編集者は何もしない

売り切れ

「『完璧なリーダー』はもういらない」という宇宙兄弟の関連本として出したチームビルディングの本が、すごくいい滑り出しだ。発売3日で重版がかかった。

このリーダーを編集者に置き換えてもしっくりくる。「完璧な編集者」はもういらない。

そもそも編集者とは、何もできない人だ。

自分で何かをやったら、編集者としては失格とも言える。自分で文章が書けるわけでもない、絵もかけない、ストーリーも作れない、それでも作家に書いてもらう。そして、自分はできないのに、プロの仕事にもっとと要求する。それが編集者の仕事だ。

今回、僕のビジネス本『We are lonely, but not alone』の編集を箕輪さんにしてもらった。僕も編集者をしているから、ライターにお願いして本を作ることのメリット・デメリットをよく理解している。この本を始める時に、「ライターにお願いして、それをリライトします」と箕輪さんにはお願いした。ライターが書いてくれる方が、僕の抽象的な話がわかりやすくなるというメリットが大きいからだ。

で、先週、すべての原稿の入稿が終わったのだが、気がつくと僕がやっていることはリライトではなかった。ほぼ全ページを自分で書いていた。朝早く起きたり、週末にホテルに自主的に缶詰になったりして書いた。このブログの水曜日更新が守れなくなったのも、全てその本の原稿が理由だ。

箕輪さんがしてくれたことは、適切なタイミングで、こちらの筆が進むように適切な量の「声がけをしただけ」だ。それで、できあがった原稿は、ライターにお願いした場合とは、まったく違うタイプのものになった。

今、僕は「声がけをしただけだ」と書いた。業界が違う人が箕輪さんと初めて本を作ると、箕輪さんって優秀って噂だけど、ほとんど何もしてくれなかったと感じるだろう。結局、自力で書いたと考えると思う。しかし、同じ業界にいる身としては、その編集スキルの高さに驚いた。僕は箕輪さんの手の上で踊らされて、気持ち良く踊ったのだ。ライターにお願いするはずが、すべて自分で書いた。僕が予想もしなかったことを僕にやらせたのだ。

編集者は何もしない。関わった人が、全部、自分がやった、という自分ごと化するための余白をつくる。それが編集という仕事だから。編集者が何もしていない、とみんなが思うのに、結果が出ている時。それが編集者がもっとも仕事をした時なのだ。

僕は、同業として、箕輪さんが繊細に余白を作るのに気づいた。気づきながらも、気持ちよく踊った。

最近、こんなツイートをした。

小山さんから宇宙兄弟のはじめの4ページ目が上がった時と同じくらい感動した。この8ページができるのを僕はずっと待っていた。僕がしたことは、毎回、羽賀君が必死にあげた原稿に「悪くないけど、もっといける」と言って、待ち続けることだった。

羽賀君と初めて会った時から、いつかこういう8ページを描くと予想していた。そして、それがついに出てきた。ここから羽賀君は、どんどん作家と成長していく。編集者の僕にできることはほとんどない。でも、羽賀君が未来に描くものを先に勝手に想像し、それを超えられているかを伝え続けるのだ。

有料部分は、僕の日記と僕が興奮した羽賀くんのネームになる。修正しているので、本番原稿は少し違ったものになるはず。ラオスに出張に行っていたので、トップの画面の写真はラオスの子供達だ。


この続きをみるには

この続き:1,748文字/画像9枚
記事を購入する

編集者は何もしない

佐渡島庸平/コルク代表

300円

この記事が気に入ったら、サポートをしてみませんか?気軽にクリエイターを支援できます。

note.user.nickname || note.user.urlname

購入&サポート、いつもありがとうございます!すごく嬉しいです。 サポートいただいた分を使って、僕も他の人のよかった記事にどんどんサポート返しをしています!

ありがとう!コメントももらえると嬉しいです!
208

週刊!編集者・佐渡島の『好きのおすそ分け』

コルク代表・佐渡島が、「コンテンツのDJ」として自分の好きを届けていくマガジンです!編集者や経営者としての日々の気づき、注目しているクリエーターや作品、影響を受けた話などを配信していきます。また、マガジン購読者限定の特別コンテンツとして、有料者限定記事、公開日記、製作途中の...
7つのマガジンに含まれています

コメント5件

ジダンが頭突きをした夜の月齢は13.44。満月ではありませんでした。。。ただ、あそこは満月じゃないと絵的に様になりませんから、13.44を15に描くくらいは地学部員的にも許容範囲ですw
同じ編集者だからこそ見えてくるところがあるのでしょうね!共に影響され合っている姿、素敵です。ラオスで学ばれたこと、特にコミュニティについての感想楽しみにしています。私も今タイの東北部に住んでいて、ここはラオス文化圏でもあるので、佐渡島さんがどのように感じられたのかワクワクです!写真のラオスの子供たち、きっと国旗は手作りだろうなあと思うと微笑ましく思いました☺️
シラナイ一家を読んで。ある意味、父親は未来の自分。私もそう思っていたことに気づきました。母が37歳で亡くなり、今年、私はその歳になり、とても特別に感じています。私の前に本当に道がない感じで、いつ死んでもおかしくなくて、どう生きてもいいんだ!と思ってることを改めて。家族は、最小かつ濃いコミュニティ。それは安心できる良いコミュニティでないとダメな気がするけど、けっこう、かなり難しい。自分の家族をもってはじめて思った。いろんなコミュニティに所属する自分だけど、生活する場所である家族というコミュニティは、また特別でなんとか安心できる居場所にしたい、できなくて苦しくなる、そんな気持ちがあるな、でも…そうじゃなくてもいい?!みたいな今、ひっかかってるものが、呼び起こされました。
羽賀さんの新作、本当に楽しみになりました。佐渡島さんのラオスの話もとても気になる。幼稚園生の息子にとって、当たり前だと思っていた公立の小学校じゃない選択があることが視野に入ってきて、教育ってなんだろう?意志ある選択をする時代なのかもと思っていたので。
コメントを投稿するには、 ログイン または 会員登録 をする必要があります。