下手から黒いTシャツとショートパンツを着た峯田が登場した。フロアからは拍手と歓声が鳴り響く。峯田とほぼ同じ目線の高さで、それもステージまでほんの5mという近さで見るのは初めてなのに、特段緊張しなかったのは不思議だった。そのまま峯田はアコギ持ち、椅子に腰掛け、ギターを鳴らし、"二回戦"からライブはスタートした。歌い始めると拍手や歓声が上がっていた晴れやかな雰囲気からがらっと変わり、肩の力が抜けた感じと緊張感の交わる独特な空気感に引き込まれる。ライブで歌っていた歌詞はシングルに入っているものと変わっていて、歌い方もシャウト混じりの歌声から直に心に届くような響く歌声で、そこからも独特な空気感を感じとれた。演奏が終わると、「ありがとうございます」と言い一礼した。

拍手が止むと挨拶をし、「今日は古い曲から新しい曲までたくさんやるので、どうか楽しんでってください」と軽くMCを挟んだ。
独特な空気感から一転、アップテンポで聴き馴染みのあるあのイントロから始まった"NO FUTURE NO CRY"。歌い始めると自然とワンテンポが上がっていき、ラストのサビになると峯田がマイクをフロア向け、峯田はギターのマイクを使って全員で歌った。ギター1本の弾き語りのはずなのに、今年3月の銀杏山形などでのアコースティック編成よりもバンドサウンドに近いように不思議と感じた。

そして再びMCヘと入った。MCの中で峯田が「最近、目だけじゃなく耳も悪くなってきて、 このままいけば自分だけの世界、自分がやりたいようにライブができる。」と言っていた。身体が心配ながらも、それはそれで少し見てみたいというなんとも複雑な感情だ。また、MCの最後には、「今日は前の方が椅子になってますけど、立ちたい人は立って、座りたい人は座って、歌いたい人は歌って黙って見たい人は黙って見て、好きなように楽しんでください。」と、好きなように、”自由”に楽しむということ強調していた。
「夢で逢えたらという曲をやります」と言って始まった"夢で逢えたら"。峯田が歌い始めた瞬間、急に涙が出てきた。特別な思い入れがあったわけでもなかった。しかしながらも今までのライブでは思い出すことがなかったこの曲との思い出を、ふと思い出した。

「マッチングアプリって流行ってるじゃないですか。探偵が儲かってるらしいですよ。奥さんとかから相談があって…」という豆知識的なMCから入り、峯田が「ラララ~ラ~ラ~」と前奏のメロディーを口ずさみながら始まったのは、言うまでもなく"援助交際"。この曲のラストのサビでも峯田はフロアにマイクを向け全員で歌った。少し前のMCで峯田が「今回のツアーは弾き語りだから、肩の力抜いていこうと思ってたけど、もう汗かいちゃった」と話していて、自然と熱が入るあの感じからもバンド編成に近いものを感じた。

「歌う曲を決めるときに、曲の方から『歌え!歌え!』って胸ぐら掴んで言ってくるんすよ」と言い、最近のライブでも”出来の悪い曲”と言ったりもしている"トラッシュ"。MCであったように、この日のセットリストの中でも少し遊離していた曲であり、この曲を初めてアコースティックライブで聴いたときも「この曲をアコースティックでやるのか」と驚いた。しかし、アコースティックや今回の弾き語りで聴いたときも、いわゆる”これじゃない感”というものは一切感じず、それどころかスローテンポでアコースティックな温かい感じと音源のような焦燥感とが混ざりあい、さらに良いものになっていた。

MCも挟むことなく、「君からメールが来ないから」と歌い始めたのは"ナイトライダー"だった。この曲もいつかの"エンジェルベイビー"と同じく自分に影響を与えた曲で、一時期この曲を聴くと自然と涙が出るほどだった。最後のパートに入るとギターのストロークのテンポが上がり、「君を守る 夜の使者」の部分をアレンジを加えて歌い、まるでダムが決壊したかのように泣いた。
そしてその涙は次に演奏された"エンジェルベイビー"まで収まることはなかった。まるで自分の心を悟られたかのように続き、始めから終わりまで涙が止まるとこはなかった。

最近はサポートDr.岡山建二ボーカルで聴くことが多かった"骨"。岡山建二の優しい歌い方も好きだが、やっぱり壁をぶっ壊して直接心に訴えかけてくるような峯田の歌声には、聴き馴染みとはまた違う安心感があった。
そのまま恋とロックの三部作が続くと思いきや、次に歌ったのはTHE TIMERSの名曲"デイ・ドリーム・ビリーバー"だった。自分もお客さんもこれには驚きの歓声が上がった。フロアからは手拍子が起こり、峯田も肩の力が抜けているように見え、そんな自然な空間が広がっていた。

順々にライブが進んでいるが、ライブが始まってから薄々気づいたことがあり、それは峯田が使っているアコギがいつもとは見慣れないギターだった。"骨"を演奏し終えると、それまで使っていたギターから肩から下ろし、いつものギターに持ち変えた。後のMCで、その見慣れないギターはみうらじゅんさんからもらったギターだと話し、続けて「いつも使ってるのは重いから(笑)、初めはあっち(みうらじゅんさんからもらった)ギターでやって、途中からこっちに持ち変えて…」と話していた。もちろん冗談半分で重いとは言っていたが、個人的には演奏した曲とじゅんさんのからもらったギターの相性が良かったように思った。
そんな、いつものギターで演奏された"恋は永遠"を聴くと耳が良い訳でもないのに「あ、この音だ」と感じたのは不思議だった。

「新潟に住んでいる女の子から相談DMをもらって、その話を元にこの曲を作った」というMCから始まった"GOD SAVE THEわーるど"。この曲も、数年前ずっと聴いていた曲だが、相談の話の中に出てくる男の子と、この曲をずっと聴いていた当時の自分と重なり、なるべくしてこの曲をずっと聴き、同時に支えになっていたのだと感じた。
そんなネイビーな気持ちとともに、ライブは"光"へと続く。ステージに唾を吐き捨て、一点を見つめるように歌う峯田の眼からは、気を抜くと何かに飲み込まれそうになるこの雰囲気を加速させていった。

雰囲気からがらっと変わり、再び全員で歌った"もしも君が泣くならば"、そして"少年少女"。特に少年少女は弾き語りで聴いたのがこの日初めて、それもいつもアンコールで全てを出し尽くすかの如く歌っている姿しか見たことがなかった。弾き語りではバンドサウンドとはまた違う心に沁みる感覚があり、ふと以前付き合っていた人のことを思い出した。

そんなライブも終わりが近づいてきた。このライブを通して、デカい音をかき鳴らすバンドサウンドが良いのはもちろんだが、歌とギターの音だけというこの弾き語りの方がより良さが増す曲も多かった。中でもこの"BABY BABY"はそれを強く感じた。峯田がマイクを向けた訳でもないのに歌い出しから大合唱が起こり、それぞれ手を上げたりコールアンドレスポンスをしていて、峯田が冒頭に言っていた「好きなようにに楽しむ」が自然と出来上がっていた。それも含めて弾き語りの良さを強く感じた。
そして最後の曲となる"僕たちは世界を変えることができない"。銀杏山形のライブレポでも書いたが、この曲を聴くとライブの終わりが近づいていることを感じる。「まだ聴きたい。もっと聴きたい」という気持ちも、より強く思う。いつもならエンドロールのように加藤綾太、山本幹宗、藤原寛、岡山健二の名前が並ぶこの曲だが、今日はギターの音だけが響く。僕たちを変えることはできなくても、少なくとも僕を変えることはできたと思ったのは弾き語りだからなのかなのかもしれない。

拍手が続き、アンコールの声が上がる中、ステージからはマイクスタンドなどが片付けられ、アンコールはやるのか、やるとしたら何の曲をやるのか、期待が高まる。すると袖からしゃがみながら峯田が現れ、5回手拍子をしたあとに「銀杏BOYZ!」という、サッカーの応援のようなアンコールの煽りをはじめた。途中峯田も「バルセロナに負けるぞ!」などと合いの手のような煽りを入れ、捌けていった。
そして、少しすると聞き覚えのあるDJミュージックが流れだした。再び峯田がステージに現れ、「今日はみなさんありがとうございました!右からべっぴんさん、べっぴんさん、一つ飛ばしてべっぴんさん!」とフロアを盛り上げていく。アンコールで演奏したのは、まさかの"愛してるってゆってよね"だった。モッシュやダイブはないものの椅子席の人も立ち上がり、峯田も柵から身を乗り出し、最前のお客さんと顔を突き合わせながら歌ったりと、「肩の力を抜いて~」とはいったいなんだったのかと思うほどの盛り上がりでライブを締めくくった。


今日のライブ、不思議と今までの銀杏のライブでは思い出すことがなかった思い出や記憶を思い出すことが多かった。それも小さな記憶まで。ライブの冒頭のMCで峯田が「バンドだったらドラムも、ベースも、ギターもいるから多少手を抜いたりできるんですけど、弾き語りだと自分だけだからそうにはいかなくて…」と話していた。半分冗談ではあると思うが、色んな音が同時にドーンと鳴っている空間ではなく、アコースティックギターの音だけが鳴っている、ある種1対1の空間だからこそのことだったのだと思う。そんな思い出も余韻も、東武宇都宮線に乗せてすべて食べてしまおうと思った。



セットリスト
1.二回戦
2.NO FUTURE NO CRY
3.夢で逢えたら
4.援助交際
5.トラッシュ
6.ナイトライダー
7.エンジェルベイビー
8.骨
9.デイ・ドリーム・ビリーバー(THE TIMERSカバー)

10.恋は永遠
11.GOD SAVE THEわーるど
12.光
13.もしも君が泣くならば
14.少年少女
15.BABY BABY
16.僕たちは世界を変えることができない

en.愛してるってゆってよね

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