国を蹴った3

虹を見た時、あなたは何をする?

 どんな風に虹を見たら、幸せな気分になれるだろう?

 学生時代、僕は、一人旅をしては彼女に「この景色を一緒に見たら楽しかったと思います」なんて手紙を送っていた。先日、中東に出張へ行ったのだが、ギリシアレストランがたくさんあって、妻と結婚前にギリシア旅行へ行こうと約束をしていたのに、あれよあれよという間に子供が3人できて、僕は起業していて、その約束を果たせていないことを思い出した。それで、妻にLINEをした。

 僕は昔からわざわざ後日語るほどではない出来事を、親しい人と話をするのが好きだ。

 虹を見てSNSに投稿するのもいいけど、僕は

「あっ、虹だ」「ほんとだ」「久しぶりに見たね」「そうだね、きれいだね」みたいな、泡と消えていくようなありふれた会話をするのが好きなのだ。

 『テンプリズム』『マチネの終わりに』のプロモーションとして、読書会を数回した。仕事の一環としてやり始めたのだけど、最近、その面白さにはまっている。その本を評論するわけではない。かっこいいことを言う必要もない。「この部分の文章が好きでした」「ここがすごく気になっていて」「○○の行為が許せなくて」本を読みながら、泡のように浮かび、誰とも共有されなかった言葉たちを、本好きと話し合う。次の日から「俺もやるぞ!」なんて興奮することもないし、感極まって泣くこともない。でも、ゆるやかに、のんびりと、なんとなく楽しいのだ。

 つい先日、作者・伊東潤自らが参加する形で短編『国を蹴った男』の読書会をした。宝島社の『この時代小説がすごい!時代小説傑作選』で池波正太郎さんや山田風太郎さんの作品を抑えて、一位に選ばれた小説なだけあって、抜群に語りがいがあった。

 今川氏真という誰もが語るに値にしないと思っていた戦国武将を、蹴鞠職人の視点から、とても魅力的に語っている。ほとんど内面の描写がなくて、事実だけが淡々と描かれる。でも、氏真が何を考え、何を思ったが伝わってくる。僕はヘミングウェイが歴史小説で短編を描いたら、こんな風に書いただろうな、と思った。伊東さんのエージェントをやると決断した時も、この短編がきっかけだった。これだけの短編を書ける人なら、今後、もっともっと傑作を生み出せる!と思ったのだ。

 みんなで話している時に出てきた疑問を作家に直接質問できるのも楽しかった。普段の新作の打ち合わせの時には見れない伊東さんの一面がみれた。作家の参加する読書会は、作家の講演会よりもずっとずっと楽しい。

 読書会は、僕にとって、虹を一緒に見るような行為だ。息子に僕が昔好きだった本を読み聞かせして、その本について息子と話すのも、すごく楽しい。

 企画している側だけど、参加していて楽しいから、読書会を積極的に企画してしまう。

 2月2日は、渋谷FabCafeで『宇宙兄弟』30巻について話す読書会を行うし、3月4日には、伊東潤さんと遠藤周作の『沈黙』の読書会を行う。作家が他の作家の作品に対して、どんな話をするのかも楽しみだ。

 読書会、おススメです。

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