名称未設定ファイル

おい、バカにしてるのか?『名称未設定ファイル』

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 僕はよく人をバカにしているのではないかと指摘される。バカにしている気持ちが微塵もないので、その意見を言われると、言った人のコンプレックスの裏返しだろうと考えていた。僕に興味があるのは、観察だ。人の眼を通して観察する限りゆがむ。そのゆがみをなくして、現実を現実のまま理解したい。だから、僕は観察したら、その現実と思われるものを言語化してみて、さらけだす。そして反応をみて、僕の認識がゆがんでいるかどうかを確認する。僕に興味があるのは、観察と現実だ。

 そんな僕が、バカにしているのではないのか?と感じてしまう相手がいる。ツイッター上ではダ・ヴィンチ・恐山として活躍している作家の品田遊だ。

 この投稿をみてほしい。

 僕は、この投稿がなんでこんなにRetweetされているのか、一瞬意味がわからなかった。でも、わかったら大笑いしてしまった。

 どうだろう?この投稿をみて、品田遊が世間をバカにしていると感じた人はどれくらいいるだろう。

 品田遊には、サイゼリヤをバカにする気持ちなんて微塵もない。世間をバカにもしていない。(もちろん、僕も)気づいた事実に噓を一つも加えることなく伝えている。しかし、品田遊が現実を伝えると、現実の見え方が変わる。

 品田遊は、現実を観察している。そして、観察という行為は、「バカにしている」と勘違いを生むのだ。僕よりもずっとずっと観察が得意な品田さんと接して、なぜバカにしていると僕が思われる時があるのかを理解した。しかし、バカにしている訳ではなく、観察が好きなことには変えようがないから、理解しても僕の行動は何も変化はしていないのだが。

 品田遊は天才だ。

 僕はツイッターが大好きで、色々な人のツイートを毎日だらだらと読んでいるけど、この人の小説を読んでみたい!と突き動かされたのは、品田遊に対してだけだ。その経緯は、ちょっとだけジモコロのインタビューで答えている。

 このツイートを読んで、品田遊のネタだけではない、様々な文章を読みたくなった。品田遊という人間のことをもっと知りたくなってしまった。5年近くお願いし続けてやっと書き上げてくれた作品が『止まりだしたら走らない』だ。

 それから2年かけて、やっと次回作を書いてくれた。それが『名称未設定ファイル』というなんともふざけたタイトルの作品だ。前回以上の傑作で、読みながら、改めて品田遊は天才だと思ってしまった。

 今はどんな作品も、感情移入をどうさせるのかで勝負をしている。僕も編集者として、主人公に共感させるためには、何をさせればいいかをアドバイスばかりしている。

 『名称未設定ファイル』は、主人公に共感させようなんて意思が微塵もない。どんな作品に似ているかと聞かれたら、星新一と答えたい。ユーモアの感じなどが似ている。そこにあるのは、徹底的な観察だ。しかし、大きく違うのは、その観察の対象だ。品田遊はツイッターでの有名人なだけあって、ネットでの人の振る舞いを徹底的に観察して、再現している。

 収録されている短編「猫を持ち上げるな」は、猫を持ち上げるというよくある行為をツイッターにあげたら炎上してしまう話だ。非現実的な誇張した話だと思うかもしれないが、ほぼ同じようなことが、現実で起きていた。品田遊はこのような投稿を参考にして書いたわけではない。品田遊の観察と再現が鋭くて、似たような事件が起きたのだ。

このツイートは広げたいわけではないので、埋め込みはしません。元ツイートについている様々なコメントを読み、「猫を持ち上げるな」を読んでみてください。https://twitter.com/tsuji5jp/status/731844425156984832

 まずは、今回の品田遊の傑作『名称未設定ファイル』を読んでみてほしい。これを読み終えると、ネットの見え方が変わるだろう。

 品田遊の作品紹介動画も、秀逸なのでお勧めです。

 品田遊の次の作品を僕は早く読みたい。作家になりたかったわけではない人にお願いをたくさんして小説を書いてもらっているので、みんなからの声もたくさんあったほうが、次回作を早く読める。ぜひ、今回のを楽しんだ人は、次回作を早く書くように声をあげてほしい。そうすると、僕も次回作を早く読めてハッピーだ。

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 今週は、僕が大好きな品田遊のツイートベスト5とそのツイートのどこに作家性を感じるかを書こうと思います。最後に、ホンの少しだけ作家を目指す人へ一言アドバイス。

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