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ロキの物語

LOKI シーズン2の5話目が紛れもなく神回だった。
私はこのTVAロキを見届けるために生きてきたと断言してもいい。もう、何もかも全て、ロキの全てを愛している。

何をそんなに感動してるわけ?ロキってそもそもどんな奴だったっけ?という人のために、ロキ初登場作まで時を戻そう。
ビフォーを理解してこそ、アフターの真価が分かる。
(以下ネタバレだらけのロキ愛語り)(ロキの心境は私の個人的見解を大いに含む)(あまりにも長いので途中休憩推奨)

正史のロキを振り返る

「マイティ・ソー」


王位継承の儀式で、オーディンはソーにこう問うた。
「9つの国を守ると誓うか。そして平和を守ると誓うか。王として己の身勝手な野望は投げ捨て、国のため身を捧げると誓うか」

あの時点では、ソーもロキも王の器では無かった。
自己顕示欲と過剰な自信を振りかざしていたソー。目的達成のためなら卑劣な手段も厭わず、裏切りや嘘で身を固めていたロキ。
どちらも国王としてはあまりにも未熟だ。

王位継承の儀をぶち壊すイタズラ、そしてソーをヨトゥンへイムに行くよう誘導した己の行為によって、ロキは自分の出自を知ることとなった。
兄弟として育てられたソーとロキは血が繋がっていなかった。オーディン(父)とも、フリッガ(母)とも血の繋がりはなかった。
そうでなくても兄と自分を比べては闘争心を燃やし、対等であろうとしてきたロキは、どれだけ深く傷付き悲しんだろう。
弟だから仕方ない。兄とは違う能力と性格なのだから仕方ない。それでも自分には母から学んだ魔法があるし、王になるチャンスがゼロなわけじゃない。ソーを没落させれば自動的に自分が第一候補になるわけだし。
そう信じながら何百年も生きてきたのに、そもそも敵国の子供だったとは。

「たとえ口では私を愛してると言おうと!」とブチ切れたロキへのフォローもそこそこに、オーディンは寝てしまった。寝るな。
ああ言ってるけど、「愛してる」と伝えてほしいんだよ。ロキを孤独のまま放置してはいけない。

心の基盤だった家族への信頼は、ここで崩壊した。そしてその辛い胸の内を明かせる相手はいなかった。

銀の舌を持っていても、自分の深い本音を話すことはできなかったロキ。
ラウフェイまでも利用して殺し、両親の前で自分をヒーローに見せかけたロキ。
虚構だ。虚栄だ。ロキが本当に心から手にしたいものは、そんな見せかけの鎧で固めた自分では一生手に入らない。

ハンマーを再び手にした兄と対峙したロキは、「王になりたいんじゃない!対等になりたかった」と叫ぶ。
ハンマーを持ち上げれば、王座に就けば、それで兄と対等になれるわけではない。
対等な関係というのは拮抗するパワーを持つことではなく、勝ち負けの優劣を付けずに隣にいられる関係のことだ。
心の奥底で望んでいることを、もっと強く口キ自身が自覚すべきだった。

自ら宇宙空間へ身を投げた彼の心には、怒りや悲しみが渦巻いたままだ。
誰とも分かち合えない、自分の本心とも向き合いきれない、孤独な裏切り王子
それがロキだった。

「アベンジャーズ」


宇宙空間を漂う程度では死んでなかった、頑丈なロキが再登場。
マインドストーンでホークアイやセルヴィグ博士を操り従え、四次元キューブを強奪する。トラックの荷台に乗る姿が可愛いから必見。

ミッドガルド(地球)を支配する気満々で、軽快に人を傷付け殺し、跪かせる。人間を相手に悪事を愉しむヴィランのロキがここに生まれた。
アベンジャーズ始動の大きなきっかけとなる、ロキの侵略だ。
アメコミでもドラマLOKIシーズン1でも語られる、「ヴィランでいるしかない運命」「アベンジャーズ結成のきっかけになるため」の悪役。それが「アベンジャーズ」で描かれるロキだ。

ロキは人々にこう語りかける。
人間は本来、服従することに喜びを覚えるんだ。自由なんていう言葉に惑わされ、お前達は人生の真の喜びを見失ってしまっている。お前達は支配されるべく作られている

この時のロキは、人間の自由意志などこれっぽっちも興味がなかった。
剪定され消された数多の人間達、そして剪定され記憶を奪われTVA職員として働かされる人々の存在も知らない。そして自分自身も、決められたシナリオの上を歩かされているとも知らない。そんなロキの言葉は、冷たく高圧的だ。

ハルクに対して「私は神だぞ、ケダモノめ!」と言い放つのもなかなか強烈だ。一般人なんて虫ケラのように扱っている。
寿命も短く、取るに足らない存在であるはずの人間が、兄上を変えてしまったこと。それを認められず忌々しく思う気持ちが、人間への侮蔑的な態度を助長しているのだろう。マインドストーンの影響で悪意が増幅しているという考察もある。

ニューヨークに甚大な被害をもたらしたロキだが、ハルクにボコられてアベンジャーズに追い詰められ、アスガルドに強制送還されて終了。

ーーというのが、TVAで言う「正史」のロキだった。

アベンジャーズ/エンドゲームでタイムトラベルの影響により、アスガルドに連れて行かれる前に四次元キューブを入手して逃げ出したロキが、剪定対象となった「変異体」のロキだ。

その変異体ロキの成長について語るためのnoteだけど、ひとまず正史のロキについて振り返りを続ける。

「マイティソー/ダークワールド」


アスガルドの牢屋に幽閉されたロキ。一生牢屋暮らし宣告をされたけど絶対脱獄する気だし、なんやかんやフリッガが甘やかしてそのうち出してもらえそうな気もする。

ところがここへダークエルフが急襲し、母であるフリッガを失う。
「私も母ではない?」「その通り」という会話をした後だったから尚更しんどい。
この時の絶望で打ちひしがれるロキがひどく痛々しい。

母の命を奪ったダークエルフへの復讐心を糧にソーと手を組んだロキは、ジェーン(ソーの恋人)を庇いながら闘いに身を投じ、その最中に命を落とす。
共に闘ったロキについて、ソーは「ロキの方が俺よりも王のなんたるかを理解していました。時には冷徹さも必要だと」と、オーディンの前で語った。

まぁ、そのオーディンというのが、ロキの変身した姿であり、完全にソーを出し抜いてやったというわけだけど。

この時点ではまだ策略全開、王座に執着するロキのままだ。

「マイティソー/バトルロイヤル」(ラグナロク)

オーディンの姿で悠々自適なアスガルド暮らしを愉しむロキ。自分の銅像を建て、自分の武勇伝を役者達に演じさせる。(この芝居何度見ても面白い)

ソーと一緒にオーディンを押し込んだ老人ホームに行くと、ドクターストレンジに捕まって30分虚無空間を落ち続ける羽目になる。(このシーンのロキも何度見ても可愛い)

ノルウェーで最期を迎えるオーディンの元を訪れた兄弟は、そこで初めて姉(ヘラ)の存在を知った。オーディンって本当に重要なこと何も話さないよな。
最後の最後に「愛してるぞ」と言われた瞬間、ロキは戸惑うような表情でオーディンの顔を見る。「アベンジャーズ」でブチ切れてNYを破壊した時のロキにその言葉をかけてやってくれ。
後にTVAでこの場面を見たロキは、間接的に報われるというか、求めていた言葉を受け取れた正史の自分を知ることになる。
だけどそれは、もう戻ることのできない時間軸だ。

なんやかんやあってソー、ヴァルキリー、ハルクと手を組んでサカールを脱出しようと目論むロキは、その途中で兄と二人で話をすることになる。

「ちゃんと話しておかないか」と言うソーに「やめておこう、心を開いて話すなんてうちの家族らしくない」と返すロキ。
「私はサカールにいる方がいい」と自分で言ったくせに、ソーに「俺もそう思ってた」と言われたら「やっぱり私がいなくても平気か」と拗ねたことを言うロキ。
素直じゃない、素直じゃないんだよ。
「二度と会わない方がお互いのためか」なんて言っちゃうし。そこまで極端なことはお互い望んでいないはずなのに。

ドラマの話になるが、オールドロキはどうしても兄上に会いたくなってひょっこり出てきたところを剪定された。アスガルドへの想いも、ソーへの感情も、何百年経っても消し去ることは出来ない。

ヘラ相手に闘う気は無かったのか、グランドマスターに取り入ってサカールでのびのび生きるためにまたソーを裏切ろうとするわけだけど、ここではソーに策略を見抜かれ逆にしてやられる。
床に転がるロキに、ソーはこんな言葉をかけた。

「いいかロキ、生きていれば成長するし変わる。だがお前はそのまま変わりたくないようだな。所詮お前は裏切りの神。もっと上を目指せるのに

皮肉のようでいて、でも本当にそう思っているのではないかと思う。頭が良く魔法も使えるロキのその能力を、違うことに活かせたなら。
王座に執着してばかりのロキに対し、「ダークワールド」でフリッガが言った、「あなたは他人のことは分かっても、自分のことは分かっていない」の言葉も、そういうことじゃないだろうか。父を超えて兄に勝って王座につくことがロキの本当の望みではないと、母はちゃんと分かっていたのだろう。
ロキの可能性を、ソーやフリッガは、ロキ以上に信じていたのかもしれない。

その後、救世主として堂々と再登場し、ソーと共に闘ったロキ。
I'm here(いるよ)と温和な表情を浮かべたロキは、ソーと共にアスガルドの民を守った王子の姿だった。そして、対等に並べる弟としてのロキだった。
母の死、父の死、そして故郷の消滅。辛い経験を経てアスガルドを率いる立場になった2人の王子がそこにいた。
ようやくロキは、ソーと張り合って勝つことから降りる選択も出来るようになった。

サノスさえいなければ。

「アベンジャーズ/インフィニティウォー」

ロキは、地球を目指す旅の序盤で命を絶たれた。
まるで運命が「お前はヴィランとしてしか生きられないのだから、ここで死ね」と言っているかのように。

自分の身を守るためなら喜んで他人の命を差し出すタイプのロキが、どう考えても敵わない相手に刃を向けた。身動きの取れないソーがただやられるのを黙って見ているわけにはいかなかった。
自分の利益最優先の男が、圧倒的な力の差に気付いていながら、サノスの首を取ることを決めたのだ。たとえ自分がしくじって死んだとしても、ソーだけは助かるかもしれないという見込みで。

そしてその最期の口上で、ロキはついに自分のことを「オーディンソン」と名乗った。それからソーを見た。
自分達はオーディンの子であり、共に育った兄弟であると、ソーに語りかけるかのような目線だ。
近付いたり離れたり。敵対したり共闘したり。泣いては怒り、死んでは蘇り、喜んでは悲しみ。長い長い道のりの果てに辿り着いた兄弟の和解だった。
それを噛み締める間もなく、サノスの手によってロキは絶命した。

(私は未だにこのロキがなんとか生き返ってくれやしないかとしつこく願っている。神なんだから、首の骨折られたくらいで死なないでほしい。エンドゲームで「実は生きてましたー!」って登場するのを期待してた)

ーーー以上が、MCU映画で描かれたロキの物語。ソー無しでは語れない、ロキの心の変化の物語だ。

この流れを途中でぶった斬ってTVAに舞台を移し、ソー抜きでロキが成長していく物語が、ドラマLOKIだ。
とんでもなくワクワクするようでいて、どうなるのか不安もあったドラマシリーズ。
その集大成といえる圧巻のシーズン2エピソード5が、ロキの辿り着いた新たな境地だった。
ここまでめちゃくちゃ長く語ったけど、実はここからが本題。

ドラマLOKIでロキはどう成長したのか

シーズン1のロキ

「アベンジャーズ」のNY襲撃後、アスガルドへ送還される前に四次元キューブを手に入れたロキは、その場から逃げ出す。
これが神聖時間軸から分岐を生む行動となり、ロキは「変異体」としてTVAに連行されてしまう。
つまりこのロキはミッドガルド(地球)の侵略に失敗したばかりの、まだ王座に執着しているロキだ。

一話目でのメビウスとロキの会話から、この時点でのロキがTVAに対して、他人に対して、自分に対してどう思っているのかをまとめておこうと思う。ここでの2人の「自由」や「人生」に対する考え方を振り返ると、変化がよく分かる。

メビウスのセリフ「」
ロキのセリフ『』

『私は裏切りの神』『お前ら役人に私の物語を定めさせたりはしない“You ridiculous bireaucrats will not dictate how my story ends!”』『こんな場所焼き払ってやる』
「嘘をつくのは好きだろ」「君は話好きだ」
『数多くの人間の運命を3匹の宇宙トカゲの命令で決めるのか?バカげてる』
「信頼が嫌いか?」『信頼は子供や犬のためのものだ。信頼出来るのは一人だけ』「自分だけか?」
私は自分が選んだ道で生きている
「まずは協力し合おう」『苦手分野だ』「権力者に取り入って後で裏切るのは得意だろ?」
『ここを出たら王座につく。なりたいんじゃない、そういう生まれだ』『道は自分で選ぶ』

一話目からかなり重要なセリフ、心の内側に迫るセリフがポンポン飛び出していた。
シーズン2エピソード5を観た後だと特に、storyという言葉に反応してしまう。さりげなく、1話目からしっかり物語の着地点を示していたんだなー。やられた。
「TVAの筋書き通りの生き方ではなく、自分で選んだ道を生きる」という主張は、後々メビウス達TVA職員の側に響いてくることになるというのも皮肉で面白い。脚本がすごい。

自分の辿るはずだった人生をダイジェストで観るロキを見ると私まで泣けてくる。さっき長々とまとめたばっかりなのに泣いてる。

『私は戻れないんだろ?自分の時間軸に』『他人を傷付けるのは楽しくない。楽しんではいない。仕方がないから大勢傷付けてきた』
『弱き者が恐怖を与えるために魔法で作り上げた残忍なトリックだ』『悪党だ』

「僕はそうは思わない」

ロキに協力してもらうためとはいえ、即答で「君は悪党(villain)じゃない」と言い切るのよね。メビウスはね。

そして2話目で変異体ロキ【シルヴィ】と出会う。(そこに至るまでのロキとメビウスがすごく可愛いんだけど、そういった感想は以前書いたので割愛....でもほんとすごく可愛い)
この時点でロキは「どうにかタイムキーパーと面会して彼らを騙してTVAを乗っ取る気」だった。(メビウスに言い当てられてた)

このドラマはとにかく会話が多い。
ロキがこんな風に、手を組む相手とじっくり語り合うことはなかっただろう。兄上やヘイムダルと悪ふざけをすることはあっても、「ロキは何が得意で、どういう行動原理で、何が目的で」なんて話をすることはなかっただろう。
メビウスのように、心を開いてロキを褒めながら協力関係を築いてくれる人はいなかったはず。常に手の内は隠して、取り入ってから裏切る。それが自分らしいと思っていたし、それでこそロキだと運命付けられていた。

そこを切り崩していくから、面白いんだよなぁ!
「よき理解者」の存在が、ロキを自分自身と向き合わせて変化をもたらす。メビウスは親友のようであり、理想的な父親のようにも思える。

3話目以降も、「ロキとはどんな存在であるか」が語られる。シルヴィとの会話を通して、他の大勢のロキ変異体達との出会いによって、神聖時間軸に否定された自分を知る。

ヴァルキリー部隊に憧れた少女のロキ。
ソーを殺した幼いロキ。
食べる猫を間違えたワニのロキ。
サノスから逃げ延びて孤独に過ごしたが、寂しさから兄に会いに行こうとしたロキ。

ロキが別の可能性に気付いて運命を変えようとした時。反省して変わろうとした時。
「ロキは負ける運命」という神聖時間軸に押し付けられた殻を破った時、分岐が生まれる。

ラメンティスでの分岐についてメビウスは「そんな歪んだ恋愛関係になるなんて」「君らは思い上がった自惚れ屋のナルシシストなんだ」と盛大に茶化す。真実の愛を手にするはずがないロキに芽生えた“自分自身への恋愛感情”が、強大な分岐を生んだという認識だった。
(私は未だに納得してないけど、とりあえずそういうことにしておく)(周囲に認められて頂点に立ちたいという欲望を、誰かのために手放してもいいと思うその気持ち=ロキをロキたらしめるアイデンティティの喪失になって分岐を生んだ。もしくは、自分を認め受け入れ承認し愛することが出来た時、分岐が生まれる。というのが私の考察)

また、3話目でロキはTVAの職員がみな剪定され記憶を消された変異体であることを知り、4話目でそのことをメビウスに伝える。
メビウスはロキに「君は何にでもなれる」「君さえ望めば善人にもなれる」と言い切り、信頼し合って協力関係を築くも、次の瞬間剪定されてしまう。ロキも剪定される。この4話目の衝撃はなかなかだった。

変異体ロキ大集合の5話目も大好き。
ロキ同士で裏切り、戦い、混沌に陥る。
真実を知ったメビウスがTVAに戻ってみんなに知らせ、抗おうとするのも好きだ。
変わるのに手遅れということはない」という言葉が、メビウス自身にもロキ達にも当てはまる。ドラマシリーズ全体を通して描かれているのが、まさにこれだと思う。
信じてきたことが崩れた時、何もせず現状維持に甘んじるのか。自分の可能性を信じ、勇気を出して変化を受け入れるのか。
その一歩を踏み出す時、信頼出来る仲間がいるということが、ロキに訪れた最大の変化でもある。

シーズン1の最終話、ミスミニッツの甘い提案に対してロキはこう返答する。
“We write our own destiny now.”(運命は自分達で切り開く)
ちゃんとシーズン1からこういうセリフ入ってたんだよね。全てがシーズン2の5話目ラストに生きてくるね。

そして訪れた、あり続ける者との対面。
自分で選択した道だと思ったのに「全部俺が敷いた道だ」と言われ、「そもそもお前に誰かを信じる心があると思うか?」とまで言われるロキ。普通だったらシルヴィみたいに怒って殺そうとするけど、TVAロキは「お前に幸せでいてほしいんだ」とシルヴィにベクトルが向いている。この時点でもう、だいぶ変わってたよ。

TVAでは、メビウスが枝分かれを見ながら“No turning back now.”(もう戻れないな)と言う。
そう思うよね。視聴者もみんなそう思ってた。
ところが、なんとシーズン2のロキは過去や未来に飛んでいくわけだから、これはすごい「裏切り」サプライズだ。

圧巻のシーズン2エピソード5

世界から切り離され、存在を否定されたロキが、無数の自分の可能性と出会った。
虚無空間に落とされてもなお諦めず、アライオスの心を乗っ取り、黒幕に辿り着いた。
ところが、最後の最後に飛ばされた先のTVAは、ロキの知るTVAではなかったーーー

激アツシーズン1から2年も待たされてようやく配信されたシーズン2。めちゃくちゃ面白い。

「アベンジャーズ」で「お前達は支配されるべく作られている」とまで言っていたロキが、今や「人々から自由意思を奪うことは出来ない」という考えのメビウスと信念を共にしている。
悪意や暴力、戦争から世界を守るべく行動するその様は、もはやヒーローと言っていいだろう。

シーズン2の1、2話目については別記事でだらだら感想を書いたのでそちらを参照していただいて...

3話目で、神聖時間軸の“あり続ける者”、ヴィクター・タイムリーが登場する。
ミス・ミニッツとレンスレイヤーもここでようやく再登場。(正直、ミス・ミニッツがあり続ける者を愛してるとかいう話はよく分からなかった)
1893年のロキとメビウスの衣装素敵。お着替えが多くて楽しい。寄り道してお菓子を食べてるメビウスが可愛い。文句を言いつつロキも食べてて可愛い。

時間織り機修復に取り掛かる4話目。
互いにサインを欲しがり褒め合うタイムリーとウロボロスの2人が可愛い。
作業待ちの間にパイを食べようと誘うメビウスに対して、シルヴィが辛辣すぎる。後を追ってシルヴィをたしなめるロキ、大人になったな...
「崩壊させるのは容易い」「壊れたものを直すのは難しい」「希望は難しい」
TVAを救った後にどうするのが正解なのか分からない。どの程度干渉するのか。タイムリーの処遇はどうすればいいのか。

We are gods.” の言葉がすごく引いたアングルから弱々しく聞こえるのが、良演出だった。
あんなに「アスガルドのロキだ!」「ひざまずけ!」と生き生きしていたロキとはまるで違う。
神として生まれたが、神であることが重荷だと思ったことはなかったのだろう。
“神なのだから人間達を支配して当然”という認識だったあの頃とは大違いだ。

いよいよ時間織り機を修復するべく集まった仲間達。TVA版アベンジャーズという感じで大好き。
ところが衝撃のスパゲッティ化、TVA崩壊、ロキの強制タイムスリップ。一気に混沌に突き落とされた4話目ラスト。

ここからの5話目は、MCUドラマの中で一番の仕上がりだったんじゃないだろうか。
これまでのロキの物語が、ここに帰結する。

仲間達一人一人の元へ飛び、TVAを救う手立てを模索するロキ。
もう誰もこのロキを「悪役」とは思わないだろう。

ロキは王になりたかったわけではない。時間を支配する存在になりたいとも思っていない。
オーディンのように、ソーのように、信頼出来る仲間達と戦場に駆り出し、民を守る存在になれるのだと示したかった。対等であると信じてもらいたかったし、何より自分自身が、そんな自分の可能性を信じたかった。
それが分からないうちは、ただ王座に付き群衆を支配することがゴールだと思っていたけど。

四次元キューブで砂漠へ飛んだ時から始まった、長い長いロキの冒険物語。
その果ての小さな酒場で、ついにロキは本音を吐露する。

“I want my friends back.”
“I don't wanna be alone. ”

友達を取り戻す。独りは嫌だ。

さらに、それが自分の勝手な願いの押し付けであることも自覚し、友達の人生を支配しようとしていた自分に気付き、手放そうとする。
本来の人生を生きていた仲間達を呼び戻し協力させようとしていたのは、自分のエゴでしかないと自省したのだ。

こんなに心が成長するなんて、誰が想像しただろう。
最後の最後の絶望を乗り越えてタイムスリップをコントロールしたロキが最強にかっこいい。

“it's not about where, when, or why.”
“It‘s about who. ”
“I can rewrite the story. ”


このセリフに盛大な拍手を。
私はもう涙が止まらなかった。

“I can rewrite the story”は完全に“Avengers assemble”と並ぶ決めセリフになったでしょ。魂が震えた。

ロキはもう孤独ではない。私利私欲のために謀るトリックスターではない。負ける運命を背負い、悪役として生きることを運命付けられた存在ではない。

“it's about who”のセリフは、“Asgard is not a place. its a people. ”(アスガルドは場所ではない。人だ)というオーディンの言葉を思い起こさせる。

王位継承の儀式の言葉を借りて言えば、「TVAを救い、9つの国(宇宙全体)を守り、そして平和を守り、王として己の身勝手な野望は投げ捨て、信頼出来る仲間と共に身を捧げる」ことができるロキだ。
かつての孤独な裏切り王子はもういない。ロキは、王の資格に値するほどのヒーローへと成長を遂げたのだ。

最終話どうなる??!!!

ロキが書き換える物語の終着点、めちゃくちゃ気になる!!
長い長い一週間だったけど、映画観てドラマを観てロキのことばかり考えているうちに、いつの間にか配信開始まであと半日になった。

話の展開を予想したいような、何の予想もせずただ楽しみたいような。予想せずに待とうかな。

ところで、メビウスがジェットスキーを売るシングルファザーだったのがすごく良い。
何より、2人の息子が完全にソーとロキみたいだったのが面白い。
盗んだマッチで人形を燃やして逃げ出すケビン。蛇を飼いたがり、弟を追いかけるショーン。自転車は赤と緑。完全にソーとロキのカラーだ。
息子達に手を焼きながらも、2人を愛していること、大事に育てていることが伝わってくる。
父親的愛情がメビウスのベースにあったから、手のかかるロキとしっかり向き合い、関係性を築けたのだろう。

あと一話、あと一話で何がどうなるんだろう。ロキは、メビウスは、シルヴィは、どこでどう生きていくんだろう。
あぁ、考えたいけど、今すぐにでも知りたいけど、これで物語が終わってしまうのも寂しい。

ロキを深く理解し、素晴らしい演技を見せてくれたトムヒドルストンに、宇宙最大の感謝と尊敬を。
長い長いロキの物語を体現してくれたのが、彼で良かった。間の取り方、表情、声色、身体の動き、全てが最高だった。ありがとう。

明日の最終話、寂しいけれど、愛するロキの物語の結末をしっかり見届けたい。

ApplePencil購入資金、もしくは息子に酢だこさん太郎を買い与える資金になります。