新しい感情と孤独の関係について、または大人は本当に鈍感なのかについての考察

『WE ARE LONELY, BUT NOT ALONE』という本を出してから、孤独というものについてより深く考えるようになった。

孤独とは、どういう感情で、どういう時に生まれるんだろうかと。

高校・大学の頃の僕は、自分がすごく孤独だと感じることが多かった。でも今は、一人でいても孤独だという気持ちになることはない。

子供であることと、大人であることに、孤独は関係しているのだろうか。

子供は繊細で、大人は鈍感みたいなことを、青春時代にはよく口にしたりする。そして、たくさん悩むことが、青春の証のように思われている。

では、なぜ青春時代には悩みがつきまとうのだろうか?

子供であるということは、自分にとって初めてのことを次々と経験する時期である。特に青春時代と呼ばれる高校・大学時代はそうだ。初めてデートに行く時はどうすればいいだろう。初めてキスをする時はどうすればいいだろう。想像がつかない。そういったことを前もって想像すると、漠然とした不安に襲われる。

人類にとっては何一つ新しくないんだけれども、本人にとっては全く新しい感情なのだ。文学では何度も描かれているようなありふれたものであったとしても、本人にとっては切実な一回目の経験である。

そして、青春時代において、人が成長する速度はバラバラで、自分と同じ体験を同じ時期に経験している友人というのはあまりいない。だから同世代の仲間に囲まれていても、その新しい感情を仲間と共有することができずに、孤独を感じるのではないだろうか。

また、大人は鈍感になっているわけではない。

様々なことが何度目かの経験となっているが故に、ゆっくりと構えて行動することができる。その余裕のある態度が、初めての経験をしている人間には鈍感さと映るのではないだろうか。

22歳で就職をし、60歳まで同じ仕事をずっと繰り返す。そんな働き方であれば、新しい感情にほとんど出会わずに日々を送ることもできただろう。

しかし、今の時代は変化が早い。5年経つと、価値観まで変わってしまうことがある。同じようには仕事はできない。大人であっても青春時代と同じように新しい感情に出会ってしまうのだ。

例えば、「介護離職」という言葉を近年聞くようになった。僕も今年で39歳だけれども、同世代で働いている人たちの中には、「20年後、自分は介護と仕事を両立できるのだろうか?」という心配を持ち始めている人も少なくないだろう。

そのような心配を抱きながら、自分の将来を想像していた人は、昔はそんなに多くはなかったはずだ。これは新しいタイプの不安であり、この感情はまだ文学にもほとんど描かれていない。

新しい感情を誰とも共有できない時に、人は孤独だと感じてしまう。青年だけの病だったはずの孤独が、急速に大人にとっても病となってきている。

これはソーシャルネットワークによる分断ではなくて、大人にも新しい感情が押し寄せてきていて、それを処理できていない人が増えてきているということなのではないだろうか。

そして、そのような人たちの心に寄り添う方法を創造することがフィクションの力なのではないだろうかと最近考えている。

作家とは新しい感情に、物語によって名前をつけるという行為なのだ。

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今週買った本

僕が読んでいる本をちょっとだけ公開します。色々な作家と練っている新作のための資料が含まれています。どんな新作を企画中か、読んでいる本から想像してみてください。

『機械仕掛けの愛』 業田さんは、物語の展開がすごくうまい。毎回、よくこれだけの設定が思いつくと思う。異なる短編も、繋がっていると、違う効果を持っていくるから面白い。

『脳の意識 機械の意識』この本は、推薦されて購入。パラパラとみたのだけど、面白そうだけど、難しそう。隙間時間に本を読むのだけど、こういうタイプの本は、積読になりがちだけど、読みたい。

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佐渡島庸平/コルク代表

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